水琴窟
箔對店主
第1話 静かな 音
赤子が死んだ。
僕の弟。
薔薇の花弁が湖面を舞い、
悲しみの吐息が霧となり
森に垂れ込める…
そんな日に彼は黄泉路へ旅立った。
将来が約束されていた筈の一生涯を、
一片たりとも垣間見れずに。
幼い衝動に駆られ
両手を日に翳す。
血潮はみえず、
只、眩しさに眼が眩み 涙する。
…躰が重い。
死を請われるより辛い境遇に、
吐き気が止まらない。
昼食後の休息の一時…
いつも独で、森に現実逃避をしに来ていた。
湖面に迫り出した折り重なる木陰、
痩身の身を横たえ、嘆息。
耳を擽る柔らかい風に半ば意識を飛ばしながら、
己の鼓動に耳を傾ける。
両親の心中という悲劇に見舞われ
養子’として引き取られた先は
陰陽筋の天才、鬼才を生み出してきた名家だった.
理不尽にも弟の代わりを求められた僕は
役立たずと誹られ、
毎日幾度となく
死の淵に突き落とされた。
毎日虐待紛いの責め苦を受ける。
…僕には力’なんて無いのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます