災悪
ユウ
第1話
目からあふれる光を揺らめかせ、そいつはほくそ笑む。
「この世なんて滅んでしまえ!」
そいつにとっては、この世の全てが許せなかった。この世で行われる愚行、人々の何でもない営み。
そのすべてがこの男の気に障るのだ。
空では雷鳴がとどろき、その男の輪郭を浮かび上がらせる。その男はその闇の中で目だけを光らせ、世の中を見下ろしていた。
やがて雨が降り、男の顔を伝うも、それは涙とは程遠いもの。
その雨は豪雨となり大地に降り注ぐ。
「ショウキ様間もなくです」
「そうか、やれ、もっとやれ、この世の全てを食い尽くすまで」
「仰せのままに」
◇
コウガは軍団を引き連れ、街へ降りると目に止まるもの全てを引き裂き、食い殺す。
それこそ動くもの全てを。人はおろか、猫だろうと犬だろうと全てを食い尽くす。
街は焼かれ、山は焼かれ、人々の悲鳴がとどろき、まるで地獄絵図を現実に模写したような光景が繰り広げられる。
あるものは、命乞いのもとに頭を断首され、あるものは勇敢にも立ち向かうも、一刀のもと引き裂かれ、あらがえど、したがえど、なすすべなく皆殺しにされていく。
そこには、人や動物の躯が転がり、血痕が飛び散り、血の海を作る。
やがて、世界は滅び、うごめくものは何もなく、野も山も焼き尽くされ、ただ一人、その男だけがそこに立ち尽くした。
その荒廃した世界でその男は何を思う。
災悪 ユウ @yuu_x001
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