第6話

次の日の朝

「おはよ!」

昨日あんなことがあったのに、それを感じさせない笑顔でミキは待っていた。

「おはようミキ」

彼女なりに普段の自分を保っていたいのだろう、私もそのことはわかってはいるがどうしてもダメだった。

「おはよう!ミキ」

「おはよう!」

何も知らないクラスメイトからの笑顔に、笑顔で答えるミキは見ていて辛かった。

「ミキお昼行こ」

いつものように私はミキを屋上に誘った。

私はいつものように宮村先輩の話を振らずに直球で聞いてみた。

「どうしても引越しするの?」

「……うん、家の都合でね」

「ミキ、私考えたの」

私にとって彼女の引越しは大きかった。

一生懸命考えて少しでも彼女に幸せになってほしい一心だった。

「やっぱり宮村先輩に告白するべきだよ!」

「私も考えたよ、でも先輩も困ると思うし……」

「そんな理由であなたの何年間を無駄にする気!?」

胸ぐらをつかむ勢いで言い放った。

「珍しいね、そんなに大きな声を出すなんて」

「そんなことはどうでもいいの!今すぐにでも、行ってきなよ!」

「ありがとう、でもごめんね。やっぱり無理だよ」

その日はすぐにお開きになり、午後になると少し声がかけずらく今日も1人で家路についた。

次の日のも、その次の日も私はミキに声をかけなかった。

そんなことをしているうちにミキの引越しの日が着実に迫ってきた。

(今日こそは)

お昼になり私は席を立ちミキに近づいた。

「ミキ、お昼行こ」

ミキは満面の笑みで私に答えてくれた。

「うん!」

……これが彼女のずるいところだ。

「そういえばさ、あの時弟がね」

普段通りのミキだ。いつものように他愛もなくそしてそんな話を取り留めなくする。

「ミキ」

「どうしたの?」

「ごめん」

私は今からそんな彼女の優しさをぶち壊す。

「お願いだから気持ち伝えてよ」

「またその話?何度も言うけど……」

「私には大事なこと話せても、好きな人には話せないの?」

「それは……」

「私は誰にでも対等で、それでいて私には弱みを見せてくれるミキが大好きだよ。だからこそ私には今のミキは好きになれない」

「どうしてそこまでして私のこと考えてくれるの?」

「親友であること以外に理由なんていらないでしょ!」

「でも……私……自信無いよォ」

そうやって泣くところがあなたと親友やってる理由だよ。

「私には応援しかできないけど」

「私頑張ってみるね!」

その時の彼女の笑顔は今でも鮮明に覚えている。

その日の夜ミキからメールが届いた。

「振られちゃいました」

たった一文で私は人生でもっとも後悔させられた。

そして次の日ミキは転校して行った。


「それ以来は連絡も取ってないな、何してるんだろミキ」

私が告白しろといい、その上で彼女は振られたのだ。今更どんな顔していいのかわからない。

「きっと僕はミキさんは白石さんに感謝していると思いますよ?」

「どうして?私のせいで振られたのに?」

「そこがまず違うと思います。ミキさんは最後には自分の意思で気持ちを伝えたと思うのできっと背中を押してくれた白石さんにはとっても感謝してると思います」

アキに言われるまでそんなこと考えてもいなかった。

「ミキさんに連絡でもとってはどうですか?」

そう言い残してアキは昼食を作りにキッチンへと行った。

「……かけてみようかな」

スマホを取り出しすでに入っているミキのケータイに電話をすることにした。

いつもだったらミキはどんな気持ちでいるのかとか、恨んでるとか、思うのだが今回は迷わず電話をかけることができた。

「………もしもしミキ?」

何年も経っているのだ忘れていてもおかしくはなく覚悟していた。

「親友のことなんて忘れるわけないでしょ!」

「ミキ……」

それからしばらく雑談を続けていた。

アキ言う通りミキは私のことを恨んでいたりは一切無かった。

「……白石さん、お昼出来ましたけどどうします?」

「……男か」

「違うから!ただの居候!」

「本当かな……そういえば居候で思い出したけど実はうちの弟が最近実家から家出したのよ……」

「…………」

アキから突然笑顔が無くなった。

「……ミキ、参考までに聞きたいんだけど弟の名前ってなに?」

「アキって言うんだけどね」

「あなたのお宅の弟うちで預かってるんだけど……」

すると電話口越しに転げ落ちる音が聞こえてきた。

「冗談とかじゃなくて?」

「……声でも聞かせてやるよ」

「誘拐犯!?」

そう言ってアキにスマホを投げ渡した。

「……もしもし、ミキ姉さん?……あれ?すぐに切れちゃいましたけど……」

「なんか言ってた?」

「GPSですぐ行くからって」

ピーンポーン

「あれー宅配便かなー(棒)」

アキの方が勧誘を断るのが得意でいつもそういうのは任せていた。

「はーい、どちらさ……」

「アキー?勧誘かなんかだったー?(棒)」

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ!?アキっ!」

玄関に行くとアキが誰かを前に倒れていた。

「2人とも久しぶりね」

「「ミキ(姉さん)……」」



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