第3話

早妃は上司が変わったとは言え、仕事内容も席も変わらない訳で、その席は私の隣なので、早妃にとっては何も良いこと無い訳だ。


早妃の負荷を減らすためにお茶当番を外すように課長の指示があった。

今まで、3人で分担していたが、これからは私と千花ちゃんで分担する事になった。

私はさっそく掃除当番表を作り直し配布した。

今まで、掃除当番に課長が何か口出すことは無かった。きみさんが居るときはきみさんが仕切って、きみさん退職後は真悠子さん、真悠子さん退職後は私が割り振りしていた。もちろんふたりの意見も聞いてた。


今回は課長の指示通り掃除当番表を作り直したのに、早妃はそれすら気に入らなかったらしく、作った私では無く、課長に訴えた。

課長に渡した覚えの無い掃除当番表を手に課長が私を呼んだ。

ここでも早妃の言い分が通った訳だ。

もうどうとでもしてくれ…。


早妃は全て自分の思惑通りにことをすすめる。

基本、午前中に入力作業を終えるハズの仕事も余裕を持って16時と私が課長に提案した。

それも、16時に間に合わなかったらどうすれば…と努力もしない内から時間の変更を提案してきて、それを通した。


やりたい放題の早妃がまた支所長に何かを訴えた。すぐに課長が呼ばれた。課長は私達にどう話すべきか悩んだんだろう。週末を挟み、月曜日に私と千花ちゃんが呼ばれた。

課長の話はこうだった。

今、早妃の部門は仕事量が薄い。現場との連携を図るために、早妃の席を事務所から現場に移すと言うものだった。

取って付けたような理由に納得が行くわけがない。暇ならわざわざ席を移動させなくても、早妃自身が出向けば済む話。

早妃の上司となった副支所長は、そんな改革を思い付かない人。

タイミング的にどう考えても早妃が何か訴えた事は明らか。


早妃の席を移動する為に現場を改装。売上も思わしくなく鉛筆1本買うのも安いとこを探して発注してたのに、2万円もかけての改装は意味不明。


女優な早妃は現場に行くと解放されたかのようにイキイキした表情で過ごし、私が追い出したと言う構図が出来上がった。

課長は何に気を使ってるのか、誰に忖度してるのか知らないけれど、早妃の机はそのままにすると言う。

事務所の一番入り口の席なのに空席って変じゃない?

事務所でも仕事するかもしれないからと…。

椅子も無いのに、そこで作業するわけ無いじゃん

引き出しには書類も残してるみたいで時折、さっと取り出し、事務所奥の打ち合わせスペースに逃げ込み、暗がりな中、作業したりする。そうなると、益々私が早妃を苛めてるみたいになる。

電気つければ?と声をかけてくる他の課長に優しい!とちょいちょい女を出してくるのがまたキモい


始めは耐えてくれなんて言うてた課長もめんどくさくなったのかもう関わりたくないのか「その話は終わりだ」と聞いてくれなくなった。

こうして、早妃の思うつぼの席移動。

皆が私を気遣ってくれると、益々調子に乗る早妃。

気分は悲劇のヒロインから女王様。

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