悲しく淋しいだけ

@kounosu01111

第1話

第一章

 戦時中日本の全土が米軍機の来襲に遭ったらしい。この文章は、母からの聞き語りになる。飛行機の部品作りの会社が小高い山の上にあった。

 そこには常に見張りがいて、その見張りは双眼鏡を持っていた、頻繁に米機が飛来していて、その一機が田圃の中に撃ち落とされた。母がその現場に行くと、それは日本機だったという笑い話にもならない事件であったと云う。その工場は東雲工場と言われて、今の流通経済大学の裏手にあった。その工場は建機を生産していたが、過去の中嶋飛行機とは違い民間の平和な重機であるブルドーザーやフォークリフトを作っていて、昨年は、日立建機に身売りされてしまった。その日立建機でさえ持ちあぐねているらしくて、次の会社を探していると噂されている。

 戦後はその工場の門には二人の銃を構えた米兵が立っていた。それは西部劇に出てくる背の高い青い目をした騎兵隊のようないかつい大男だったらしい。その近くに父が建てた実家に今は住むものはいない。

 この家は古い。しかし継がなければならない。それはただ単に家を守るだけではなく、墓を守らねばならない。

 私の心の底に刑務所願望があった。自分は罰せられるべき人間だと気が若い頃から漠然と自分の心に巣食っていた。それは感傷には違いなかったが自分から離れることが無く、何時かは形に表わして決着をつけて薄めないと自分のために良くないと考えていた。無意味でチャンチャラ可笑しいことを承知の上でとにかく自分に向かってその振りをしないと前には進んでいけない。


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