第2話 運命……?
4月20日、慶央大学の入学式。
辺りは春めいて、桜が風で舞い上がり、
あたかも新入生を祝福し、背中を押されているような雰囲気に包まれている。
俺はみんなとは異なる感情を抱いていたと思う。多分、みんなとは違う……。
周りは嬉しそうな顔して、青春を謳歌する気満々であるようなオーラを出している。
俺はどんな風に見えてんのかな。
凄い根暗なやつで、近寄りがたい存在という評価でもつけられているかもしれん……。
まぁ、くよくよ考えても仕方ない。
取り敢えず、今は前を向こう。
「新入生の諸君、この度は慶央大学合格、おめでとう。つきましては、………」
学長のありがたい言葉を10分程度拝聴し、そのあと、財界や政治家、それから国際関係で活躍されている著名人から簡単な挨拶があり、入学式は終わった。
って、あの有名な大臣もここだったんだ!
驚きです……。
会場を抜けると
「ねぇ、テニスサークルに入らない?」
「是非、漫画研究サークルこと、漫研に入りたまえ」
などと、個性的な多様性に富んだいわゆる、サークル勧誘が行われていた。
っっつ!! なんだよ、この紙の量は!
俺が配る係みたいになってしまった。
いや、もういいって……。もう乗せないでくれ……。
やっとの思いで抜けられた。
普通に疲れたな。
「ははっ」
何だかよく分からない疲れに対して、そしてまだやりたい事がきまっていない自分に対して、少し自嘲気味に笑った。
とその時だ。
「………っっっっつ!!!」
俺は人とぶつかり、簡単に言えば吹っ飛ばされたのだ。
「痛ってぇ……………」
お陰で周りには無数の紙が散乱してしまい、早くも大学生による《奉仕活動》たるものが始まってしまった。
「すみません……」
俺は《奉仕活動》をしている人達に対し、謝りながら、急いでかき集めた。
当然、優しく接する人や半強制的にやらされているように無愛想な対応をする人もいる。正に、十人十色ってやつか。
そんななか、
「すみません……。私のせいで……」
と話しかけてきた。
この子こそ、俺に体当たりしてきた張本人だった。
「全然大丈夫ですよ。それより、ケガは無かった?」
俺も現金なやつだな。
「あっ……全然大丈夫です!」
と元気よく、答えてくれた。俺の下心がばれなくて…………ゴホンゴホン。
何でもない。
「申し遅れましたが、私、溝呂木彩香と言います。法学部生です!あなたは?」
と聞いてきた。
「村上直哉です。俺も法学部生です。よろしくお願いします!あっ、そうだ。LINE、交換しませんか?」
よく初対面の人に言えた。頑張った俺。
「いいですよ!ただ……」
えっ、今って交換してもらえるパターンじゃないの?しかも、ただ……ってめちゃくちゃ意味深じゃないか!失敗か?
「今、私ガラケイしか持ってなくて、メアドしか交換できないんですけど……」
良かったぁ~。
「構いませんよ。むしろ、メールの方が読んでるのかなとか、どう思ってるのかなとか色々考えられるので、そっちの方が良いです」
取り敢えず、取って付けたような理由を言ったら、
「ふふっ。面白いですね」
と笑われた。まぁ、当然だろう。
でも、友達が出来たことはとても嬉しい。
友達など、もはや絶滅したものかと思えるほど、新規の人とは定期的な会話さえ成り立たなかった。そこから考えれば、進歩しているんだと思う。
「では、また明日」
頭をペコリと下げて、俺とは違う駅の方向に帰っていった。
「俺も帰るか」
俺はその場を後にして、駅に向かった。
俺は帰りの電車で、さっきの子のことを考えていた。
溝呂木彩香。
髪は短く、俺よりは身長が低く、明るくハキハキした感じの子だった。レジャーランドとか行ったら、最後まで園内を走り回っているのだろう。
まぁ、それはそれで楽しいけれど。
そう考えると未來なんて、一緒にどこか行ったって、遠慮してる感じだったし、そもそも行きたくない所だって、俺の機嫌を取るように会わせたりしていた。更に…………。
気がついたら、未來の文句ばかりを連ねるような思考回路になり、どうでもいい気がさてきた。
確かにすごく好きだった。でも、そこに真の「愛」があったかと言えば、疑問符が生じる。正直、二人きりでも楽しくなかった。
周りのカップルを見て、
「どうやったら、仲良くいられるんだろう」
とばかり、思っていた。
恋は出来ても、その相手に「愛」を感じなければ、それは形式上に作られた「付き合い」にしか、ならない。
そう思った。
俺は恋をしないと決めたはずだったが、撤回する。そして、こう思った。
再び恋を、そうフタコイを始めようと。
フタコイ 明日葉直希 @fairwind
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