第98話

 ヤマトは路地裏の方のプレイヤーを殲滅したあと、そのまま細道をブースターを使って駆け抜ける。途中にプレイヤーが居れば遠慮なく殴り殺していく。ある程度あの大軍を片付けると所詮はネットの募集かなにかで集まった烏合の衆だったようで各々が散り散りに逃げていった。

 「さて、ここでポイントランキングを見てみましょう」

 実況が言うとモニターの半分にランキングが表示される。

 「うわ……」

 思わず声を漏らす。というかみんな同じような反応。それはそうだ。


 1位 ヤマト 1036ポイント

 

 1036!?1036人もやったのか!?開始15分ですよ!?

 実況が続ける。

 「ここまでポイントを稼がれるとは運営側も思ってなかったんじゃないですかね!流石無限王杯優勝者と言ったところでしょうか!?それにしてもぶっち切りだぁ!」

 「倒された方たちもチーム戦はダメだとは書いていないのを逆手にとったんでしょうけれども、その裏をかいたヤマト選手の作戦勝ちですね……デメリットをすべてメリットに転換して戦っている感じがします」

 これは解説も絶賛するしかない。2位は53ポイントでアメリカの選手のようだ。いや、15分で53人倒すのも凄いんだよ。でも空気読めない王様がね……。

 ヤマトはブーストを使っていたがガンドラウスの鎧が完全に壊れると移動を走りに変えた。鎧の下にはいつもの赤い装備を着けている。なるほど、これが外装機能ってやつか。確かに初手で大技を撃ってくるボスとかにはいいかもしれない。

 ヤマトは大通りに出ると一瞬ブーストを使った。そして、すぐに走りに切り替える。音とか何もかも気にしないで移動してる。そして急に方向転換、ドアが開いていた石造りの店に突っ込む。日頃薬草や調合アイテムを買っている店だ。

 店の中には三人いた。武器を構えていたがヤマトの急襲に対応できずに瞬殺される。もうなんか物騒な強盗みたい……。

 そしてまた大通りへ戻ると一瞬ブーストを使って、すぐに走り始める。何やってんだあれ?

 ヤマトは建物のギリギリを位置取り、大通りを全力疾走。

 すると道に置かれていた車に隠れていた金髪の女が現れる。大剣をすでに上段から振り落とす体勢。

 ヤマトは慌てることなくサイドステップ。女は大剣を地面に叩きつける。その隙にクニツクリが遠慮なく女の頭をぶん殴った。

 瞬殺。

 女を倒せたことも確認することなく走り抜けていく。そしてまたブースト、しかしやはり一瞬だけ。今度は急に蛇行し始める。

 どうした?と思っていると前方から発砲が。スナイパーか!

 弾丸はヤマトを掠って地面を抉っただけ。ヤマトは迷いもなく脇道に入っていく。

 最初はスナイパーから逃げる為だと思ったが、違った。ヤマトは少し奥にある電波塔を目指している。

 するとまた発砲。ヤマトはわかっているかのようにステップで避ける。そのあと進行方向に待ち伏せしていたのか隠れていたのか男と女が飛び出してくる女の方はハンドガン、男の方はハンマーを持っている。

 しかしながら、男がハンマーの溜め攻撃を構えた瞬間には顔面にクニツクリが入っていた。

 女はハンドガンを連射、だがそんなもの普通にいつもの小さな盾で弾かれる。そして殴打。無惨にも壁に叩きつけられて絶命。

 撲殺王者ヤマトはそのまま突っ走り電波塔に着く。大きな螺旋階段になっているのを高速で昇っていく。上から発砲をしているが階段自体が邪魔になっていて命中しない。スナイパーの焦りも見える。

 そして頂上。スナイパーライフルを構えているのはメガネをかけた女だった。

 発砲。

 ヤマトはクニツクリで弾丸を弾いた。おそらくスナイパーライフルの弾は威力が高くて盾で受けると危ないのかもしれない。弾かれたことに慌てたスナイパー女は腰からハンドガンを引き抜こうとしていたがその時にはヤマトがクニツクリの先端で頭部を突いていた。

 そして、すぐに電波塔を降りる。ほんと流れ作業というかヤマトだけ違うゲームをしているように戦っている……。

 大通りに戻るとまたブースターで一瞬だけ移動して走り始める。建物や物陰から急に出てきたプレイヤーを最初からわかっていたかのように回避して殴り殺す。

 マジでなんなんだよあの強さは……ざわざわとしている観客の中で「チートだ」とか言う輩が出てくるレベル。まぁわかってるがあいつがそんなことをするわけないし、できるわけがない……でもやっぱりどうやってるんだマジで。ブースターで一瞬移動するのと関係あるのか?

 というわけで後ろのわかってそうな人に聞いてみよう。

 「ソラノさんよ」

 「何だぁい?カケルさんよ」

 俺の言い方に合わせたんだろうが甘い声で返事をされる。しかも耳元でやられるもんだから破壊力2倍。俺じゃなきゃフォロー返してたね!!

 「ヤマトが一瞬だけブースターで移動するの何だと思います?」

 「うーん……実は私もずっと考えてたんですよねぇ~。なんでなんだろ……」

 そんなことしてる間もヤマトは敵を蹴散らしていく。

 「何か向かう先々に敵がいる感じしますよね」

 「わかります。ヤマトさんに敵が向かってるというかヤマトさんが不意打ち食らわせてるようなのが多いですよね……レーダーとか無いのに……実はリアルの方で誰かがそばにいてレーダー役やってるとか?」

 ……。

 「……まさかっ。ヤマトがそんなことするわけないでしょ」

 「ですよねぇ」

 あっぶねぇ~!そばにいるのは当たってるからまじで焦った!!リアルだったら心臓の音とか聞かれてたかも!顔に出てないよね?今の!あ、でもソラノは後ろにいるからそれはバレないか……いや~びっくりした。

 ふぅ、落ち着こう。

 とりあえずレーダー役の件は俺が居ることだしそれはない。たしか1時間経過した時に出現するモンスターはマップ上に表示されるって言ってたな。それがランキング上位などの大まかな位置を示すことになるらしい。

 ソラノが言っている通りヤマトが先制してることが多い。今も背後からプレイヤーを撲殺した。

 そしてやはりブースター移動。からの走り。ただ、今回は違った。立ち止まったのだ。

 ヤマトは辺りをきょろきょろとして細い道に入った。ドラグルズの中心部に行く近道になっている。

 そして休憩なのかゆっくり歩きながらいろいろとメニューをいじっているみたいだ。ガンドラウスの鎧もゆっくりと回復していってる。このインフィニティバトルリング中の鎧の回復とかは通常より遅いんだっけ?しっかし、よく下の鎧がボロボロにならなかったなぁ……。

 ん?待てよ?

 「カケルさん。わたしわかったかも……」

 「俺もわかったかも」

 

 

 

 

  

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