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彼女は考えた。考えるために歩くのをやめた。しかし、それだと邪魔になるので、一応、店の外まで行ってみた。
大粒の雨とはいかないまでも、雨が降っている。広辞苑の入った紙袋は二重になっていてその上から雨用のビニールがかぶさっている。しかし、それだと心もとない。第一、有希子自身が濡れてしまう。もしかしたら、どこかでハプニングあるかもしれない。
有希子は途方にくれた。
とりあえず、店内に戻ろうとした時に各階の案内の中に、「四階 喫茶スペース」の文字があった。ありきたりの表現だが、有希子の体内に電気が走った。ここで雨宿りをすればいいと思った。同じ考えをしている人がいるかもしれないと思い早足で移動を開始した。
四階は哲学や思想の本を取り扱っていて、人が少なく比較的静かだ。本棚が並んでいる先に喫茶スペースがある。有希子はそこまでずっと同じスピードで移動をし続けた。
「いらっしゃいませ」
入り口に立っていた女性の店員はレジの男とは比較にならないくらい穏やかな声だった。
「お好きな席にお座りください」
店内には三組の客しかいなかった。有希子は急いできたことをちょっと後悔もしたが、結果オーライだとも思った。
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