第94話
次の日は約束通り死ぬほどヤマトに付き合わされた。正直あのモンスターは俺がインフィニティ引退するまでもう相手にしたくない。
そしてあっという間にヤマトの予選当日の土曜日。
俺はいつも通りに午前中から桜の家に向かった。いつもの如く家に入るとエレベータ―を呼び、その間に洗濯物を洗濯機に。一階のトイレの状態を確認して三階へ。基本は一階のトイレは使わないらしいけど使わないなら使わない汚れ方をするので油断ならない。んで、三階のトイレ。汚れてはないがトイレットペーパーが切れそうだ。そして桜の部屋へ。
「ういっす~。トイレットペーパーそろそろ切れるぞ」
今日の桜さんは制服。PCデスクに座ってアイスコーヒーを飲んでいる。生足なところを見るとタイツは着てない模様。てか最近感覚フィードバック用のタイツを着てない気がする。
そんな事を思っていると桜はなんかムッと膨れていた。え?なんで?
「来ていきなりトイレ見らんでくれん?」
「いや、いつも見てるんだが」
「……変態」
「いやいやいやいや!ここに来させてもらってるから家事やるって前から言ってるだろ!」
「トイレとかやらんでいいし、私やってるから」
「どこがだよ、最近いつやった?」
「……」
「ほら!やってない!だって昨日も俺がやったし!」
「やるから、ちゃんと。……次から」
桜は急に静かに言った。少し顔が赤い気もする。
「……おう、やれよ」
俺もなんだか少し静かに言ってまう。たまにしおらしくなるのやめてくれませんかね。
「そろそろログインするからあなたも準備して」
桜は立ち上がって俺用のタイツをクローゼットから取り出す。
「そうします」
せっせと脱衣所で着替えて桜を見るとまだ生足だった。我ながら見るとこがいつもそこで気持ち悪い。桜は胸もある。うん、そういうことじゃないね。
「あんたはタイツ着ないのか?最近着てない気がするんだけど」
すると桜はじわりとスカートを押さえてゴミを見るような目。
「いやいや、ちげーよ」
こいつ一度ほんとに覗いたろか!
「最近はこれを着けてるの」
桜は言うとスカートをそろりと上げた。太ももが露になって結構きわどい部分にバンドがまかれていた。それが妙にエロい。あともうちょっと上がれば……見える!!この子見せたいの!?何なの!?嫌な顔でパンツを見せたいの!?
俺は一呼吸を置いて紳士モードになって落ち着くこととする。間違っても賢者ではないのでよろしく。
「ほう、それはなんだね?」
なんだこの口調。
桜は恥ずかしくなったのかスカートを戻す。うーん。今のはなかなかでござった。脳内ハードディスクに保存しときます。赤くなった顔で桜は話し始める。
「……これも感覚をフィードバックさせるやつで、メーカーから試作品のテストプレイとモニターを頼まれてるの」
「感覚?そんなもんでわかんの?」
「一応これにお腹のベルトと靴下と手袋、あとここにもバンドがある」
そう言って桜はブレザーを脱ぐ。すると下は半袖のブラウスで、二の腕の辺りに巻いているバンドを見せてくれた。太もももそうだったけど細いな~。
「VRやってる時ってタイツ着てなくても何かに当たったり触られたりしたら、そこがムズムズすることなかった?」
「あ~。あるな耳とかすっげームズムズするわ」
「それ耳舐めとかエッチなやつでしょ」
失礼な!俺が言ってるのは耳掻きVRの方じゃ!
「とにかくVRゲーム中って感覚が結構大雑把らしいとよ、だからそれに合わせて調節された刺激をこのバンドが与えると、タイツを着てる時と同じようにゲーム内での感覚を感じられるようになる」
「ほぉ~」
すげえな。
「ただ視覚情報に頼ったシステムだから背中とかが感じにくいんだけど」
こいつが背中にダメージ受けるのとかあんまりイメージできないからなくても困らなそうだけどな。
「それ俺にもないの?いつも段ボールの中に入るからタイツ着てると汗かくんだが」
「ないし」
「え~」
「毎回モニターとしての報告書を送るならメーカーに送るよう言っとくけど?」
「うへ、それはめんどい。俺ニートじゃないし」
めんどい。学校の課題とかもあるし毎回ゲームした後にそんなことまでしてたら色々と詰む。
「あのねぇ……だいたいこれを着ることになったのは……」
桜は何かを言いかけるが急に口を噤んだ。
「なんだよ」
「何でもない。さっさとログインしなさい。私も最後の準備があるんだから」
確かに予選開始まで時間もあまりない。さっきの言葉の続きも気になるがさっさとログインしよう。
インフィニティにログインすると街は祭り仕様になっていた。あちらこちらでポンとかパンとか花火が上がっていて、ところどころにホログラムの大型モニターが浮いている。ここで観戦する人用なのかな?急に発表されたイベントだからこういうのがあるとは思ってなかった。音楽も違うし。
「あ、カケルさんだぁ」
俺がぼけーっとしていると後ろからとってもスパイスィーな声で名前を呼ばれた。この声は一人しかいない。
振り返る。
「こーんにちはッ!」
とっても笑顔のソラノが立っていた。
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