閉鎖空間を脱するための3のコト
我闘亜々亜
プロローグ
沈殿していた意識が、じわりと浮上してきた。
「――こなの!?」
同時に鼓膜を刺激した、女性らしき声。荒らげられていて、激情を想像させる。
「聞かれてもなぁ」
次は若い男性らしき声が聞こえた。両方、聞き覚えがない声だ。
開けようとしたまぶたは、接着寸前のように重苦しく感じる。どうにか開けた視界で、声のした方角を見る。
ぼやけが強くて、ハッキリとは見えない。新品のような真っ白な背景に、ぼやけた縦線があるのはわかる。きっと人影だと思う。
おぼろげな脳の中、じんわりとピントが定まってくる。細かい特徴まではまだ認識できないけど、2本の縦線が人の姿だと確信できるまでになった。
「あ、起きた?」
1人が近づいてくる。相手の角度、目の前でヒザをつかれたことで、自分が地にふせていたことにようやく気づいた。
「大丈夫? 起きられる?」
倒れていたら、心配もされるはずだ。どうして寝ていたんだ? ぼんやりとした頭は、結果を見つけようとしてくれない。
ひとまず目の前の人を安心させるために、ゆっくりと体を起こす。調子に乗って、昼すぎまで寝てしまったかのような重みを感じる。サポーターをつけているみたいな、鉛のような感覚だ。
「痛いところはない?」
ずっしりとした起床のせいで心配はぬぐえなかったのか、相手の質問は続いた。
地面に倒れるなんて、よっぽどだ。『寝ている』とは思えなかったのかもな。オレ自身、寝た記憶がない。心配されるようなケガでもあるのか?
「平気、だ」
だるさに似た感覚はあるけど、痛みはない。起きる際も痛みはなかった。しゃっきりしない違和感はあるけど、気をつかわれるほどの症状は感じない。
「なら、よかった」
目の前の姿は、にっこりと笑った。少し幼さを感じる、親しみやすい笑みだ。くりっとした瞳は中性的で、見た感じ学生くらいの年代か?
この声と姿で、男性の声の正体だと理解する。
男性の奥には、腕を組んだ女性がこっちを強いまなざしでにらんでいた。さっき聞こえた女性の声の正体か?
声の発生源になりそうな人が他にいないか見回す。
すべてが白におおわれた……室内? 学園の教室より、少し狭い程度の広さだ。
新雪よりも白を感じる、一切のよごれがない壁や床。四方の壁には、窓や扉は見当たらない。傷1つない床は、床下収納とかが隠されているようには見えない。室内をてらす照明すらない天井にも、階段が隠されているような様子はうかがえない。部屋というより、巨大な箱という印象が強い。
こんな場所で、オレは寝ていたのか? そもそもこんな場所に来た記憶がない。見覚えや心当たりもない。
別の床に視線を向けて、衝撃が走る。
地にふせる、見覚えある少女。
「プリシス!?」
駆け寄って、顔をのぞく。閉じられたまぶたは、意識がそこにないと感じさせる。
顔色は悪くなくて、外傷も見られない。寝ているだけ、なのか?
身にまとう学園の制服に、乱れやよごれも感じられない。いつもと変わらない、校則にのっとった着用だ。
「顔見知り?」
男性の声と同時に、プリシスのまぶたがぴくりと動いた。ゆっくりと開かれて、みずみずしい瞳が姿を見せる。
ぼんやりと宙を見ていた双眸は、やがてオレにゆっくりと向けられた。
「……先生?」
少し頼りない声だったけど、その口元が微笑をまとった。笑えるなら、ケガや痛みはないんだな?
「無事か? なにかあったのか?」
こんな場所で倒れているなんて、有事としか考えられない。
おとなしくて問題も起こさないプリシスだ。なにかしらのトラブルにまきこまれたわけではないよな? ケガがなくてよかったけど、怖い目にはあっていないのか?
「え……と」
想起するように、視線をよそに向けたプリシス。小さく開けられたままの口からは、続けられる言葉はない。長いまつげの奥でちろちろと泳ぐ瞳は、問いに答えられる記憶が見つけられない事実をほのめかした。
どうしてここにいるのか、わからないのか?
「全員、状況が理解できていないの?」
響いたのは、りんとした女性の声だった。視線を向けたら、さっきと変わらずに腕を組んでたたずむ女性。
言葉と比例した強さを感じる表情は若々しい。プリシスや男性と年齢は大差なさそうだ。私服だから、あるいは学生ではないかもしれないけど。それを言ったら、男性も私服か。
「整理しようか。全員、起きたみたいだし」
いつの間にか床にヒザをついてた男性の隣には、上半身をゆっくり起こそうとする男性がいた。
オレの体の重さ、いつの間にか消えていたな。寝起きだからってだけだったのか。プリシスに驚いて、すぐに消えてくれたんだな。重い症状でなくてよかった。
男性は寝起きなのか、しっかりした表情ではない。それでも、誰なのかは瞬時にわかった。
「シオン先生!?」
オレの声に、その視線がオレに向く。瞬間、かすかに瞠目した。互いに今、存在に気づいたみたいだ。
シオン先生の口は小さくぱくぱくと動いているけど、まだ意識が完全に戻らないのか耳には届かない。
「まず聞くべきは、どうしてここにいるか」
オレたちの様子を気にもとめないで、女性は変わらない態度で言葉を発した。
シオン先生に事情を聞きたい思いもある。でも周囲を見回すシオン先生を見る限り、オレと同じ状態に感じられる。
起き抜けの状態で聞いても、思考がまとまらないかもしれない。今はこの状況を理解するだけで手一杯だろうし。
なにか知っているなら、シオン先生から話してくれるはずだ。
そう考えて、自分の思考に戻る。女性の問いの答えを求めて。
プリシスやシオン先生がいる理由も、ここにつながる。
どうして、ここにいるか。
改めて室内を見回すけど、見覚えがない場所だ。心当たりもない。
窓も扉も照明もないのに、暗さのない白におおわれた部屋。
「学園で挨拶した帰り道。それが私の最後の記憶」
女性が続けた言葉を聞きつつ、オレも思考をたぐる。
最後の記憶。オレは……なんだった?
「うちは部室に1人、ぽつねんしてた」
元気に手をあげた男性も続ける。状況のくせに明るい笑顔で、深刻さをやわらげてくれる。
最後の記憶。どうしてここにいるか。
まだ把握できない状況ながらも、それが求められているとはわかった。
さっきよりまともに動くようになった脳で記憶を探る。
「……プリシスと、一緒にいた……よな?」
自信がなくて、プリシスに視線を向ける。上半身を起こしていたプリシスは、不安が消えない瞳をしている。
最後の記憶。帰ろうとするプリシスと、学門で少し話をしていた。それなら、学生服のままのプリシスも説明ができる。
プリシスも思い出せたのか、弱々しく点頭した。体の前でぎゅっと握られた拳が、隠しきれない不安を表現している。
痛々しい姿を前に、早く状況を解明して不安を消したい衝動に駆られる。解決できるだけの情報がないのがやきもきする。
「僕は、職員室で仕事をしていました」
シオン先生も続けた。この短時間で意識を覚醒させられたのか、ハッキリした言葉だ。
「全員、この状況になった理由に心当たりはないのね」
誰も異論しなかった。残念ながら、集められる情報はなかったらしい。
起きたら、知らない場所にいた。
考える可能性は、誘拐とかか?
全員に記憶がないのはどうしてだ? 薬をかがされるとかで意識を閉ざされたにしろ、かがされた記憶もそろって消えたのか? そんな都合のいい薬があるのか?
だとしたら、オレはプリシスと一緒にいたのに、プリシスを救えなかったってのかよ。なにやってんだよ、情けない。
戦う強さはないオレだけど、抵抗してプリシスだけでも逃がす程度はできただろ。
それすらできないほど手早く薬をかがされたのか、あろうことかオレは恐怖で動けなくなっていたのか。
どちらにしろ、大切なプリシスを守れなかった事実には変わりない。
「いた場所もバラバラだしね。『学園』って意味では、同じと考えてもいいかな?」
オレとプリシスは学門、シオン先生は職員室、男性は部室、女性は学園の帰り。『学園』という共通点はあると考えてもいいかもな。
「同じ『学園』だったのか?」
オレの問いに返されたのは、全員同じ学園名だった。現状、見つけられた唯一の共通点か?
「これ、関係あるのかな?」
けろりとした男性の声に、シオン先生は目を細めて視線を送った。
「学園のせいと言いたいのですか?」
『説明願いたい?』
突然、脳内に声が響いた。通常の声と同レベルの声量だけど、鼓膜を通過しない、脳に直接というのは『響く』という表現がしっくりくる。
「なに!?」
驚く女性の声で、周囲を見回したりする他の人たちの様子で、声は全員に聞こえたのだとわかった。
プリシスもびくりとして、両手を両耳にそえた。おびえきった瞳を小さく動かして、かろうじて周囲を探っている様子だ。
『この声は、全員に聞こえているよ。個別会話もできるけど』
変声でもされているのか、ぼわっと脳に広がる声は性別すら推定できない。喜々とした口調は、不快をあおる。
「誰なの!?」
女性も不快を感じたのか、腕を大きく振るって声を荒らげた。声の発生源をどうにか探りたいのか、その瞳は男性に、オレに、周囲に飛んでまとまりがない。
『それ聞く? 聞いても、どーにもなんないよ』
笑いまじりの語尾に、女性は悔しさをこらえるように唇をかみしめた。それでもゆるまない眉根のシワに、気の強さを悟る。
女性とは対照的に、プリシスは声が響くたびに小さく震えている。
安心させたい思いはあれど、どうしたら不安を消せるのかわからない。黙って見るしかできないオレは未熟だ。
「あなたは誰ですか? 目的があって、我々をこのような場所につれたのですか?」
『ご名答~。さすが先生はかしこいね~』
シオン先生に敬意を感じない、バカにしているとしか思えない返答。
イラつきはするけど、感情を抑制する。状況がわからない以上、軽率に動けない。動揺を見せたら、プリシスを不安にさせる。
『説明すると、お前たちは今日、死にます』
「なっ!」
あまりにも単純な単語だけで告げられた内容に、女性は声を漏らした。その反応を待っていたとばかりに届いた笑いに、女性はそれ以上の言葉を続けなかった。
プリシスは不安に耐えるようにうつむいて、存在を消すように縮みこんでいる。
「冗談でも、そのようなことは言うべきではないですよ」
あんな言葉を前にしても、シオン先生は冷静に教職者らしい言葉を発した。動揺する心はあるだろうに、平静な発言ができる姿は改めて尊敬しかない。
シオン先生の平静に感化されて、オレの心も少しだけ正常を得られた気がした。どんな状況でも、シオン先生の存在はありがたくて心強い。
『首にちゅうもーく!』
届いた声に、自身の首の違和感に気づく。首に手を伸ばしたら、つるりとした輪があった。一定間隔でくぼんだ感触がある。
最初からつけていたものではない。そもそもオレは、こんなアクセサリーを持っていない。
まさかと思って、プリシスに視線を向ける。プリシスも自身の首に手をそえていて、そこにある首輪の感触に動揺をのぞかせていた。
シオン先生も首にある輪の存在に、かすかに驚きを見せている。
女性は自身の首輪に手をそえたまま、周囲の人間の首をにらむように見ている。自分以外にもついているか確認しているのか?
男性は既に気づいていたのか、首に光る首輪を前に行動を変えることはなかった。オレらの行動を、ちらちらと目で追っている。
全員の首に、指ほどの太さのつるりとした首輪がある。部屋と同じような純白で、一定間隔で小さなくぼみがある。オレの首輪もそれだろう。
息苦しさまでは感じないけど、指1本入る隙間すらない。指をすべらせて首根まで首輪をたどっても、接合部らしき感触は伝わらない。
「かすかに魔力を感じますね」
シオン先生の言うように、首輪からは魔力を感じられる。ただの首輪ではないみたいだ。
それなら接合部のなさも納得できる。魔力で成形して装着する装備もある。この首輪も、その部類かもしれない。
『なにもしなかったら、首輪の毒薬で天にご招待!』
毒薬が響いたのか、プリシスは逃げるように首輪から手を離した。おびえた瞳が痛々しい。
首輪に毒薬? そんなものが隠されているのか?
太さはある。チューブみたいに中が空洞になっていて、毒が格納されているのか?
穴を開けられたら、毒を排出できるのか? かたい感触だから、そう簡単には開けられなさそうだ。首輪に強引に穴を開けるなんて、少し間違えたら首を傷つける。毒を出せたとして、毒の強さがわからない。皮膚にふれただけで危険なら困難だ。穴を開ける際に傷つけた皮膚から毒が侵入する可能性だって。
そもそも謎の声がある以上、うかつに行動に移せない。
気にはなるけど、オレの不安はそのままプリシスに伝わりかねないように思えて。平然を装ってたたずむ道を選んだ。
「そんなことが許されると思っているの!?」
声を荒らげた女性は、気にかかるのか首輪に手をそえたままだ。
さわるだけなら大丈夫だよな? 首輪を指摘された際に、ほとんどの人がふれていた。形状の確認のためにオレも指をすべらせたし、ふれるだけなら問題はないはず。
『こっちも、理不尽はしないって。生存方法はあるよ』
突如、脳に小さな丸い物体のイメージが浮かんだ。自分の感情と無関係に浮かんだイメージ。
声といい、このイメージといい、首輪の効果か?
『この欠片を首輪に3個つけたら、毒薬は発動できなくなりまーす。良心設計!』
指で確認したら、くぼみは3箇所あった。プリシスたちの首輪も、3箇所のくぼみが確認できる。
首輪のくぼみは、そのためか? 話を信じていいのか、疑問は残るけど。
「ふざけないで! バカげたことにつきあう理由はない!」
『バカはそっちだよ。欠片を集めないと、死ぬよ?』
「こんなものっ!」
女性は力任せに首輪をひっぱったけど、外れる気配はない。
乱暴に扱っていいのか? 毒薬が発動したりしないのか?
「冷静になってください。脈を圧迫します」
オレと同じ懸念を抱いたのか、シオン先生は女性のそばに近づいて冷静な言葉を送った。
「黙れ!」
シオン先生のたしなめにも、女性は応じようとしないで首輪と格闘を続ける。首輪にはじかれた指が空回って、カツンカツンと響く。
「やめなよ。雑にさわって発動したらどうするの?」
男性の言葉に、女性の力がゆるむ。考えることは誰もが同じだったみたいだ。プリシスは震えたままで、まだ自分のことで手一杯の様子だったけど。
首輪から離した手を垂らした女性は、悔しげに眉間にシワを刻む。
『仮に首輪がとれたとして、どう脱出するの?』
響いた声に見回して確認したのは、プリシスだけだった。他の人は既に『ここには窓も扉もない』と気づいていたんだ。
壁、床、天井すべてが真っ白。脱出できそうな場所はおろか、紙1枚通せそうな隙間すら見当たらない。
「どう……して」
絶望に近い声が、プリシスから漏れた。励ましてやりたいけど、オレも状況がわからない以上、どうしようもできない。根拠のない『大丈夫』を言っても無意味だ。
新たに増えた不安に瞳を振るわせるプリシスを前に、無念を痛感しつつたたずむしかできない。
『なにもしないで、今日首輪で死ぬか。強引に首輪をとって、飢餓で死ぬか』
試すような口調に、女性は視線を泳がせるだけで反論はしなかった。
脱出口がないなんて、どうなっているんだ?
魔法で可視できないようにしている? だったら、手探りで見つけられる。ここまでする相手が、単純な道を選ぶとは思えないけど。
確認のため、近くの壁にふれる。伝わるのは、壁材すら感じられないなめらかでひんやりとした感覚だけ。継ぎ目は一切感じられない。
『本当にないよ。ざっくり言うなら、魔法で作った空間にお前らを閉じこめてんの。お前らを脱出させられるのは、こっちだけ』
オレの行動を見ての声だよな。つまり相手は、オレたちを監視もしている。
「魔法の空間ですか……厄介ですね」
シオン先生の声の理由もわかる。
魔法の空間は、練習すれば使える人もいる魔法だ。
でもそれは『空間に荷物をしまって手ぶらにできる』とか、そのレベルで。人を収容できる空間なんて、聞いたことがない。5人も収容できるとなると、かなりの術者だとは推定できる。
『わかった? お前ら、もう掌中ね。信じられないなら、指定した方法で5人の誰かを今バシュッと殺してもいいよ? それで信じる?』
『殺す』なんて単語、使うなよ。プリシスが余計に怖がる。
立て続けの恐怖を前に、プリシスからは血の気がひいていた。
「いえ、信じます」
不穏な空気を察したのか、シオン先生が素早く返した。
冷酷な言葉でこれ以上プリシスをおびえさせたくないから、その判断は助かる。
「勝手に……」
シオン先生を見て言葉を漏らした女性からは、さっきまでの勢いは失われていた。強気だった瞳からは、かすかな揺らぎが消えない。
「脱出できないと、飢餓があるのには変わりません。声に従う選択しか残されていないのでは?」
「理由もないまま支配されて、どうしてそういられるの!?」
声を荒らげた女性に、室内に雷鳴が走った。誰もいない場所にとどろいた雷は、人を畏縮させるには満足な威力だ。
プリシスだけでなく、オレまでびくりとした。シオン先生たちも同様だと思う。
響いた箇所に、全員の視線が集中する。
『言ったよね? お前らは掌中。今の攻撃が当たったら、どーなってたと思う?』
雷の攻撃。そこになにかあったなら、黒くこげて焼けたようなにおいがしたと思う。
放たれた場所にはなにもなかったから、感覚すらないけど。少しもこげもしないで白を保つ床に『ここは魔法で作られた空間』という言葉に確信をくれた。
『生きたいなら、欠片を集めるしかないよ』
誰もが言葉を発するのをやめた。
欠片を集めたら、首輪の毒が発動しなくなる。真実かわからないけど、わからないからこそ、今はそれに従うしかない。
逃げられない状況。支配された状況。真偽を判断できなくても、雷鳴の危険がある以上、その言葉を信じるしかないんだ。
「欠片を集められたとして、オレたちはここから出られるのか?」
問題はそれだ。首輪からの呪縛を逃れたとして、ここから逃げられないなら結局飢餓しかない。
『ゲームが終わったら、魔法の空間を解除するよ』
つまり、ここから出られる。真偽はわからないけど、今は信用するしかない。
「そのあとの身の安全は保障されるのか?」
首輪は外されるのか? 『欠片で毒が発動しなくなる』と言っているけど、信じていいのかもわからない。毒のない代物に変わったのかもわからない首輪が外れなかったら、残るのは不安でしかない。
『さすがにそこまで粘着はしないよ。平穏に戻すって』
『欠片を集めれば、命は奪われない』ってことか。信じていいのかはまだわからないけど。
「ゲームって?」
男性の声が響く。さっきの笑顔は消えて、どこか不安を感じさせる表情だ。
『欠片の入手のために、お前らにしてもらうのさ』
「ふざけているの?」
女性の声に、クククと笑い声が返された。不安をあおられたのか、プリシスの体がぴくりと震える。
『棄権するなら、それでもいーよ。1人でも棄権すんなら、ゲームの開催はやめるけど』
「ゲーム以外で欠片を入手する方法は?」
プリシスをまきこみたくはない。誰よりも不安になっているプリシスを『ゲーム』とやらに参加させたくはない。
1人の棄権すら許されないなら、ゲーム以外の入手方法を探るしかない。
『ないよ』
完全にこの声の掌中である空間。この声が絶対的なルールだ。強引にねじ曲げようとでもした日には、あの雷の餌食になる。
『さて、棄権者はいる?』
それは全員も理解しているのか、手をあげる人はいなかった。女性も悔しさをにじませて、両拳を握りしめている。
蒼白のままたたずむプリシスも、動きを見せようとはしなかった。反応はしていたから、声は聞こえていたはずだ。
「プリシス……平気か?」
内気なプリシスは、主張できないだけかもしれない。
こんな状況で、内容のわからないゲーム。プリシスでなくたって、本当はやりたくないはずだ。
でも棄権は許されないから、嫌でも受容するしかない。それはシオン先生や男性の晴れない表情が証明している。
ちらりとオレに向けられたプリシスの瞳は、痛々しいほどにか弱かった。暗い洞窟で震えていたあの瞬間をちらつかせる。
「1人も棄権できないのよ。聞いていなかったの?」
プリシスが口を開くより先に、トゲトゲしいの女性の声が響く。
オレだってわかっている。でもこんなに怖がっているのに、なにもしないでいられるかよ。
言い返したい思いはあるけど、反論がなにも変えないのはわかっている。『棄権は1人も許されない』というルールに支配されているから。
「棄権、できないのか? オレが倍動くとかで――」
『許されませーん』
オレの願いはあっさりと否決された。ここで粘ったら、また雷撃が放たれるかもしれない。その懸念が、オレにそれ以上の言葉を放たせなかった。
「大、丈夫……です」
弱々しいプリシスの声が、かろうじて耳に届く。
「先生がいるなら……平気」
白しかない床を見ての小声は、オレに向けた声なのか、自身を震わせるための独り言なのかは判断できなかった。
『無理はするな』と言いかけた口は、声を作る前に閉ざされる。無理はしているに決まっている。必死に恐怖に耐えているに決まっている。
わかるからこそ、安い言葉を言うのはやめよう。プリシスが少しでも楽になれるように、どうにか行動で奮闘しよう。
力なくうつむくプリシスに、シオン先生も心配の視線を送っている。プリシスを気づかっているのは、オレだけではない。だから平気だ。
『開催決定! まずはざっくりルール説明~』
軽やかにはずむ声は、レクリエーションのMCみたいだ。『この状況を娯楽として楽しんでいる』としか思えない。不安や怒りに震える姿を見て、優越感を感じるタイプか? おびえるプリシスに快楽を感じているんだとしたら、怒りもわく。でも雷撃の可能性がかすめて、声にできないのが悔しい。
『ゲームの勝者には、欠片を1個贈呈! 欠片の効果はさっき言ったから省略』
首輪に3個はめたら、毒の機能が作用しなくなる。死を免れられる。
この首輪に、本当にそんな効果があるのか? そっと首輪にふれた指先はひんやりして、死の恐怖がよぎった。
脳に響く声、浮かんだイメージがある以上、この首輪にそれらの機能はあると考えてもいい。それだけの技術者なら、毒や欠片で発動不能ってのも可能か。
『毒の機能は欠片でとめられる』という、そもそもの条件を信じていいのかすら疑問だけど。暴れたらどうなるかわからない状況だ。信じるしかない。
『各ゲームでは、他の参加者との明確な答え合わせは禁止。間接的とか、ぼかしてとかなら許容もしてあげるけど』
「こちらはぼかしたつもりでも、明確な答え合わせと判定される可能性は?」
シオン先生の懸念はもっともだ。絶対的ルールが相手にある以上、こっちの基準で行動するのは危険だ。
『発言前にとめるよ』
「そんなの、可能なのか?」
状況だけでなく、発言まで支配されるのか?
『試す? 話そーとしなよ』
突然のフリ。やってもいいのか、やるべきなのかわかりかねて周囲を見回す。他の人も同じ思いなのか、ちらちらと視線がぶつかった。唯一、プリシスだけは両手を体の前で組んでうつむいたままだったけど。
少しの沈黙の中、シオン先生が控えめに手をあげる。その口が小さく開けられたけど……届く声はなかった。
『わかった?』
シオン先生は、ゆっくり点頭した。話そうとしたけど、できなかったみたいだ。
それを見て女性の口も動いたけど、空回りするだけだった。
オレも適当に発しようとしたけど、音のない世界に飛ばされたかのように声にはならない。男性の口もパクパク動いているけど、声としては届かない。
この機能で『明確な答え合わせに近い内容』と判断されたら、声にはならない。
口は正常に動かせたから、読唇できるなら理解はできそうだけど。少なくともオレとプリシス、シオン先生はできない。男性と女性も表情は変わらないから、きっとできないんだろうな。
『許可されていない場面以外では、ウソも禁止』
「破ったら?」
恐々と男性が聞いた。平静でいられないのか、視線はちらちらと動いている。
『その瞬間、ザシュッと。バイタルデータとかで正確に判定するから、バレないって思わないことだね』
それもこの首輪の性能か?
ウソも発言前にとめればいいのに。しないなんて、相手の残忍性がうかがえる。怒りが出そうにもなるけど、荒立てるのは危険だ。状況を悪化させないためにも、今は従うしかない。
『まずはこんなもんかな』
あっさりしすぎた声に、場に沈黙が訪れた。
理解できない状況に投げ出されて、そう簡単に受容はできない。
不安、懸念、怒り。様々な感情が押し寄せて、自分の身の振りも判断できない。
冷静に見えるシオン先生も、かすかに揺らぐ瞳が動揺を物語っている。
男性からは笑顔が消えて、脱力したようにたたずんでいる。
女性は首輪に手をそえて、脱出口を求めるように視線をとりとめなく動かしている。
そして。
「……大丈夫か?」
プリシスは、強い不安を隠しきれないままうつむいている。
オレの声にびくりと震えながらあげられた顔には、涙がたまっていた。少しでも糸が切れてしまったら壊れてしまいそうなほどの危うさがある。
「あの……あたし、どうすれ……ば」
ガタガタ震える声に、心が痛んだ。
根拠のない励ましはしたくない。それでも目の前のプリシスに、なにもできないのは嫌だった。
「生きる道はある」
欠片を3個集める。ゲームが終われば、この空間からも脱出できる。
話を信じるなら、生存の道はある。オレ自身がそう信じたい思いもあった。
「ルールについての質問、よろしいですか?」
恐怖を消せないままのプリシスを前に響いたのは、シオン先生の声だった。いつもと変わらない声音は、不安をあおられない。
『なーに?』
「ゲームで勝利したら、欠片が1個もらえる。この解釈でよろしいのですね?」
一体、なにを確認するつもりだ? オレとプリシスの意識が、シオン先生に移る。
『そー』
「すべてで何ゲームあるのですか?」
質問の意図がわかって、ひやりとした。
ゲームで勝利したら、欠片が1個もらえる。欠片3個で生存できる。
もしゲームが2種以下だったら? 『勝者に欠片を1個贈呈』と言っていた。ゲームが2種以下なら、どう動いても誰もが欠片を3個入手できない。
『ご安心を。ちゃんと3ゲーム以上あるよー』
「全何ゲーム?」
『わかんないほうが楽しーでしょ? 1桁とだけは言っておく』
この状況を楽しまれるのは不快だけど、男性の質問で情報は得られた。
ゲームは3種以上、9種以下か。欠片を3個入手する必要があると考えると、妥当な線か。
ただ……仮に全9ゲームだとしたら。勝者が出るのは全部で9回。この場にいるのは5人。必要な欠片は15個。
確定に近い嫌な可能性がよぎる。こんな簡単な計算、誰もができる。他の人も気づいてはいるはずだ。
プリシスからあふれる不安の波が変わらなかったからには、プリシスは恐怖で頭が回らなかったのかもしれない。
ルールの意味を聞いたら、理解したら、プリシスをおびえさせるだけだ。指摘するべきではないのかもしれない。
「すべてのゲームで『欠片がもらえる勝利者』は出ますか?」
シオン先生は、オレの考えが及ばなかった点まで質問した。
全員が敗者になる可能性があるゲームがあった場合、ゲームが3種あったとしても欠片を3個入手するのは不可能だ。
オレが考えた以上の『嫌な可能性』があったのか?
『全ゲームで勝者は出るよ。欠片がもらえないゲームはない』
すべてのゲームで欠片がもらえる。ゲームの数は3種以上はある。ひとまず最悪の可能性は回避できた。嫌な予感は消えないけど、プリシスが生き残る道はある。
「聞いただろ? 道はある」
まだ恐怖が抜けきっていないプリシスに視線を戻す。そう簡単に平静に戻れはしないか。
『確定に近い嫌な可能性』に気づいてしまったわけではないと思いたい。おびえても状況は変わらないなら、できるだけおびえさせたくない。
「怖くて……動けるか」
不安に震える瞳は、とても痛々しい。
成績も素行もいいプリシス。気弱で控えめな性格で、教室では若干浮いている感が否めなかった。
無視とかのいじめはないけど、なじめない様子が気にかかって積極的に声をかけるようになった。
人見知りだったのか、最初はぎこちない態度だった。『会話になれたら、教室でも友達ができるようになるかもしれない』と交流を続けた。
「オレが、支えるから」
不安も恐怖もある。オレだって人間だから当然だ。
でもそのすべてを押し殺して、優しくほほ笑んだ。プリシスから不安の色が少し薄れたように見えた。
「は……い」
その口元が、かすかにゆるむ。
不安と心ゆるびのまじった表情を見るのは、いつ以来か。
課外授業で集合場所に戻らないプリシスを捜索して、暗がりの洞窟で見つけた瞬間以来か?
声をかけたオレに泣きはらした顔で、でも安心だけを乗せて口をほころばせてくれた。
「先生がいて、よかったです」
ゆるんだ顔は、すぐにぴりりと戻された。
「ごめんなさい。不謹慎でした」
『こんな場所にいてよかった』と解釈されたと誤解したのか?
オレも本音を言えば、こんなことにまきこまれたくはない。でもプリシスだけがまきこまれるより、オレも一緒のほうがいい。
「気にするな」
オレがいてもなにもできないけど、少しでも安心を届けられるなら。
……なにもできない?
欠片を3個入手したら生存できるなら。
オレが集めた欠片をプリシスに渡したら、プリシスが生存できる確率をあげられるんじゃないか?
『欠片の譲渡は禁止ね』
オレの思考を読んだかのような声が響く。全員に届いているらしく、それぞれの反応があった。
欠片は渡せないのか。1人で3個の欠片を集めるしかないのかよ。
おびえたままのプリシスが、なにをするかもわからない『ゲーム』で勝利をつかみとれるか?
他の人は、不安はかすめとれても、まだ冷静さは残っていそうに見える。そんな人相手に、プリシスは3回も勝たないといけない。
不安が騒ぐ。
「欠片を入手させたい相手が勝てるように動くのは?」
残された道は、それしかない。
同じ場所にいながら、プリシスを助けられないなんて嫌だ。この場でオレができるのは、これしか思い浮かばない。
『ルールに反しない限りでなら、ご自由に』
ルール上問題ないなら、できる。たった3回、プリシスを勝たせるだけ。
ただそれは、オレやシオン先生、他の2人の生存の可能性を狭めることにもなる。
恐怖や罪悪感はある。プリシスのためとはいえ、やってもいいことなのか? でも……プリシスを救うには、これしか。
「だめです」
オレの葛藤を揺るがしたのは、弱々しいながもしっかりしたプリシスの声だった。
「先生がいなくなるなんて、嫌です」
プリシスの表情は、さっきとは違う不安で満たされている。うるんだ双眸は、今にもあふれそうで。さっきまでとは違う痛々しさを伝えた。
オレだって、できることなら生き残りたい。でもプリシスが生き残れなかったら、残るのは罪悪感だ。
シオン先生たちをおとしいれたくはない。でもプリシスのためにできるのは、これしか浮かんでくれない。どうすればいいんだよ。
「自己犠牲はよくありません。命を大切にしてください」
少し厳しさのあるシオン先生の声。シオン先生がなによりも大切にする、命の尊さ。オレもシオン先生から教えられた。
『自分が欠片を入手できる可能性が低くなるかもしれないから』ではなく、本当にそう思っているんだ。
誰かを救うためでも、自分の命をなげうつのは間違っている。シオン先生から言われた言葉。
想起した言葉にも、焦燥がにじむ。この状況で、他にどんなやりようがある?
「全員が欠片を3個入手できる可能性は、ありますか?」
『フェアなルールだから、安心して』
それは……全員が欠片を3個入手できるって意味か? 覚悟しなくてもいいのか?
この状況を作った相手に『安心』なんて感情は生まれない。でも信じるしかないのも事実だ。
不安にそまったプリシスを見て、さっきとは違う悔悟が生まれた。オレの覚悟が作ってしまった不安。
「それなら、安心だな」
一同を見て、発した。
さっきの『勝たせたい相手に欠片を入手させる』発言を消せるように。プリシスに抱かせてしまった思いを消せるように。
「全員が生き残れるんだね?」
圧から解放されたかのように、男性の顔に笑顔が戻った。人なつこい笑みで、空気が少しなごんだように感じる。
「それなら、僕たちがやるべきは1つです」
シオン先生が続ける言葉は、わかった。
「全員で協力して、全員が欠片を3個入手できるようにしましょう」
勝たせたい相手に欠片を入手させることが違反ではないなら。有利な状況の人が不利な状況の人を助力すればいい。それで全員が救われる。
プリシスを救える。シオン先生の言葉を無視しないで済む。
「不本意だけど、他に手段もなさそうね」
完全に納得はできない様子ながらも、女性も賛同を示した。不安は押し殺されて、さっきみたいなりんとしたたたずまいに戻っている。眉間のシワは変わらなくて、不快は残ったままだったけど。
「協力しあおう」
プリシスにほほ笑んで伝える。視線を向けたプリシスは、小さく点頭した。『協力する』という言葉のおかげか、少しだけ不安が消えているように見えた。
「まとまったところで」
男性が手のひらをあわせて、音を出した。
「名前、聞いてもいい? 見ず知らずの人が3人もいるし、その状態で『協力』っつってもね」
「甘いわね。私は全員、知らないわ」
対抗するところではないと思う。女性はたたずまいだけでなく、気まで強い人なのか? 場をなごませたかっただけ?
とはいえ、男性の発言は事実。名前も知らない他人相手に『命を預けた協力』なんて、不安しかない。
「申し遅れた。エオだ。教師をやっていて、プリシスの担任だ」
名乗らないままでいたなんて、教職者らしからぬ行為だった。こんな状況とはいえ、忘れるなんて。
「だから顔見知りだったんだ」
オレとプリシスを交互に見て、男性は言葉を漏らした。ころころ動く瞳は猫みたいだ。
起きたばかりの頃、そんなことを聞かれた気もする。あの状況だったとはいえ、無視する構図になって申し訳ない。
「さっきは心配、ありがとうな。ぼさっとした対応で、悪かった」
起きてすぐの記憶はまばらだけど、だからこそ『うつけた対応をしたんだろう』とは思える。
「いいって。起き抜けしゃっきりのほうが怖いし」
笑みを変えないまま、男性は両手を振った。それもそうだろうけど、一切気にしていないかのような態度には好感が持てる。
「エオも、シオン先生の教え子なの? 『先生』って呼んでいたよね」
「いや、教師仲間だ」
シオン先生に教えられたことは多すぎる。そんな意味では『教え子』といっても、過言ではないかもな。でも生徒として教わった経験はないから、否定するべきだろ。
「それだけか」
表情を切りかえた男性は、一同に視線を戻して口を開いた。
「うちはリナール。OBとして、部活にふらーっと顔を出したんだ」
それで運悪くこの状況か。不運を感じさせるのを嫌うように、表情はゆるい。幼さの残る表情は、卒業して間もないと感じさせた。現役時代の生徒が、部活にまだ残っているのかもな。
「シオン先生は当時の担任。こんな再会をするなんてね」
リナールがさっき話した『3人の見ず知らずの人』以外だったのは、シオン先生だったのか。オレに『シオン先生の教え子か』と聞いたのも、自分と同じか気になったからだったんだな。起きたシオン先生のそばにいたのも、そんな理由があったからだったのか。
話題にされたシオン先生は、リナールにおだやかな笑みを向けた。
「本当ですね。喜ばしい再会をしたかったです」
卒業を見届けた生徒と、こんな状況で再会。
ちらりとプリシスを見る。そんな再会、想像しなくても嫌だ。
会えないままでいいから、幸せな生活を送っていてほしい。大勢の友達に囲まれて、魅力的な人と結婚して、元気な子供をもうけて笑っていてほしい。
「僕は、教師のシオンです」
知らない人に向けて、シオン先生も親しみやすい紹介を終えた。シオン先生は、女性以外とは見知った関係だったみたいだけど。
教師として、オレより長いキャリアを持つシオン先生。未熟なオレに指導してくれたのもシオン先生だった。
「私はトゥアリ。教育実習生よ」
もう教育実習の時期だっけ。教育実習生とは深く絡まないから、気にとめていなかった。絡んでも、新人のオレが教えられることなんてないし。
生徒の多い学園だし、すれ違っていたとしても記憶には残らなかっただろうな。
この短い時間でも多く目についた、トゥアリの気の強さ。シオン先生とは正反対の教師になりそうだ。不良とも対等に渡りあうタイプになるかもな。
「あっ……プリシス、です」
自分の紹介が終わっていないと気づいたのか、トゥアリに注がれた視線に気づいたのか、プリシスはわたわたと紹介を終えた。
オレが自分の紹介をする際にプリシスの名前を出したから、既に知られてはいるだろうけど。こんな状況でなくとも、自分で名乗るのは大切だ。
「不安な点もありますが、今の我々には協力しか道がありません。助けあいましょう」
年長者らしいシオン先生の言葉に、力強く賛同した。
プリシスもシオン先生を見て、かすかに点頭した。おびえきっていた頃より、表情は幾分ゆるまっている。頼れるシオン先生の存在は、オレだけでなくプリシスにも安心を届けているんだ。プリシスの言葉ではないけど、シオン先生がこの場にいてよかった。……プリシスの言ったように、不謹慎に感じるけど。
リナールもシオン先生の存在に、言葉に、決意を振るわせている。
トゥアリは強気な表情を崩さないでたたずんだままだったけど。反論しないからには、納得はしてくれているんだよな。
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