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「つめたい」
「つめたい」
でしょうね。だって手のひらに直で雪だもんな。指先まで真っ赤になっているし、冷たいに決まってる。
「雪ウサギさんはもうお家に帰してあげたらどうだ?」
「んー」
コタロウは渋るように考えてから「わかった」と頷いた。
「おうちにかえしてあげる」
「かえしてあげるの?」
リョータ君はまだ考えているようだ。
「きっとゆきうさぎさんにもそのほうがいいとおもうから」
「どうして? かわいそうじゃない?」
「ぼくたちがもっていたら、とけちゃうでしょ。だからゆきの中にかえしてあげるの」
「でもゆきのなかでもとけちゃうよ」
リョータくんは眉根を寄せて困った顔になる。
「でもなかまがいるところでとけるほうが、いいきがする」
「・・・そっか!」
困った顔が笑顔になって、二人は雪ウサギを手にしたまま公園に戻って行った。
俺なんかより随分大人な考え方をするんだなぁ、なんて。自分が二人と同い年くらいの時、そんなこと考えたことがあっただろうか。
雪ウサギも雪だるまも沢山作って来たけど、溶けるのが可哀相だとか、溶けるなら雪のなかで溶けた方が良いとか、考えたこともなかった。
俺にとってはただの雪だったけど、二人にとっては“大切にしたいもの”だったのだろう。
うーん、純粋とはなんて美しいものなんだろう、なんておじさんはしみじみと思う訳で。
「おうちにかえしてきたよ」
「そうか。じゃ、二人もお家に帰るか。ココア飲んでから」
「ココア!」
「ココア!」
二人の瞳がパッと輝いた。冷え切った身体を少しでも温めて帰って欲しいから。
優しい二人の少年に、甘くて温かいココアを贈ろう。
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