寒空に甘いコーヒー

カゲトモ

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 またもやミケに推された新作コーヒーを買ってしまった。別にミケが美味しいって言ったから買ったんじゃない。俺も抹茶が気になっていたからだ。ちなみに頼んだのはホット。ミケはこんなにくそ寒いのに冷たいのを飲むんだとか。ありえない。

 びゅん、と開いた自動から一気に冷風を浴びせられる。ほら、こんなに寒いのに冷たいのなんか飲んだら腹を下すぞー。

「あれ、どうしたの。こんなところで」

 つい、そう声を掛けてしまったのは本当に偶然で。駅前のコーヒーショップの前をうろうろしていた少年が、たまたま顔見知りだったからだ。

「あ、スカイさん」

「おはよう、って言ってももう昼だけど」

「はよっす。今日も寒いっすね」

「あぁ、なんか午後から雪が降るってね」

「そうらしいですね」

 うん、で、何してんの?

「あー、いや、何ってこともないんですけど」

 と言いつつも、その理由をサラッと言わない訳で。

「こんなに寒いのに外で立ってたら風邪引くよ。新学期始まったばっかりなのに」

「あ、まぁ、いやぁ、そうなんですけど」

 マフラーを巻いていない首元は、いくらダウンのジッパーを上まであげていたとしても寒そうだ。手袋もしていないし。

「大丈夫?」

「いや、まぁ元気だけが取り柄なんで」

「そっか」

 まぁ、いいか。

「じゃぁこれあげるよ」

「え、いや、そんな」

「大丈夫大丈夫、まだ口付けてないから」

「そう言うことじゃなくって」

「まぁまぁ、貰っといてよ」

 と、コーヒーを差し出す俺。メニューの内容を見るにきっと甘いだろうから高校生でも飲めるはず。いや、今どきの高校生はブラックでも飲めるのか?

「寒いし、ね」

「それじゃぁ、頂きます」

 おずおずと差し出した右手にぎゅっと握らせる。おじさんの店はすぐそこだから、気にしないでくれ。

「咲和ちゃん待ってるの?」

「えっ!?」

 あっぶねー。カフェカップを落とすところだった。握らせといて正解。

「待ってなんかいないっす!」

「ふふ、風邪なんか引いたら咲和ちゃん悲しんじゃうんじゃない?」

「ちがっ」

「早く帰ってくるといいね。じゃ」

 握らせたホットコーヒーを一口も飲まずに春喜君の耳は赤くなった。意地悪し過ぎたか? なんて。コーヒー代だと思って許してよ。

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