第2話
『玉子焼きをつくれ』
千冬ちゃんがドタバタとキッチンまで駆けていく音がここまで聞こえてくる。
俺の記憶が確かなら、千冬ちゃんは料理が大の苦手だったかと。
千冬ちゃんの部屋は見えてもキッチンまでは見えないので俺は目を閉じた。
気配に神経を尖らせる。
色を除いた千冬ちゃんの家の様子がありありと伝わってきます。
卵を取り出しました。1個。流石に少なくありませんか?
ちょちょいと念動力で冷蔵庫の中を操って卵を割ります。
お椀に入れられた卵にそれをこっそりと横から入れて、念動力の行使を止める。
千冬ちゃんは卵の体積が増えたことに気づかなかったようで、そのまま料理を続けます。
醤油、砂糖、味をつける。
ちょっと待ちなさい、それ塩です。
ああ、そんなにたっぷり。
仕方ない、錬金術を。
かき混ぜる、力が強すぎです。飛び散っています。
・・・・・・。
焦げた『何か』は一応玉子焼きと見なされたようで、世界はギリギリで救われた。
今度、千冬ちゃんに料理を教えよう。
世界は今日も平和である。
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