どうしてこうなった?!目指せ!異世界スローライフ!
因幡 天兔
第1話 下駄箱怖い
「起立!気を付け!礼!「「「「ありがとうございました!!!」」」」
今日で一週間が終わる。学生で金曜日が嫌いな人は多分いないだろう。なんてったって明日からは休みなのだから。そして俺、
和也の周りには最近妙なことが起こっている。その一つが幼馴染である神谷 瑞貴が行方不明になったこと。それも周りの人が瑞貴のことを綺麗さっぱり忘れてしまっていることだ。瑞貴の親に連絡しても
「うちには子供なんていません!!」
と怒られる始末。
もう一つが、ここ一週間同じ夢ばかり見ることだ。夢の中では、誰だかわからない人が「私は創世の魔法使い」だとか「世界を救って」だとか意味の解らないことを言ってきたり、東京大空襲のような悲惨な状況の都市を見せられたりもした。
そんでもって、今日は朝起きてから頭の中で「助けて!助けて!」とずっと響いている。今この時も。
「おい!江藤!金貸してくれよ」
声をかけてきたのは、クラスで一番の不良と名高い
和也は小学生のころ中二病をこじらせており、その時のクラスメイトが琉斗であり、「その当時の時のことをバラされたくなかったら」と脅されていたりする。
「昨日も払ったろ、もう金がないよ」
「あぁ!じゃあ有り金全部出せよ!」
チャリンチャリン
和也は財布の中から200円を取り出し、財布を逆さにして、もう残ってないことを主張した。
「チッ、使えねーな。月曜日はもって来いよ、秘密をバラされたくなかったら、な」
「わ、分かったよ」
最近琉斗のカツアゲ率が高く成っている気がする。それも今まで金剛のカツアゲを防いでくれていた瑞貴がいなくなったからだろう。そして金剛も瑞貴のことは覚えていないだろう。
(助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 助けて。 )
━━痛い。頭がものすごく痛い。鈍器か何かでずっと叩きつけられているような、今までに感じたことのない痛みが止まらない。
そんなとき、
「江藤君大丈夫?保健室行く?」
クラス一のマドンナの吉田 唯さん。ここ一週間ほど前から和也のことを気にかけてくれている。もしかしたら琉斗のカツアゲの理由もこの子のせいかもしれない。前から琉斗が吉田さんのことが好きだとか、告白しただとか噂があったからな。
「あ、うん。大丈夫だよ。ありがと」
「そ、そう。気を付けてね、江藤君」
優しいな、吉田さんは。でもここで弱音を見せたら、男が廃る。
和也は頑張った。頭が痛い中頑張って下駄箱に向かった。
下駄箱はめちゃくちゃ混んでいた…
和也が壁に寄りかかり下駄箱が開くのを待っていると、
「ほんとに大丈夫?江藤君」
「うん。大丈夫だよ。吉田さんは部活?」
「うん、そうだよ。江藤君は部活には入ってないの?」
「母と二人暮らしだからバイトしないとね」
「ご、ごめん。辺なこときいて」
「慣れてるから大丈夫」
周りの視線が痛い。視線から「あいつ、吉田さんとしゃべりやがって」「殺してやる」などの嫉妬の目が寄せられている。これは耐え難い。
「吉田さん?僕はこれで失礼するよ。部活頑張ってね」
「う、うん!ありがと!江藤君もお大事にね!」
吉田さんはなぜか頬を赤く染めて恥ずかしそうにしながら部活に向かっていった。
吉田さんと話していたら結構な時間がたっていて、下駄箱も開いてきた。
これでやっと帰れる。吉田さんと話していたことで少し頭痛も収まってきた。
ガチャッ ピカッー
下駄箱を開けると中から光が飛び出てきた。光は和也の体を残すことなく包み込むと体を、小さい下駄箱の中へと吸い込んでいった。そして和也の体と存在は地球からある一人の心の中をのぞき消えた。
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目が覚めるとそこは見知らぬ天井だった。和也は今ベットに横たわっている。辺りには簡易な机と水差ししか置いていない。天井に電球はなく、簡易の机の上にカンテラが置いてある。服は着ておらず、枕元に綺麗に折りたたまれ置いてあった。
ここは一体どこだろうか?部屋を見回す感じだと、日本の住宅ではない気がする。もちろん和也の部屋でもない。しばらく悩んでいると
コンコンッ
「あら、お目覚めになりましたか?あなたは草原で倒れていたんですよ。それをを発見して私の小屋に運んだのですが、なぜあんな場所で倒れていたんですか?」
部屋に入ってきたのは30代ごろの少しぽっちゃり目のおばさんだった。手にはトレーを持っており、その上にはいくつかの果物が乗っていた。
「あ、はい。助けていただいたんですよね?ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらずに。でもなぜなんな場所に一人で倒れていたのですか?」
「あんな場所?すいません少し記憶があやふやで」
「そうなのかい?じゃあ、もう少し安静にしているんだよ。夕方ごろにまた来るよ」
「あ、ありがとうございます!」
「いいわよ。私はデルタっていうのあなたは?」
「デルタさん?ですか?僕は江藤 和也って言います!」
「エトー?変わった名前ね」
「あ、いや、江藤が名前ではなくて和也が名前です」
「へー、変わっているのね。じゃあ夕方また来るわねカズヤさん」
そういうと、机の上にトレーを置いて部屋を出ていった。
とりあえず頭の中を整理しよう。
まず、ここは日本ではない可能性が高い。それよりも地球でない可能性が高い。多分原因は一週間前から見ていた夢と、最後の記憶の光だろう。
それと、俺はどこかで倒れていたらしい。服を洗われて、肩口から脇の方にかけて包帯がされるくらいの怪我を負っていたに違いない。
俺の体には肩口から脇へとかけて包帯が巻き付いていた。しかし、傷口があると思われる部分を触っても痛くない。治りかけのときに感じるくすぐったさしかない。
まあ、今は深く考えるのはよそう。夕方になればまたデルタさんが来てくれるはずだ。その時に聞けばいいだろう。
そして俺は夕方までの眠りについた。
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『来てくれてありがとう。エトウ カズヤさん。私来てくれないかと思ってた。あなたには悪いけどこれからは大変になると思う。けれどあなたならきっと乗り越えられるはず。私は待っている、その先の向こうで。あなたならきっと…私を止められるもの』
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