第7話
「ミキ、久しぶりね」
「久しぶり!高校の時以来だから4、5年ぶりくらいかな?」
先ほどアキに見せていた鬼の形相は消え失せ高校の時の眩しい笑顔で抱きついてきた。
「相変わらず変わらないね、ミキは」
するとミキはすぐに頭を下げてきた。
「本当にうちのアキがごめんなさい!」
「いや、別に迷惑かけられてないから、むしろ居てくれて嬉しいくらいだよ」
実際のところアキが来てから私の生活には、色が着いた。
「それでもあなたにこれ以上迷惑はかけたくない。アキは私のマンションに来てもらう」
「姉さん!そんな話聞いてないよ!」
先ほどから黙っていたアキが慌てて言った。
「アキ!あなたのやっていることは色んな人たちに迷惑をかけすぎなの!」
「まっ、待ってよ!一旦落ち着いて話し合おう」
珍しく私が下手に回り今にでも取っ組み合いになりそうな2人に静止をかけた。
「そうだ!ミキ昼食まだでしょ?一緒にどう?」
「……お言葉に甘えさせてもらうよ」
ミキは少し考えたが、なんとか食事に誘えた。
「昼食はチャーハンにしてみました」
香ばしい匂いが鼻孔に突き抜けた。
「相変わらずアキは、料理だけは上手なようね」
「姉さんが一切しないからでしょ!」
「しないんじゃないの、できないの」
「開き直らないでよ……」
「フフッ」
「どうしたの?」
「知り合い2人が姉弟っぽいことしてたから」
久しぶりの再会で和やかな雰囲気の中で食事は進んでいった。
「さて、そろそろアキのこと話させてもらっていいかな」
先ほどよりトーンを下げてミキが話し出した。
「どこまであなたが知っているか聞きたいんだけど」
それから私は、駅でアキを拾ったこと。アキの母親に対して本気で怒りそのままアキを居候させていること。
「今思うとミキが引っ越したのも再婚の関係だったのね」
「その後すぐに1人暮らし始めた私はあまり関係なかったけど、アキも辛かったんだね……ごめん」
「姉さんは悪くないよ」
「でもねアキ、それとこれとは話が別。これ以上迷惑はかけられないのよ」
「私からは何も言えない。これはアキが決めることだから」
私はアキに残ってほしかった。アキがいなくなったら、また幸せのない日々が戻ってくる。
(でも、これは家族のことだ。私が首を突っ込んでいい話ではない)
「私は1度帰るけど、また来るから。アキの面倒見てくれてありがとう、それじゃ」
ミキはすぐに出ていってしまった。
「すみません白石さん、なんだか巻き込んでしまって」
「今更でしょ。それと別に私は出てけとも言わないからアキ自身がちゃんと決めなさい」
次の日、アキは家を出ていった。
《友達の家に少し泊まらせてもらいます》
「丁寧に書き置きまで残して……」
置いてあった朝食を食べ私も家を出た。
「あきら一生のお願いだから!」
「姉に見つかって、白石さん家を追い出されそうになって、その上白石さんと気まずくなったから泊めてほしいと?」
今朝、僕は白石さんのマンションを出たまではよかったが実は行く宛はなかった。
「アキ、友達の家に泊まるとか言っといて泊まる場所ないのかよ」
「アキはそういう所あるよね」
いつの間にか雲雀は来て僕たちにヤジを飛ばした。
「……そうだ。雲雀の家に泊まればいいんじゃね?」
「ばっ……馬鹿!」
(雲雀そこまで言わなくてもいいのに)
「冗談だって、アキは俺の家に泊まればいいよ」
「ありがと~」
((やっぱりアキと……))
クラスメイトの意見が一致した瞬間だった。
(白石さん大丈夫かな……)
アキにとってはそんなことよりも、白石さんのことが心配で仕方なかった。
(あ、お弁当作り忘れた)
「白石!まだ仕事終わらないのか!」
今日は1段と上司に怒られる。
「白石さん何かあったの?」
「すみません何でもありません」
先輩にも心配される始末だ。
(原因はアキだろうな……)
泊まることに関しては短期間だろうし、アキのことだ問題はないだろう。ただこれからアキの居ない生活が続くかもしれないと考えると……
「白石!手が止まってるぞ!」
「すみません」
こんな調子で午前中はいたからか昼食にありつけたのは2時過ぎだった。
「あれ、白石も今から?」
休憩スペースに行くと東先輩がぐったりしながらパンにかぶりついていた。
「東先輩、三徹明けですか」
「さすが白石、何徹か分かるようになったのね。そういう意味では育って欲しくなかったな……」
「私もお弁当食べていいですか?」
横に座りバッグを開けるが、そこにお弁当は無かった。
「あれ白石、今日は彼氏のお弁当はないの?」
そういえば今朝お弁当は無かった。
「パンでよければ食べる?」
「大丈夫です。そろそろ仕事戻ります」
「ちょっ、白石!倒れるよ!」
その日はそのまま家には帰らず寝ずにずっと仕事をしていた。
最近ではずっと仕事を持ち帰り1日でも多くアキとの食事のために帰っていたが今日からはしばらくは帰る気持ちは無かった。
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