4話 今後の予定
「コクセキに行くなら、俺も同行させてもらっていいか?」
「ん、いいよ」
早いなオイ。
いや、別に反対する理由なんてないんだけども。
「タケフツさんも、もうコクセキに戻るの?」
「ああ、戻るのも時間がかかるしそろそろな」
確か2、3週間歩いてそこから列車でコクセキに向かうんだよな。
考えてみたら結構な長旅だ。
旅が終わる頃にはかなり無駄な肉が落ちてる気がする。
「タケフツさんが同行するならこっちも楽だし、目的地も同じなら断る理由もないよ」
「ありがとう。俺も君と一緒だと道中心強い」
というわけでタケフツさんが旅に同行してくれる事になった。
少なからず
「さ、話も済んだし
「了解!」
その後俺は、1人でもできる基礎鍛錬の仕方をみっちり教わった。
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「あらあら、精が出ますねぇ」
「あら、カンナさん」
「……ど、どうも」
俺が疲労で大の字に横たわっていると、縁側にカンナさんが現れた。
しかし、基礎練とはいえ全身を使う事を心掛けるだけでこんなに疲れるもんなのか……。
いかに今まで、なんとなくで体を動かしていたのかがわかる。
「お茶と羊羹を用意しましたよ。そろそろ休憩になさったらいかがですか?」
「あ、もう1時間くらいやってたのか」
大亮が時計を確認する。
自分では1時間も経ってる感覚はなかったんだが、充実していると時間が経つのも早い。
「一真休憩だよー」
「お、おう……」
俺は悲鳴を上げる体をゆっくりと動かし、縁側に座った。
俺らの稽古をずっと見ていたタケフツさんも奥の部屋に上がってお茶を飲んでいる。
この人ほどの達人が、俺みたいな素人の鍛錬なんか見て楽しいんだろうか。
「はぁー美味しい」
大亮は羊羹を頬張り、目を細めて幸せそうだ。
この数日でよくわかったが、大亮は見かけによらずよく食べる。
多分野球部現役時代の俺と同じくらいは普通に食べてるんじゃないかと思う。
特に甘いものには目がないようだ。
「しかし一真はあれだね、筋いいと思うよ」
「ああ、俺もそう思う 。
「大亮の強さも凄さも目の当たりにしてるし、教え方が上手いから反発する理由がないですよ」
大亮やタケフツさんと会話を交わしつつ、お茶で喉を潤す。
疲弊した体に濃い目の緑茶と羊羹の甘味が染み渡る。
しかし、そうか。いよいよ、明後日には出発するんだよな。
少しだけ緊張する。そしてワクワクもしている。
命懸けの旅で、浮かれるようなもんじゃないのはわかってるが、それでも男子として一種のロマンみたいなものを感じるのは仕方ないだろう。
「あ、そうだ一真。まだ首にあの紐つけてる?」
「ん? ああこれか?」
それは大亮が座敷牢で俺にこっそりとつけた、魔術を無効化する不思議な首紐の事だ。
俺があの蜘蛛女の前に勇気を出して立ちはだかる事が出来たのも、これの存在が大きい。
「それ、3回使ったみたいだから、もう効力ないよ」
「え?」
……回数制限あったのか。
もし知らずに制限越えで蜘蛛女の前に立ってたらと思うとゾッとした。
それにしても3回? レンの魔術を防いだのと、蜘蛛女の魔術を防いだのと……他に使ったっけ?
「
「……そうだったのか」
つくづくあの時上手くいったのは、運が良かっただけなんだなと実感する。
まあ今後は自分の力で戦うって決めたんだ。
これがあったら心のどこかに甘えができただろうし、ちょうどいいと言えばちょうどいい。
俺は首紐を外して大亮に返した。
「あと、明後日は朝8時には出発して、夕方くらいには湿原の前にある村で宿取る予定だからね。明日は軽く基礎練だけやって明後日に備えるよーに」
「おう了解」
「ちなみに湿原は結構歩くししんどいよー。覚悟しといてね」
「その湿原ってどんなトコなんだ?」
「ナンビラ湿原は丘陵地から至る所に湧き水が染み出してて、色んな動植物を見ることができる観光名所でもあるね。夜には魔獣も出るから、何日もかけてまで突っ切ろうって人はそんなにいないけど」
観光名所と聞くと少し心が弾むが、やはり魔獣も出るのか。
浮かれっぱなしだと命に関わるな。気をつけよう。
「そういえば最近ナンビラ湿原の端に、大型の魔獣が住み着いたとか聞いたが……」
「あ、そうなの?」
「確かB+級で冒険者
「へー、でも一真もいるしB+程度ならわざわざルートから逸れてまで討伐するまでもないかな」
「……B+程度、とさらっと言えるあたり流石としか言いようがないな」
なんだか危なっかしい話が飛び交ってるな。
そういえば最近知ったが、この和風な異世界
150年以上も他国と関わりを絶っている為、元の世界に比べたら比較的少ないが。
「ちなみにどんな魔獣?」
「確か……巨大な蛙の魔獣だったはず――」
「絶ッッッッッッッ対行かない」
……大亮、意外と蛙ダメなんだね。
友人の意外な一面が垣間見えた。
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