ブラックチップ

ササキ リノ

第1話 空気(そら)へ

新宿の某ビルの屋上で、郁美はためらっていた。

「靴はどっちに向けたらいいかなぁ?遺書は置いていこうか?

持っていこうか?」


12月にしては暖かい風を大きく吸い込んで、ため息に変えた


「足からにしようか?頭からにしようか?」

郁美は悩んでるというより怖かった。


「バタン!」

塔屋のドアが開いて

りくが入ってきた


「何やってんだお前!」


「これから死ぬんだから邪魔しないで!」

郁美は声を荒げた


りくは郁美に近づき

「わかったわかった、見ててやるから早く飛んでくれ、順番は守るよ」


「えっ!?あなたも自殺しに来たの?」

「そうだよ、だから早くしてくれないかなぁ・・・」


「なんか怖くて飛べなくて」

「アホか?じゃ俺が先に行くからどけてくれ」


「バタン!」

今度はビルの守衛が入ってきた


「お前たち何やってんだ、不法侵入者だな警察に突き出してやる」

守衛が二人に駆け寄ってきた


「ヤバいな、一緒に飛ぼう」

りくが言う


「えっ、うん、足から?頭から?」

「バカ、頭からに決まってんじゃん」

「あの私、郁美 あなたは?」

「俺は りく」

「行くよ」「うん」

守衛がすぐ手の届くところまで来ている



そして二人は飛んだ・・・



ビルとビルの狭間の



空気(そら)へ








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