第16話

「いつもうちの幼馴染みがお世話になってます。」

 そう言って、泉川君は頭を下げた。それに対して、私はあわてて言葉を紡ぐ。

「い、いえっ私こそお世話になってます!」

「そうなんですか?いつもこいつが迷惑かけてないか心配で―――。」

「ちょっと~あまり迷惑なんてかけてないわよ?私はそれ以上に恩返ししてるんだから!」

 雪ちゃんの言葉に、泉川君はニヤリと笑った。

「そうなのか。へぇ~……てっきり部活の時と同じかと思ってたぜ。」

「あんたさぁ、私に喧嘩売ってない?売ってるわよね。ねぇ?」

「売ってない。すまん、言い方きつくて。」

 素直に謝る泉川君。

「ふふっ、ほんとに仲がいいよね~二人とも。」

 私は微笑んだ。

「伊達に何十年も幼馴染みやってないわよ。」

「こういう奴の幼馴染みとかやれんの、俺だけですよまったく。」

「ちょっと!こういう奴ってどういうことよ!!」

 あ、雪ちゃんがまたキレた。ぷちギレかな?

「言ったまんまだし?」

「なによ!?中学生の頃まで泣き虫だった癖に~~~!!」

「ちょっ、それを言うならお前だって!だいたいなぁ―――」

「そういうあんたも―――」

 あらら、二人とも喧嘩腰になっちゃった。私は笑ってジュースを飲む。・・・うん、おいしい。

 見た感じ、泉川君はすごくカッコいいと思う。ダークブラウンの坊主頭、髪の色と同じ瞳。それから笑った時の無邪気な表情。けど、私と目があった時の真っ赤になった表情。それを隠す時の仕草。

 なんていうか、カッコいいというか・・・どっちかっていうと、かわいい方に入るかな?

(わんこ系ツンデレ男子……って感じだ)

 なんとなく母性心をくすぐられるような感覚がする。けど、それは私にとって変な感じではなかった。

 確かに、これならモテてしまうのも当たり前だと思う。かまってあげたくなるというか・・・なんていうか。

 まず女の子にとっては好きになる対象になるかな。が苦手な私でも話しやすいし。最初は震えていた私の体も、今はなさそうだし。

(これなら……男の子に対しての苦手意識も減っていくかも……)



 その時、一瞬だけ・・・『アァ、スキダナ』って泉川君に言いたくなった。

 一瞬だけだったから、この気持ちがなんなのか・・・今の私にはわからなかったんだ。



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