【お絹という女―其ノ貳】
「あぁん? 彫吉あんたいきなり何を言い出してんだい?! 寝言ってぇのは夜中寝てる時に言うもんであって昼間に言うのは妄言ってんだよ? 情けないねぇ。彫金のやり過ぎでとうとう頭がイカれちまったのかい?
なまじ人より才が有るってぇのは一長一短だね。天は二物を与えずとはよく言ったもんだ。彫吉は彫り師としては一流かもしれねぇが、男としては、いや、人としては
「絹よぉ、俺が言ってんのは寝言でも妄言でもねぇぜ。ましてや悪い冗談でもねぇ。俺は本気だぜ。俺はおめぇと一緒んなりてぇ。今日此方に上がらせてもらったのは、絹のおとっつぁんおっかさんに俺とおめぇのことを認めてもらうためだ」
「だからそれが悪ぃ冗談だってんだよ! 何時あたしがあんたと
あたしは短く刈り揃えた後ろ髪をがりがりと掻き上げうんざりと肩を落とす。
「それに、あんたはあたしがどんな女か知ってんだろう。見てみなよこの髪。結うことも出来やしない。女として半端もんなんだよあたしは」
『女は
それを端から捨てているあたしには、誰かと夫婦になる資格はねぇんだ。
「絹よぉ、そんなもんは些末なことだとは思わねぇか? おめぇらしくもねぇ。髪が長かろうが短かろうが、絹は絹だろ。そんなことより、おめぇは俺が嫌かい? 俺じゃ不満かい?」
嫌なんて、不満なんて、無い。
無かった……のに!!
「そんなことより、だと! こん
(次話に続く)
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