Blue Sky

暁烏雫月

Opening 「In the red world」

 一人、赤黒い血溜まりにうずくまる少年がいる。彼の服は血だらけだった。若いのに真っ白な髪には、赤い血がべっとりとこびりついている。出血の跡があるというのに、その体には傷一つない。


 血のように赤い瞳は虚ろだった。その目からは涙を流していた。虚ろな目で天井を見上げ、頭上へと手を伸ばす。


「赤いよ……痛いよ……怖いよ……」


 強い血の匂いが少年の鼻を刺激する。血に染まったその手は自らの首根っこを掴んだ。刹那、けたたましい警報の音が鳴り響く。ジリリリと鳴る耳障りな音に少年が声を上げた。


「空が、赤い……青い空はどこ?」


 首にあてがわれた両手。その指先が皮膚を強く押していく。虚ろな眼差しはありもしない青空を求めて、天井をさ迷う。


「助けて。助けて助けて助けて、タスケテ……」


 少年の首を掴む力が強くなっていく。その時、バタンと扉を開け閉めする音がした。それと同時に足音もいくつか。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 少年の口からこの世のモノとは思えないような奇声が発せられた。それと同時に、扉から入ってきた人影が少年に薬液を注射する。さらに、暴れないように手錠や足枷を使って可能な限り拘束していく。


 打たれた薬が効いたのか、少年の体は動かなくなり、穏やかな寝息を立てている。濃い血の匂いを残し、部屋は静寂に包まれた――。

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