第7話 オイスター伯爵領

俺は『封印の洞窟』を出た。これからはまず伯爵領に出て、異世界冒険を始める。

デルタさんの遺言の部屋にあった封筒には『この世界の生き方』という紙が入っていた。デルタさん並みに俺がこの世界を生きやすくするために考えてくれたのだろう。俺はこれを守ろうと思う。だってデルタさんからのお願いのようなものだ、守るしかないでしょ?

封筒に入っていた紙に入っていた紙には大きく分けてこんなことが書いてあった。


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この世界をカズヤさんが生きていくには

・実力を隠す

むやみにカズヤさんの力を見してはダメです。その力に惹かれて寄ってくる人が出てきますから。

・人には優しく

この世界ではカズヤさんは一人です。人に優しくして入れば仲間は自然と増えていきます。

・カズヤさんの居た世界の常識ではなく、この世界の常識を基に行動してください。

カズヤさんの居た世界とこの世界はかなり違うと聞きました。もしカズヤさんの居た世界の常識で行動していたら大事な人を失いかねません。

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と。確かに俺は地球、いや日本の常識にとらわれていて大事な人、デルタさんを失った。これからはこの世界の常識で生きていかなければまた大事な人を失う。それだけはもう嫌だ。まぁ、大事な人ができるかどうかなんだけどさ。


俺は韜晦スキルで自分のステータスを偽造し、街に向かった。


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街の近くは草原になっていて、魔物の襲撃にあいにくいようになっている。町は外壁に囲まれていて、東西南北の4つの門以外からは入れないようになっている。今回俺が入る門は東門だ。

東門には行商人のような場所を連れた人たちが列を作っていた。この世界は関税があるらしい。門の近くには兵士の詰め所があり、馬車一台一台積み荷を確認している。こりゃ時間がかかりそうだ。


俺の番が来るまで2時間はかかった。その間俺は並んでいる他の人にこの町の話を聞いて回っていた。


「次。お、若いな。坊主、目的はなんだ」

「観光です。この街には綺麗な湖があると聞いたので」


綺麗な湖があるというのは待っているときに俺の前に並んでいた夫婦に聞いた話だ。


「そうか、身分証か冒険者カードはあるか?」

「身分証ですか?」

「ああ、こんなやつだ」


兵士のおっちゃんは自分の身分証を見してくれた。名前はイワンさんというらしい。

身分証は紙に自分のステータスを写したものだった。前に来た時なデルタさんの顔パスだった。


「持ってないですね」

「冒険者ではないよ、な」

「はい」

「入市税は銀貨1枚だ。身分証も銀貨1枚で再発行できるぞ」

「じゃあお願いします」


俺はデルタさんからもらっていた白金貨1枚を渡した。


「おいおい、坊主もっと細かいの持ってないのか?」

「すいません、それしかないですね」

「そうか。お前どっかの貴族様か?まあいい、ついてこい」


流石に金貨などのお釣りはすぐには渡せないらしい。俺はおっちゃんについていく。


門を入ると賑やかな街並みが見えてきた。兵士の詰め所は門を入ってすぐのところにある。


「入ってくそこで待っててくれ」


おっちゃんは詰め所の奥に入っていった。

詰め所の中は地球の交番のようになっていた。詰め所の奥は休憩室というよりは機材置き場のようになっていた。

少しすると奥からおっちゃんがプレートをもって出てきた。


「坊主、入市税と再発行の代金はお釣りから天引きしていいか?」

「はい、お願いします」


俺はお釣りを受け取ってポケットにしまう振りをして次元倉庫にしまった。


「よし、じゃあステータスを見してくれ」

「はい、ステータスオープン」


俺はステータスを開いたが開いたのはスキル韜晦で作った偽のステータスだ。


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名前;江藤 和也 男 Lv10

職業;剣士

体力;560

筋力;300

俊敏;250

抵抗;300

魔力;100

魔抗;100

固有能力:剣技 気配感知 算術 言語理解 

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「ほお、レベル10か。以外に高いんだな」


そう、レベル10とはかなり高いのだ。普通、街にいる人とかは平均レベル2ほどだ。俺やデルタさん、フェルさんやそのお仲間たちが例外的に強かったせいで感覚がくるっていた。

俺は韜晦スキルで作ったステータスの職業は剣士にしている。魔法使いにすると、もし魔法でなんかしでかしたときに疑われる可能性が出るからだ。

俺が剣士の真似事ができるのかって?そこは本当のステータスの『魔法創造』でどうにかなるし、武器は『創造魔法』があるから何とかなる。


「それよりもお前、迷い人か?」

「はい、そうですけど」


しまった、名前を変えるのを忘れていた。


「珍しいな。最近は全く見なくなったからな。いやー、知恵と生命の樹の組織につかまらないように気をつけろよ」

「はい、わかっています」


知恵と生命の樹の組織は普通に知れているようだった。本当に裏で暗躍している組織なのだろうか?それともおっちゃんが兵士だから知っているのだろうか?


「あいよ、坊主。こっちが入市許可証でこっちが新しい身分証だ。次は迷い人にはきつい生活かもしれないが頑張れよ!」


迷い人のことはこの世界では知れ渡っていることらしい。まぁ、初めての異世界の街の観光だ。前にデルタさんと来たときは気持ちがもやもやしていてあまり観光をした期にはならなかったからな。


「ありがとうございます。近くで安い今夜休める場所ってありますか?」


「んーそうだな。あまりこうゆうのは言っちゃダメなんだけどな。うーん」


やっぱり贔屓とかと言われるために兵士などは一つの所を勧めてはいけないようだ。


「まぁ、迷い人だから特例だろう。俺のおすすめはギルド横の『猫の小屋』という場所がオススメだな。このことは誰にも言うなよ」


俺はもう一度礼を言うと、詰め所を後にした。

あっ、しまった。場所聞くの忘れてた。まぁ、ギルドの隣って言っていたしどうにかあるだろう。

それにしてもギルドか。やっぱり異世界だな、ここは。

俺はこれからどうするかを考えながら街道を歩いて行った。別に目的地は決まっていないが。


少し歩いていると気になることが出てきた。

門の近くでは見なかったのだが、街の中心に近づくにつれて首に鎖をつながれている人たちが増えてきた。何かのアクセサリーかな?なんてことはないよね。これは異世界あるある(俺が勝手に作った)の奴隷ってやつかな?

今も道の端などを見ると、首輪をつけた人たちが高そうな服を着た人に荷物を持ってついて行っていたり、水辺で服を洗っていたり。やっぱりその人たちは奴隷なのだろうか?

前にデルタさんと来たときは西門から来たので気が付かなかった。


その後も俺は街の中心に向けて歩いたが、首輪をした人たちは増えていくばかりだった。


俺はギルドが見つからないので、屋台を開いているおっちゃんに聞いてみることにした。聞くのは恥ずかしいからしたくなかったんだけどな、このままじゃ宿屋が見つからないよ。

もうすでに太陽は地平線の奥へと顔を沈めていっている。


「すいません、ギルドってどこにありますか?」

「あぁ?坊主他人に何か聞くときはそれ相応の物ってのがあるんだよ」

「わかりました。じゃあ串焼き一つ。で、どこにありますか?」

「おう、坊主わかってるじゃないか。銅貨10枚だ」


俺は銅貨10枚を払って串焼きを貰い、ギルドの場所を教えてもらった。

マジかよ、ギルドって入ってきた門のすぐ近くだったのかよ。

俺は元来た道を引き返して東門へと向かっていった。


うん、あったよギルド。詰め所の隣に。そりゃ場所の説明もしないわけだよ。出たらすぐ隣がギルドなんだもんな。


俺はギルドの詰め所ではない、反対側の隣にある『猫の小屋』という宿屋に入っていった。

宿屋の中は入って右側に酒場というか飲み食い出来る場所があって、左にはカウンター、奥には二階に続く階段があった。


「いらっしゃいませー。お客様、お泊りですか?お食事ですか?」

「泊りで」

「うちは一泊銀貨10枚です。朝食付きだと銀貨12枚。夕食もつくと銀貨15枚です。いかがなさいますか」


やばい、相場がわからないから安いのか高いのかわからない。でも一泊日本円で一万円だろ。これは高いのか?大金持ちすぎて金銭感覚がおかしくなっているようだ。


「じゃあ夕食込みのやつで10日分」

「かしこまりました。代金は先払いになりますがよろしいですか?」

「はい」


そう言って俺はポッケト(本当は次元倉庫から)から金貨を二枚取り出し、受付の人に渡した。


「夕食はどうなさいますか?お部屋で食べますか?それとも食堂で?」

「じゃあ、食堂で食べます」

「わかりました。お食事の準備ができましたら部屋に伺いますね」


俺はお釣りの銀貨50枚と部屋の鍵を受け取り、二階へと上がっていった。

俺の部屋は階段上がってすぐの部屋だ。部屋の中はベットと机と椅子にクローゼット。ベットの下には貴重品などを入れるチェストが置いてある。


俺は呼ばれるまでベットに横になりながらいつも欠かさずやっていた、魔力操作の練習を始めた。


しばらくすると部屋の扉をノックされ、食事の用意ができたことが伝えられた。


食堂は来たとき同様、酔っ払いなどであふれかえっていた。そんな中俺は恥の席を取ってちびちびと食事を取っていた。夕食は少し硬いパンに肉入りのシチューに加え、サラダに何かわからない果物が二切れ。かなりおいしかった。シチューに入っていた肉は地球では食べたことがない感じだったので異世界特有の肉だろう。少しデルタさんたちと一緒に食べていた魔物の肉に似ていたが。


俺が周りから見るとつまらなさそうに食べていると、一人のウェイトレス?の格好をした女性が俺の席にやってきた。


「相席いいかしら?」

「…どうぞ」


なぜ席はまだ空いているのに俺の席に来たんだろうか?

女の人はかなりの美人さんだ。薄い蒼色の髪に整った顔立ち、目なんか翠色でとてもきれいだ。女性の象徴ともいえるものもかなり大きい、Eカップはありそうだ。


「なぜ席は空いているのに相席を?」


俺は気になったことを聞いてみた。女の人は少しいたずらっぽい笑みを浮かべ言葉を返してきた。


「あなたが気になったからよ。ここらじゃ見ない顔だち、体つき。おまけに鑑定したらレベルが10と高いじゃない。それでよ」


鑑定持ちだったか。よかったー、韜晦スキルのままにしといて。にしてもこの世界プライバシーの欠片もないね。


「あなたは迷い人かしら?ここらじゃ聞かない名前をしているけど。私はサキっていうの、おばあちゃんが迷い人でね」


確かに日本人っぽい名前だな。てか名前で迷い人ってバレるんじゃだめじゃん。まあ、韜晦スキルレベルとかは買えられても名前は変えられないんだよね。失敗したなー。


「ええ、そうですけど。僕に何か用ですか?」

「あなたのことが気になったと言ったでしょ?どう、もしよかったら今夜いっしょに「ごちそうさまでした。じゃこれで」」


マジかよ。初めてされましたよ、夜のお誘い。別にあの人が嫌いとかそういうのじゃないんだけど、捨てるなら自分の好きな人がいいじゃん?


俺は食事を終えて部屋に戻った。

その後は軽く筋トレをしてベットに入った。




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