第8話

 私には、苦手なものがいくつかある。

 そのうちのひとつ。それは―――



 ―――同年代の、男の子。



 話とかするぶんには大丈夫。

 けど・・・どうしても、体が震えてくる。嫌な思い出を思い出すから。

 触られるとかもってのほかだ。確実に、失神する自信がある。

 理由?もちろんある。けれど、まだ言えない。思い出したくないから。


 ・・・ううん、もう思いだし始めてるよね。


 ――青アザや擦り傷だらけの体。――

 ――少しでも動けば歯を喰い縛らなければならないほどの強烈な痛み。――

 ――ホコリや小さなゴミなどで黒く汚れた制服。――

 ――すっぱりと強引に切られて半分の長さになった髪の毛。――

 ――はらりはらりと、上から落ちてくる切られた方の残骸。――






 そして―――。

 聞こえてくる、男の子の声。

『ブスのくせに、調子にのんなや』

『地味子がもっと地味になってやんの』

『お前がいなくても、誰も気付かねぇよ』





『うぜぇし、早く消えろ』


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