うちの姉が戦闘狂過ぎる件について。


 ピンチなのに笑ってる。って、末の弟に言われたんです。一緒にゲームしてる時に。よく一緒にゲームするんですね。


 「え?」って返したんです。何の話をしてるのか、全くピンと来なくて。ゲームをしている時の私は、ピンチになると笑ってるって言われたんです。私が主にするゲームジャンルは、『DARKダーク SOULSソウル』や『Bloodborneブラッドボーン』、『仁王』と言った、アクション系の死にゲーでして……。


 死にゲーっていうのは、トライアンドエラーが異常って程に繰り返される、非常に難易度が高いゲームの事を指すんですけれど(「プレイヤーが兎に角死にまくるゲーム」だから、「死にゲー」と呼ばれてるんですね)、それのアクションものって、本当に敷居が高いんです。素人にやらせたら、難し過ぎて投げるだろうなってぐらい。投げてる人身近にいましたし。慣れようと、元々高難易度に作られているゲームのシステム上バンバン死にますから、兎に角プレイ中は緊張感が高く、ストレスを受けやすい、というか、必ずある程度のストレスを受けるジャンルなんですね。その辺の雑魚に、ちょっと殴られただけで死んだ。ボスには、一発殴られただけでもう虫の息。なんて具合に。その中をいかに生き延び、馬鹿強い敵達を倒して勝ち進んでいくのかが、楽しいジャンルでもあるんですけれど。


 とまあそういう、かなり繊細なプレイと高い集中力を要されるゲームなんですが、私は人と話しながらプレイする方が、操作に無駄がづらいんですね。何のジャンルをプレイしていてもそうなんですが。


 それで、そのアクションものの死にゲー、戦国時代で武士となり、妖怪を退治するという、『仁王』をプレイしていた時の事なんですけれど、私のプレイを見ていた弟が引き気味に言ったんです。「姉ちゃんピンチなのに笑ってる」って。


 言われて初めて意識しましたが、確かにそうなんですよ思い返すと。でも別に、不気味にニタって笑う訳では無くて、無邪気に声出して笑ってるんです。「あっははは! 死ぬ!」みたいな感じに。「あっはーこれは死にそうですねえ!」とか。そして弟が言うには更に、もうあと一撃を浴びてしまえば、死んでしまう体力しか残っていないのに、回復しない所か退きもしないで、敵を倒そうとそこから更に前進するそうなんです。他人事ヒトゴトみたいに書いてますけれど、確かにそうなんですね私。あと一撃浴びたら死ぬのに、突っ込んでるなと。力任せに押し込んで敵を倒してから、「ふう」って回復してるんです。これかなり非効率ですし、何なら超危険なプレイなんです。死んだら全部やり直しになっちゃうのに、そのまま突っ込むなんて。まして死にゲーなんてジャンルで。


 何でそんな危ない事すんの? と、何度も弟からも指摘された事があるんですけれど、何でってそりゃあ、回復するより倒す方が早いじゃないですか。回復すれば命の危険からはある程度離れられますけれど、でも敵がいる限り戦いが発生しますから、その度にやっぱり命の危機に直面します。となると、先に視界に入ってる敵を全滅させる方が安全と言いますか、手っ取り早くないですかね? だから死にそうにはなっても、ギリギリまで前進し続けて倒すんです。無理を通せるという、自分のプレイにある程度の自信を持っているという部分もありますけれど。


 と、説明しようと思ったんですけれど、呆れられるのが目に見えていたので言いませんでした。「これだからうちの姉は……」とか言って、嘆息するんですよ彼。彼は私と違って冷静なプレイヤーなので、ピンチになると人並みに焦って、一旦退いてから回復します。確かに彼はピンチになると、笑いはしないプレイヤーでした。笑ってるのは私だけですし、そこから更に前進するなんて、やっぱり私だけです。「死にそう!」って無邪気に笑いながら、敵をバッサリ切り捨てるんですね。確かにハタから見たらこれは、命の遣り取りに喜びを見出している、戦闘狂にしか見えない……。というか、普通にヤベー奴。今まで意識した事はありませんでしたが、何故私は、ピンチになると笑うのか。


 何か、逆境になると、笑えてきません? こんなにプレイして慣れてる筈なのに、その努力があっさりと崩されそうになると、「何て儚いんだ。私の腕もまだまだだな」と、自分の未熟さ、つまり、成長の余地を感じて笑えてきますし、「ここをもし乗り越えたら、最高にスカッとするだろうな」とも同時にイメージしていて、わくわくするんですよね。限り無く死に近付いてるのは、十分分かってるんですけれど。やられたらやっぱり、悔しいですし。何てんでしょ。「あと一撃で全てが終わってしまう中で、どこまで行けるか」という挑戦をするのがめちゃくちゃ楽しく感じてしまい、ギリギリまで突っ込んでしまうんです。それが原因で死ぬ事は何度もありますが、別に落ち込んだりしませんし。


 うーんこれでは、やっぱり戦闘狂……。弟には言わないでおきます。どうせ呆れられますので。でもある程度ゲームする方になら、伝わりませんかねこの感じ!? 


 という事がありました。



 では今回は、この辺で。



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