深夜のコンビニで、女子高生を拾った。

つがる

第1話 深夜、コンビニ、女子高生

 女子高校生を拾った。


 いつも通り眠ることが出来ず、時間を潰すために訪れた深夜のコンビニの前でのことだ。彼女は入口から数歩離れたところで壁にもたれかかり、なんともつかない顔で行き交う車の群れを見ていた。


 深夜のコンビニ前に高校生がいるのはそれほど珍しい光景じゃない。それどころか、全国各地のコンビニには、全国各地の群れる高校生がいる。主に、タバコの煙やら酒やらを伴って。

 それなのに彼女はひとりだった。制服にコートを羽織った、特段不良でも優等生でもないような出で立ちで。誰かを待っている風でもなく、ただひとりで佇んでいた。


 普段なら近寄ることもせず、十分後には忘れているような存在。しかしその時の私は、何故か彼女に話しかけてしまった。毎晩訪れる眠れない夜はあまりに長く、退屈だったからかもしれない。



「なにしてるの。」



 それでも返事がなかったら、何も言わず店内に入るつもりだったし、半分返事がないことを前提で話しかけていた。しかし彼女は存外普通の声で答えた。



「車のナンバープレートを見てたの。」

「ナンバープレート?」

「平仮名の『お』って、車のナンバープレートには絶対に無いって聞いたから。」



 視線を道路に向けたまま答える彼女に、なるほど、つまりは何もすることがないんだな、と思った。



「『お』は『あ』に似てるから、間違われないようにって聞いたことある。」



 私がテレビか誰かから聞いた根拠も何も無い知識を言うと、彼女は表情を変えずに、そうなんだ、と応えた。



「『あ』と『お』って、そんな似てるかなあ。」

「みんなが言うなら、そうなんじゃないの。」

「そっか。変なの。」



 確かに変だな、と思いながら、それにはなにも答えずに言った。



「何か食べたいものある?」



 彼女は初めてこちらを見た。瞳が、夜の色をしていた。どこかで見たことがある色だった。



「……肉まん」

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