第5話 もんぺおばさんの唄
小学校へ続く坂道の脇に
あなたはいつも もんぺ姿で
畑を耕してましたね
子供たちはもんぺおばさんって
バカにして笑っていました
僕はそれが嫌でジャイアンツの帽子を
深くかぶり走り抜けてました
もんぺおばさん 覚えてますか
もんぺおばさん 覚えてますか
ギャンブル好きの父と
あなたはいつも けんかで
割れたガラスを片付けてましたね
タスキがけの背中に泣いている
妹をあやしながら
僕はそれが嫌でグローブとボールを持って
グランドに逃げていました
もんぺおばさん 覚えてますか
もんぺおばさん 覚えてますか
モノクロの写真に写っている
あなたはいつも 変な顔で
僕を笑わしてくれましたね
大晦日の夜たった一度だけ
泣いていたのを知っています
僕はその時どうしていいかわからず
眠る妹の横で泣きました
もんぺおばさん 覚えてますか
もんぺおばさん 覚えてますか
アルツハイマーとは悲しいもので
息子でさえ 他人に変わる
昼下がりの縁側で肩を並べ
アルバムを見ていると
あなたはいつも 言うんです
私の息子に似ているねって
僕はしわしわの手を握り
ありがとうって言うのが精一杯で・・・
あと5分だけでいいから
あなたの息子でいさせて下さい
5分だけでいいから・・・
あなたの息子でいさせて下さい
お母さん・・・
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