哀れな人間ども

ちろる

第1話 もう一人の自分

 なんて人は、醜い生き物であろうか。


 思い通りにいかないと、愚痴を言い他人に当たる。

 電車のドアが開くと、小学生の運動会のように我こそがと一番に座ろうといい歳こいたおじさんやおばさんが競争をするではないか。

 そんな人間は皆、自分がよければいいのだ。

 自分さえ上手く行っていれば、他人などただの登場人物に過ぎない。

 そんなことを考えている僕は高校2年生で、好きな教科は、物理だ。

 今、月曜日1限目の授業が始まった。苦手な世界史だ。さっきまで、ざわついていた生徒たちのざわめきがチャイムの発信源に吸い取られたように静まり返る。

 ぼくは、思わず苦笑した。

 ガラガラガラとドアの開く音がした瞬間、生徒の視線がそのドアとドアの隙間にいく。すると、隙間から1人の巨人が現れたのか朝の光が遮られた。

「おはよう」

となんと険しい表情なのでしょう。教科書を片手に堂々と教壇に上がり、偉そうに「はい、号令。」

「起立。れい。お願いします。着席」

お願いもしたくないが、そんな冗談は言ってられないので、そのまま従い着席する。教科書を忘れたやつ起立。始まった。お説教タイムだ。

 私は、教科書を持っていたが起立した。

先生が名簿にチェックを入れて全員の言い訳を聞いている。

とうとう、私の番が来た。

「お前なんで忘れた?」

私は何故立ち上がったのだろうか

今でもその理由がわからない

しかし、何か立ち上がらなければいけない理由があったのではないかと必死に考えた。一つため息をついた。

しかし、答えが見つからない。

ただ、自分の体が誰かによって支配されているのではないかと。

この感覚は、今までにない。

自分が自分ではないような、そんな違和感を感じる瞬間であった。

私は、自分が怖くなり

先生に体調が悪いので早退しますと、高校生いや小学生でもわかるような簡単な嘘をつき、保健室へ向かう。

廊下は、寒くほんのり青い。

さっきまでの美しい太陽の光線は、どこへ行ったのであろうか。

学校には、あらゆる場所に様々なポスターが貼ってある。

わたしは、一つのポスターに目が止まった。

それは、悩み相談のポスターであった。私がスマホに手を触れようとする。と、手が震えだした。思わずスマホを落としてしまった。私は、気にせず近くの窓へと駆けて行った。まどのロックを外し、全開にした。なんと気持ちいいのであろうか、冷たい風が私の肌を覆い凍りつく。

 凍りついた私は、飛び降りたいという究極の衝動に駆られた。

まどの外に両足を出した。なんだか、冷たい。

私が最後に放った言葉は、なんだったのか。

私は、今飛んでいる。鳥になれたのだ。

地面が近くなって来た。

「ドサッ」

ついに死んだであろうか。

こんな、つまらない世の中を終わらせたのだ。なんだ、簡単じゃないか。





私は、今暗闇にいる。

住むところは無いが、なんだか居心地がいい。周りを気にせず、自分だけの世界が広まっているように感じたから。



ああ、あの真っ赤な太陽から放出される眩しい光はどこへ行ったの?

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哀れな人間ども ちろる @CHIRORU_N

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