第14話

「ええと、紹介するね。私の幼馴染みで、名前は泉川いずみかわ しょう。さっきも言ったように野球部の主将をやってるの。ほら、あんたも何か言いなさいよ。」

 雪ちゃんが隣の幼馴染みさん―――泉川君の腕に肘をぶつけた。泉川君はしぶしぶといった表情で、口を開く。

「……その、よ、よろしく。」

「……なにあんた、ひょっとして照れてんの?」

 雪ちゃんがニヤニヤし始めた。

「ち、違うって!初対面だし、恥ずかしいだけだっつの!」

 顔を赤くした泉川君が雪ちゃんに言い返す。

「へぇ~……意外ね?あんたが素直に『恥ずかしい』なんていうの。」

 雪ちゃんのニヤニヤ笑いは止まらない。

「意外じゃねぇし、当たり前だし。いつもは社交辞令だしっ。」

「それであんな爽やかとか……あんた、二重人格なんじゃないの?」

 雪ちゃんのため息に、泉川君のつっこみが入った。

「んな訳あるかっ。それともなに、二重人格の方が面白そうだとか思ってんの。」

「まぁ少しね?」

「やっぱり。お前なぁ、いい加減俺で遊ぶのやめろよな。」

 今度は泉川君がため息をつく。それに対して雪ちゃんは、

「はいはい、気をつけるわよ。」

 と、半ば投げやりに頷いた。

 そのやり取りが面白くて、私はクスクスと笑ってしまった。さすが幼馴染み同士、息のあったテンポの会話だ。

「あれ、桃香。笑ってる?今の、そんなに面白かった?」

 私の笑い声に気づいたのか、雪ちゃんがこっちを見ながら聞いてきた。

「うん。すごく仲がいいなぁって思って。」

「そう?ただの口喧嘩のようにしか感じないんだけどな…。」

 首を傾げる雪ちゃんを見て、また私は笑うのだった。

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