NOAH

八ツ尾

第一任務《ファーストオーダー》

第1話【字】

2045年、世界は大きな戦争を起こすこともなく、現在も続いていた。変わった事はあまりない。高校までが義務教育化され、在学したまま妊娠・出産が可能になり、少子化が劇的に改善したこと。それによって生産消費が加速し、日本は更なる発展を遂げたこと。そして―


人類に、男女とはまた別の分類が生まれたこと。


「―では、近年問題視されているあざ持ち…あざによって手に入れた能力で起こされている事件について、同じ字持ちとして森山さん、どう思いますか?」


嫌にゆっくりとした口調と、侮辱を隠さない目が、俯きがちに授業を聞いていた彼女へ向けられた。教師が呼んだのが自分の名であることに気付き、また、教師と同じ目をした生徒達から視線が集まったことに思わず下唇を噛んだ。


(この人―わざと…)


指された少女の名は森山雅。菖蒲色の髪―この髪色は地毛だが、それも彼女を孤立させる原因の一つである―を揺らし立ち上がると、噛み締めていた唇を離し深く息を吸って話し始めた。


「…私は字持ちですが、犯罪を起こそうなんて思ったことはありませんし、今後も字を危険なことに使いたいとは思いません。それに、字持ちだけが罪を犯すわけじゃなく、字を持たない一般市民にだって犯罪者はいます。…以上です」


雅が音を立てないよう静かに着席すると、教師はまるで問い詰められているかのように視線を泳がせた。弱い者いじめのつもりがしっかりと反撃されて、返答に困っているのだろう。他の生徒達はその様子を心なしか楽しそうに眺めていた。

教師が着地点の無い接続詞を繰り返していると、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

その音に教師は安心を隠せず、さっきとは対照的に早口で授業を切り上げた。


「そ、そうね。あら、時間だわ。各自板書を終えたら休み時間に入って」


号令もそこそこに、生徒達は各々の目的へ意識を向け始めた。先程のカタルシスを帯びた空気は何処かへ消えたようだ。―ただ一人、雅を除いて。

未だその空気を胸の内に留まらせていた雅は、頬杖をついて溜息をこぼした。


(どうせ、私もいつか犯罪を起こすと思ってるんでしょ…)


広く深い疎外感に苛まれようと目を瞑った瞬間、間延びした声が目の前で弾けた。


「みーやーびーちゃんっ」

「うわっ…あ、灯ちゃん。どうしたの?C組、次移動でしょ?」


驚いて再び目を開くと、今時の子、という表現が当てはまる見た目の生徒が身を乗り出して雅を見ていた。あかりという名の少女は雅の唯一の友人で、【あざ持ち】として差別されている雅に偶の笑顔と充足感を与えてくれる存在だ。


「忘れない内に言っとこうかと思ってさ。今日、お昼一緒に食べよー!」


正確には今日も、なのだが。雅はそう思ったが、毎日自分に会いに来てくれる為の口実かも知れないと思うと、そんな揚げ足取りはするべきではないと考えを改めた。

加えて雅には灯の提案を断る必要性は全く無かった。何せ雅の置かれている状況を考えれば、昼食どころか学校生活を共にする友人は他には居ないのだから。


「うん…別に構わないけど…」

「ほんと?良かった!ちょっと大事な話もしたいんだ。んじゃ、また後でね!」


次の授業で使われるであろう教材を胸に抱えて、灯は手を振りながら教室から出ていった。


「大事な…話…?」


大事な話とは何なのか予想する間もなく、生徒達の灯に対する非難の声が聞こえ、雅はまた唇を噛んだ。



*



「あのさ、雅ちゃん。アタシ最近なんか不思議な体験してさ」


灯はコンビニで購入した菓子パンと炭酸飲料を、雅は小さめの弁当箱を広げながら、大事な話について話し始めた。


「不思議な体験?」

「昨日の夜、あープリン食べたいなー、コンビニ行こっかなーって思って、気付いたらコンビニにいたの」


随分あっけらかんとして話したせいか、雅は灯の意図が掴めず、首を傾げた。それに気付いた灯もパンにかぶりつきながら雅を見た。


「…無我夢中でコンビニに行ったって事?」

「違うちがう!本当に一瞬でコンビニの前にいたんだって!」


雅は灯が笑い話をしたい訳ではないらしいと気付き、はっとした。


(もしかして…字が発現しようとしてる…?)


あざ】とは―一種の法則性を持ったのある人間にしか現れないもので、それを持つ人間は特殊な力を使うことができる。思春期に発現する者と生まれついたときから持っている者が多い。ものによっては究極にして万能の力となるが、その多くは危険性を孕んでいるため、【字】を持つ者をそのまま【字持あざもち】と呼称し国から差別的に扱われている。


「灯ちゃん、他には同じようなことはない?」

「えっと…あとは、携帯に手が届きそうで届かない!って時に、ふと手ェ見たら携帯握ってた」

「やっぱり…」


気のせいではないことが分かり、雅は少しだけ灯を哀れんだ。額がジリジリと痛む。


「やっぱりって?」


そっと左手を額に添え、雅は諭すように話した。


「あのね、落ち着いて聞いてね、灯ちゃん。灯ちゃんはこの数日の間に字が発現すると思う」

「え…」


驚きとも悲嘆ともつかない灯の表情に、額はさらに疼いた。薄らと汗を滲ませた額には大きく【音】と刻まれている。雅は生まれつき側の人間だった。

痣のある規則性―日本人が日常的に使用しているのような形をしていて、字持ちはそれぞれ痣の示す字に由来した力を得る。その関係性は雅には分からなかったが実際雅は【音】にまつわる力を使うことが出来る。


「何の字かは分からないけど、多分空間移動に関係する力だと思う。それと―字持ちになったら、今までと同じようには暮らせないと思って」

「でも、この学校特科高校でしょ?雅ちゃん達字持ちも一般生徒と一緒に通ってるじゃん」

「それは、私を含めて6人だけの話。表向きは同じ扱いでも、色々な所で差別されると思う」


哀れむつもりで灯を見遣ると、やりきれなさを映した瞳を伏せていた。


「そっか…」

「あと…犯罪に巻き込まれたりしたら、私達は何があっても一般人を守る為に立ち向かわないといけない。たとえ、戦闘向きの字じゃなくてもね」


聞いた話を受け売りだが、今の国はそうなっているらしい。雅達字持ちは、一般市民の剣となり盾とならなくてはならない。それが、字持ちが、なのだそうだ。

雅の言葉で頭に血が昇った灯はガタリと音を立てて立ち上がった。唇が、震えていた。


「なんで字持ちだけ…」

「しょうがないよ。法律ルールには従わなきゃ」


雅はどう返していいか分からず、曖昧に笑った。立ち尽くしたままの灯は、それきり黙って俯いてしまった。

その後は、気まずい空気の中昼休みが終わり、また、放課後家に帰るまで灯とは会話をしなかった。



*



《今日未明、みずは銀行から現金およそ1000万円を―》


灯と気まずい空気になった翌日、朝から騒がしく報道されている銀行強盗のニュースを見ていると、兄がニュースを遮るようにテレビの前を通った。親指で玄関を指す。


「雅、友達が迎えに来ているよ」

「友達?灯ちゃんかな…」


それくらいしか心当たりはないが、と思いつつ昨日の事を気にしながら玄関へ向かった。


《―犯人は未だ逃走中で、情報提供を広く呼びかけています。続いてのニュースです―》


「おはよう雅ちゃん!良かったー、家合ってたー!」


そもそも家を教えただろうか?などと考えていたはずが、灯に眩しい程の笑顔で言われ、雅は挨拶を返すくらいしか出来なかった。


「お、おはよう…」

「部屋着可愛い。一緒に学校行こうと思ってさ。待ってるね。あ、でも急がなくていいよ」


早口にそう言われ雅はまたも口を挟むことが出来なかった。後ろから兄がからかい声で茶化す。


「…彼氏?」

「お兄ちゃん!」


振り返りながら雅が声を荒らげると(とはいっても兄妹間のじゃれ合いと大差無いが)、兄は慣れた口調で雅を奥へ促す。


「はいはい、さっさと準備する」


手早く準備を整え、兄に見送られながら、二人は雅の家を後にした。


「行ってきます」

「行ってきまーす!」


他愛ない会話をしながら学校へ向かう。誰かと歩く通学路は雅にとって新鮮だった。絶えず笑顔で話している辺り、どうやら灯は昨日のことは特に気にしていないらしい。


「雅ちゃん、あの人お兄さん?」

「あー、うん」

「あんまり似てないね」


悪気は無いのだろう。雅は口元だけで微笑んだ。


「そうだね」

「あっ、昨日のドラマ観た?」


次から次へと話題が変わる女子特有のテンポにやや乗り遅れつつも、雅は学校では見せない笑顔を何度も零した。



*



その日もまた授業中に、淀んだ嗜虐心から教師―昨日とはまた別の―に指された。

例えば靴を隠すだとか、といったような直接的な真似をしないのは、雅が字を使って復讐することを恐れているからだろう。それなのにこの学校にいる人間達は集団でなら平気で人を貶すのだ。

無論、雅は一度も字で反撃したことはない。

放課後になり、長い間深海で息を止めていたように、雅は深いため息をついた。放課後を待ちわびる毎日だ。もう人もまばらで、教室には雅と数人の生徒しか残っていない。

緩慢な動作で鞄の用意をしていると、前のドアから灯がひょっこりと現れた。


「雅ちゃん、キッシュ食べに行かない?」

「…キッシュ?いいよ」


何故、放課後にそのチョイスなのか。一瞬そう考えたものの、雅は頷いた。灯の方は大喜びである。字が発現しそうだと告げてから、不安がっていないか雅は心配していたが、どうやら大丈夫らしい。


「やったー!行こういこう!」



*



駅前のカフェで、灯のお目当てのキッシュを注文した。キッシュが運ばれてくると、写真を何枚か撮った後元気よく手を合わせ、頬張った。その笑顔は何とも無邪気で、雅は密かに可愛らしく思った。


「おいしー♡雅ちゃんも食べる?」

「あ…私は晩御飯入らなくなっちゃうから」

「結構少食なんだねー」


というよりは、灯が平均よりもよく食べるのだろう。昼食も毎日、雅にとっては余分な程に食べている。毎食ぺろりと平らげても尚菓子を食べている日もあるため、やはり灯は大食らいな方である。

灯の食べっぷりをに雅が注文したホットミルクを飲んでいると、静かな店内にはおよそ似つかわしくない声が響いた。


「おい!お前ら全員動くな!」

「え…何?」


二人が声の方へ向くと、少し擦り切れたような装いの男が1人の客に手を向けていた。


「騒ぐな!騒いだら…」

「うわあッ!ぐ、うぅっ…」


手を触れていないにも関わらず、客である男性は吹き飛ばされ、空席に背中を打ち付けてしまった。周りの客が助け起こそうと駆け寄る。

こんなことは普通の人間には出来ない。ならそれが可能なのは―雅は思ったままに呟いた。


「…字持ち…」

「み、雅ちゃん…」


灯が不安げな声で雅を見る。瞳が微かに揺れていた。雅は怖がっているのだと思った。だが、この時灯は昨日雅に言われた言葉を思い出していた。

“―あと…犯罪に巻き込まれたりしたら、私達は何があっても一般人を守る為に立ち向かわないといけない。たとえ、戦闘向きの字じゃなくてもね―”

男は自分が優位に立っていることに気を良くしたのか更に声を荒らげた。


「いいか!警察に連絡しても無駄だ!アイツらは字持ちには手が出せねぇからな!」


その言葉と、見せしめに吹き飛ばされた男性の様子に店内は更に恐怖に染まった。灯を心配し視線を送ると、怯えてはいるが他の客よりは平気そうに見えた。


(雅ちゃん…ち、ちょっとヤバくないかな…)

(警察が対応できないのはお兄ちゃんが前に言ってた…なら…)


拳を握り締める。額がカッと熱くなるような感覚がした。目も熱いのか、涙を多く分泌して視界を悪くする。拳を解いて、雅は男の目を盗んで携帯の短縮ボタンを押した。これはある合図サインだ。


「他に字持ちはいないの!?」


この状況に早くも限界を迎えた女性客が叫んだ。それを皮切りに多くの客達が口々に「字持ち」と言い出す。


「そうだ、字持ちのヤツが何とかしろよ!そのための法律だろ!?」


この場に字持ちは―恐らく自分しかいない。覚悟を決めようと、雅は荒い呼吸を繰り返した。

客達の騒ぎように案の定神経を逆撫でされた男はまた次の生贄を探そうと店内を見回した。それを遮るように雅が立ち上がり、【音】の字を解放した。


「うるせぇ騒ぐな!!…ッ、ぐ…!?」


放ったのは衝撃波―あくまでも周りへの影響を考慮した、ごく低威力のものだ。

牽制用としては充分に役目を果たしたようで、男の意識は雅へ向けられた。


「…」


改めて男を見ると、大きなボストンバッグを持っていた。服は擦り切れてはいるものの、体に汚れらしいものはあまり見られなかった。武器は字持ちだから字だけだろう。

対峙して十数秒、雅は懸命に視覚からの情報を組み立てる。やがて、一つの結論を導き出した。


「あなたの事、今朝ニュースでやってた。…その鞄、1000万入ってるんでしょ?これ以上罪を重ねない方が身のためだと思うよ」


月並みな台詞だが言わずにはいられない。自分が言葉を紡がなければ、注意を引きつけることは出来ない。雅の作戦は今のところ上手くいっているようで、男は自嘲気味に語り始めた。


「お前も字持ちか…なら分かンだろ?字持ちってだけで差別されて、まともな職にすら就かせて貰えなかった、俺の気持ちがよ!」

「分かるよ―だからこそ、やっちゃいけないっていうことも分かる。世界は私達に理不尽な形に変わったけど、その理不尽を変えるために存在する場所もちゃんとある!そのために…」


そこまで言いかけたところで、何名かの武装した人間と、雅達の知っている人物が突入してきた。


「そのために、NOAHは尽力している」

「雅ちゃんのお兄ちゃんじゃん…」

「よかった…間に合った」


雅も灯も、少しニュアンスは違うものの安堵し、強ばった顔を弛ませた。


「皆さん、遅くなりました。特殊能力者支援機関“NOAH”の者です」


NOAH―国から唯一認められた、字持ち達の最後の砦だ。この組織が字持ち達の最低限の権利を保障しているといってもいい。NOAHの存在が無ければ、恐らく字持ち達は殆どの学校や公共施設を利用出来なかっただろう。


「―NOAH……?じゃあアンタも字持ちか!」


組織名を聞いた途端、目の色を変えて別の客が言い放った。重ねるように、別の客も差別的な目でを指差した。

明らかに悪意を込めた口調で怒鳴り散らす。


「早く!そいつを何とかして頂戴!人間こっちは危害を加えられているのよ!」


反論の前に、雅は「やっぱり」と思ってしまった。やはり、正義感を以て行動しても字持ちであるだけでこんな言い方をされてしまうのか、と。

言葉も出なくなった雅の前に灯が飛び出してきた。


「そんな言い方ッ…勝手過ぎるでしょ!字持ちだって人間じゃん!生きてていいに決まってる!生きてるのが当たり前じゃんッ!」

「灯ちゃん…」

「君は…」


雅とその兄は目を見開いた。


「アンタ達だって、明日には字持ちになってるかも知れないんだよ!?」

「ハッ…そんな馬鹿な。字持ちはな、生まれ持った呪いなんだよ」


鼻で笑った客に向かい、灯は右手を突き出した。

掌には、薄らと痣が浮かび上がっている。だが、それはまだ何にも読み取れない。


「…ほら、これ見てよ。…これは、ここに居る間に出てきたヤツだよ」


それを見た客はぎょっとして、怯えたように身を引いた。


「字、の…なりかけ……?」

「字は、後から発現することもあるんだって。突然にアンタ達の言う普通じゃなくなるの。…それをアンタ達は全然分かってない!」


殆ど噛み付くような勢いで言い切ると、店内は一瞬にして静まり返った。


「おい、NOAHの兄ちゃん」


その沈黙を破るように、男が雅の兄に向き直った。憑き物が落ちたような顔で言う。


「…生きてて良い…俺達も、生きてて当たり前、なんだよな。―投降する。金も銀行に返してくれ」


男は両手を差し出し、兄はそれに手錠を掛けた。


「必ず、あなたにとっても生きやすい世界にしてみせます。手錠これと引き換えに約束します」


兄の言葉に、男は大きく頷いた。


「重要参考人として、君たち2人もNOAHに来てくれ」


兄は二人を振り返りそう言うと、有無を言わさぬ勢いで二人を連れて護送車に乗り込んだ。



*



NOAHに着き諸々の手続きなど―その合間に二人のメディカルチェックも行われた―を終える頃には、既に2時間以上経過していたが、当然帰れる筈もなく、二人は大人しく兄を待った。それから10分後、雅の兄が戻ってくると、三人は簡単に自己紹介を済ませた。


「僕は加賀聖かがひじり。名字は違うが雅の兄だ。そしてここ、NOAHの局長でもある」

「アタシは武藤灯むとうあかりです」


名前を知り、話をスムーズに進めやすくなると、聖はまず雅に話し始めた。


「…さて、まずは雅」

「ん」


短い返事を返す。


「字持ちに対して能力を行使した以上、予定を早める事になるが、NOAHに入局してもらうよ」

「分かってる」


さも当然のように頷くと、灯は大袈裟に驚いた。


「え?雅ちゃん、NOAHに入る事、決まってたの?」

「うん。本当は高校卒業後、って話だったんだけど…今回こういうことがあったから」


雅は聖と、高校卒業後はNOAHの局員として入局することを、かなり前から約束していた。そこに雅の不満はない。この世の中を変えたいという思いはここで実現する他ないのだ。


「なるほど…」


今度は、雅に感心してうんうんと頷いている灯に話が振られた。


「次に、武藤くん。君は字の発現の兆候が見られている。こちらで字を特定させてもらったが、今聞くかい?」


字が発現しかけていることは雅から既に告げられていたが、何の字か具体的には知らなかった。

気が利いている、と言うべきか。メディカルチェックの際に分析しておいてくれたらしい。


「はい。アタシがどんな字に選ばれたか、知りたいです」

「いいだろう。君の字は―【移】だ。痣の位置は右掌、完全に発現するにはあと24時間もないだろう」


自分だけの字。灯はその事実を受け入れたらしく、素直に目を輝かせた。


「移…!」


なりかけの字をまじまじと見つめ、ぎゅっと拳を握り締めた。


「空間移動や、物質転移、出来る事は他にもあるだろう。NOAHは字の可能性を広げるための環境も整っている」


聖は更に続ける。


「そこで、という訳ではないが。僕達に、君の力を貸してもらえないか」


二人は真っ直ぐな視線をぶつけ合った。何秒かおいて、灯は決心した。


「…アタシに出来ることなら!やります!」


聖はフッと微笑み、わざとらしく両手を広げた。


「良い返事だ。…2人共、NOAHへようこそ」

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