第90話
インフィニティの音楽が流れて【インドラグルズジャーナル配信版生放送!】とタイトルが表示される。ちなみにインドラグルズは俺たちがいるこの人間界の国の名前【インドラグルズ王国】から取っている。
そしてスタジオの様子に切り替わる。5人ほどが椅子に座っている。
「あ、亜弥香ちゃんだ!かわいい~」
カレンが嬉しそうに言うので探すとスタジオの一番右にソラノ……じゃなくて大野城亜弥香がパチパチと拍手をして座っている。カレンは最近彼女の愛称じょあたそではなく亜弥香ちゃんと呼んでいる。声優と仲良くなったみたいです。夢がありますね。ちなみに俺はまだフォローを返してません!
見たところヤマトの姿はない。
ゲームの公式配信でよく見るサングラスをかけたおっさんが挨拶をすると左から一人一人軽い挨拶をしていく。ゲームの開発ディレクター、元プロゲーマーの人気男性解説者、ストーリーに出てくるキャラを担当している女性声優さん、そして、声優剣豪大野城亜弥香の番だ。
「みなさんこんばんは。インフィニティではまだキャラクターの声を担当してませんが歌を少し歌わせてもらってます。大野城亜弥香です~。今日は完全にプレイヤーとして来てますので皆さんと一緒でとても楽しみですよろしくお願いします~」
こうやって見るとほんとに声優さんなんだなぁと思う。手の届かない所にいる感というか、住む世界が違うというか。ていうか、ほんとかわいい。普通に可愛い……。やっぱフォロー返そうかな……。
一通り自己紹介がなされて拍手が鳴り終わると司会が口を開いた。
「そして本日はもう一方、先日行われた青王杯優勝者!ヤマトさんです!」
一斉に拍手が巻き起こると司会の左側に椅子に座ったヤマトが転送されて現れた。合成の技術も日々進歩していてゲームなどのキャラがスタジオに実際にいるように見える。何度見てもすごいよなぁこれ。
ヤマトはいつも通りの恰好で座っている。ゲームのリアルさなどもあってあんまり違和感がない。
いや、違和感があった。
「なんだあの笑顔」
俺は思わず声に出してしまった。無限王様が微笑んでおられる!これは
「ヤマトさん配信の時とかいつもこんな感じだよ?」
カレンは普通に言う。
「マジか……初めて見たわ……」
「翔ちゃんあんまりヤマトさんが出てる動画とか観ないもんね~」
なんなら今すぐゴーグル外して桜がどんな顔してるか見てやりたいわ。ハッ!覗くなってこれの事か!!?
そんなことを考えているとヤマトが挨拶を始めた。
「こんばんは、今日はよろしくお願いします。ヤマトです」
短ッ。あとはうふふと言わんばかりに微笑んでいらっしゃるよ。
「でもトークとかはあんまり変わらないかなぁ」
カレンにはこんな感じだもんね。日頃の桜さんを見せてあげたいわ。
ヤマトの違和感を何とかこらえながら配信を見ることにする。
最初のコーナーは先日のランドラドゴン撃退イベントの話。ピーク時には最大2万人のクエストが2000個以上同時進行していたとか……さすが世界の覇権を手に入れたゲーム。そりゃ大会の優勝賞金も破格ですわ。
次はアニメ情報とグッズ情報。アニメ主題歌とエンディングテーマ、あとサントラが発売。それと、ゲーム中に出てくるキャラクターのフレイって少女のフィギュアも発売。このフレイってキャラは第四圏が解放されたときのイベントキャラなんだが、そのイベントってのが難しすぎてクリアしたパーティが数えるほどだったっていうちょっと訳ありなイベントで、司会がその辺りをちゃんと突っ込んでくれていた。頼れるじゃねぇかサングラス!ちなみにSNSを見ると大荒れ。
ヤマトはというとそのイベントはしっかりクリアしたとドヤ顔。開発ディレクターもちゃんと把握しているらしく認めていた。やっぱすげえのな無限王は……。ついでにソラノもクリアしているようだ。マジで!?あれマジでクッソ難しかったよ!?なんで俺この人に勝てたんだろ。
そして、お待たせしましたゲーム最新情報。俺とカレンは二人で拍手して「待ってました~」とか「本編」とか言う。SNSの方も大体そんな感じ。
まずは赤王杯の開催スケジュール。来月の中旬から予選開始とのこと。まぁこれは知ってた。毎年開催月同じだし。
「翔ちゃんはもちろん出るよね?」
カレンを見るとこっちを楽しそうに見ていた。
「ん、まぁね、そりゃ出る」
出る気はもちろんあったがこんな顔で言われると少し気恥ずかしくなった。
「次は優勝して焼肉かなんか奢らないとな」
「うん!叙々苑楽しみにしてる!」
「高校生で入れてくれるのかな……」
「お客さんに年齢は関係ないよ!」
確かに、それは真理。
あんまり話してるとゲーム情報聞き逃してしまうのでモニターに目を戻すと話題は次に移っていた。そんなに重要ではない長期イベントと復刻イベントについて。
あとはこれは重要だな。今後ユニーク武装に関してアップデートイベントを考えているとのことでまだ先にはなるが参加条件はユニーク武装をある程度使っていることらしい。その話題になると自分のユニーク武装を隠してきているソラノに話が向いた。司会が「ですって!大野城さんも使わないと参加できないんじゃないですか?」とニヤニヤと言っている。やはり普通にインフィニティをプレイしてる人間にとってソラノのユニーク武装がエクスカリバーではないのか?というのは青王杯以来ホットな話題のようだ。ぶっちゃけまだ一カ月も経ってないしな。それに対してソラノは「あは~」だの「どうですかねぇ」だの言って誤魔化している。もう言っちゃえばいいのに。
うーん今日の配信特にこれといった情報なしか?ユニーク武装に関しては聞けて良かったけども、なんかパッとしないなぁ。
そんなことを思っていると開発ディレクターが語気を強めた。
「はい!ではこれが最後になるんですが……。こちらをご覧ください」
お?
すると暗転して映像が流れ始める。
壮大な音楽が流れ、ドラグルズの都心部で恐らくプレイヤー達数人が戦ってる様子が流れて途中から魔神系のモンスターが現れて乱入する映像が流れた。そしてそこに【インフィニティバトルリング開催】と文字がドーン。
何これ?新エピソード追加だとしたら少し動画が短いしキャラクターも喋ってないし……新しい要素は感じられない。カレンもポカーンとした顔で俺と目が合った。
すると画面がスタジオに戻って開発ディレクターが喋りはじめる。
「はい、ご覧の通り時間制限制バトルロイヤル、インフィニティバトルリングを開催いたします!」
時間制限制バトルロイヤル……?その言葉にスタジオのメンツは少し戸惑いつつ拍手。でもその中の1人……いや2人か、ヤマトとソラノは目をかっ開いてニヤついていた。このバトルジャンキーども……。
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