災悪

ユウ

第1話


 目からあふれる光を揺らめかせ、そいつはほくそ笑む。


「この世なんて滅んでしまえ!」


 そいつにとっては、この世の全てが許せなかった。この世で行われる愚行、人々の何でもない営み。

 そのすべてがこの男の気に障るのだ。

 空では雷鳴がとどろき、その男の輪郭を浮かび上がらせる。その男はその闇の中で目だけを光らせ、世の中を見下ろしていた。


 やがて雨が降り、男の顔を伝うも、それは涙とは程遠いもの。


 その雨は豪雨となり大地に降り注ぐ。


「ショウキ様間もなくです」


「そうか、やれ、もっとやれ、この世の全てを食い尽くすまで」


「仰せのままに」





 コウガは軍団を引き連れ、街へ降りると目に止まるもの全てを引き裂き、食い殺す。

 それこそ動くもの全てを。人はおろか、猫だろうと犬だろうと全てを食い尽くす。


 街は焼かれ、山は焼かれ、人々の悲鳴がとどろき、まるで地獄絵図を現実に模写したような光景が繰り広げられる。

 あるものは、命乞いのもとに頭を断首され、あるものは勇敢にも立ち向かうも、一刀のもと引き裂かれ、あらがえど、したがえど、なすすべなく皆殺しにされていく。


 そこには、人や動物の躯が転がり、血痕が飛び散り、血の海を作る。

 やがて、世界は滅び、うごめくものは何もなく、野も山も焼き尽くされ、ただ一人、その男だけがそこに立ち尽くした。


 その荒廃した世界でその男は何を思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

災悪 ユウ @yuu_x001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ