第21話

「よ、かった~~~~~!」

 突然、泉川君が手で顔を隠しながら座り込んだ。突然だったから、私も驚く。

「え!?そ、その……大丈夫、ですか……?」

 あわてて私もしゃがむ。気分でも、悪くなったのかな・・・って、気になったから。

 ―――けれど、そうじゃなかったみたい。

「だ、大丈夫。緊張し過ぎて……終わったと思ったら、気が緩んじまって……っ。」

 そう言って、泉川君は顔を上げた。隠してた表情を、さらした。

 ・・・なんていうか、照れてるんだけどすごくキュンとくる笑顔だった。頬のあたりはまだ赤くて、けどそれを打ち消すくらいの笑顔だった。



 だから―――また、『ダイスキ』って言いたくなった。胸のあたりがぎゅぅぅってなって。それから今、私の瞳がきらきらしてる気がする。それに、たぶん目の錯覚だと思うけど―――泉川君の回りが、キラキラ輝いて見えたんだ。



「……きれい。」

 なぜかはわからないけれど、気付かずにポロ・・・と呟いてたみたい。

「?紅さん、何か言いました?」

 泉川君が首を傾げて聞いてきた。

「!!何でも、ない……です。」

 うぅ・・・また、顔が赤くなってきた。同時に、緊張してくる。体も、少し震えてるかも。

「なら、いいけど……ていうか、敬語の方がいいですか?それとも、普通にしゃべっていい?」

「あ、はい。普通で、いいです。」

「了解。ええと…じゃあ紅さんも普通にしゃべっていいよ。雪乃の時みたいにさ。」

「あ、あの……善処、します。」

「……もしかして、俺が苦手だったりする?もしそうなら―――。」

「い、いいいいえ大丈夫です!!」

 首をブンブン振って否定する。

 すると、ブッと泉川君が吹き出した。

「そこまで否定しなくても。別に怒ってる訳じゃないんだし。」

 カァーーーと顔が余計に赤くなる。それを誰かに見られたくなくて、私は俯いた。

「す、すみません。」

「いいよ。なんかあるんだろうなって、なんとなく思うから。」

「少しずつ、頑張りますね。」

 ぎゅっと拳を握る。

「……あとさ、一応もうカレカノになったんだしさ。その…名前で、読んでもいいかな?」

「!!」

 な、名前呼び!?

 でも・・・そっか。一応カレカノなんだよね、私たち。

「……いい、かな?」

 ううう・・・泉川君の後ろに犬が見える・・・!うるっうるの目を向けた・・・ポメラニアン(?)が!

 これは、断りずらい情況に。

 けど、これも作戦だよね。

「いい、です。えと……翔、君。」

 私は頷く。名前呼びくらい、大丈夫・・・な、はず。話はできてるくらいだし。

 ついでに、私も彼を名前で読んでみる。普通なら、呼び捨てとかするんだろうけど―――。うん、恥ずかしくて死んじゃうかもだよね。

「……っ。」

 けど、私が返事と名前を読んでから―――翔君、が何も言わない。

 不思議に思った私が顔をあげると―――・・・。



 また、翔君が赤くなってた。頬だけじゃなくて、額とかも全部。

 さっきの照れた笑顔よりもっと―――赤くなってた。



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