二章 四節

 ドアが開く音がした。誰かが家に入って来た。一階の店舗の入り口からだ。


 二階でパンのサーブをしていたクチバシ医者は階段へ向かう。ユウ、リュウ、ニエ、キルケー、招待した客は揃った。物盗りだろうか。客人達は話に花を咲かせて気付いていない。『どうしたのさ』と問うキルケーに『酔い覚まし』と返す。フローリストナイフが入ったシザーバッグを持ってクチバシ医者は階段を静かに下る。夏の終わりに処刑人の刃物屋で新調した折り畳みナイフだ。


 ナイフを開くと踊り場に屈み一階の様子を窺う。暗闇に眼が慣れるまで時間は掛かった。ワークトップの側の椅子に誰か座っている。隠れもしないしこちらへ向かう気配もない。危害を加える気はないようだ。クチバシ医者は階段を下りると明かりを灯した。


 男物ジャケットを羽織っただけの人魚が座っていた。白眼を充血させ唇を尖らせている。


「また裸か。いい加減陸に上がる時は何か着てくれよ。……それでどうしてここに?」呆れつつもクチバシ医者はナイフを仕舞う。


「何よ。ジャケットくらい羽織ってるわよ」人魚は睨む。


「優しい誰かが貸してくれたんだろ」


「全然優しくない! 軽薄で無精髭で気障な男なんて! アンタの方がまだマシだわ!」


「そりゃどうも。もう秋だしさ、冷えちゃうから上に行こうよ。皆でご飯食べてるんだ。楽しいし美味しいよ。キルケーだって来てくれたんだ」


「……ニエもいるんでしょ」人魚は洟をすする。


「う、うん」


「邪魔しちゃ悪いわ。少しだけここに居させて。五分でいいから」


 様子が気になったニエとユウが降りて来た。人魚に気付いたニエは微笑んだが人魚は舌打ちした。


「お客さん?」アクアマリン色の美しい髪を緩く巻いた、子猫のように愛らしいユウが問う。


「うん。でも上がってくれなくて困っているんだ」


 ニエは階段を昇って二階へ消えた。


「一緒にケーキ食べましょ。私と弟の店のケーキなの」ユウは人魚の顔を覗く。彼女も弟のリュウと同じく急成長していたが小柄で愛らしく、少女の雰囲気を残していた。


「今、トカゲなんて見たくないわよ」ユウのドラゴンの尻尾を見た人魚が眉根を寄せる。


「トカゲじゃないもん、ドラゴンだもん」ユウは唇を尖らせた。


 小皿を持ったニエが階段を降りる。小皿にはニエが差し入れたアクアパッツァが盛られていた。彼女は人魚に微笑むと小皿を掲げる。人魚はそれを凝視すると生唾を飲んだ。ニエは小皿を持って階段を昇る。人魚は本能に抗えずに後を追った。


 ユウとクチバシ医者は笑い合い、二階へ戻った。




「それはサラマンダーのフォスフォロだね」人魚の話を聞いたキルケーが口を開く。


 彼女の隣では人魚が口の周りを汚してアクアパッツァを貪る。キルケーは話を続けた。


「会った事がないけどランゲルハンスから聞いてるよ。島の中央部には火の井戸の管理者フォスフォロが住んでいるって。こちらの海岸には来ないようだけど。ニエは幼い頃会っているんじゃなかったかい?」


 ニエは頷いた。


「見た目は好い男らしいんだけど女好きで軽くて、クチバシ医者を真逆にしたような奴さ。女を誑かしては捨てるだけが能の男さ。うちの悪魔よりも悪魔らしいね」


「早く帰ればいいのに」人魚はアクアパッツァを飲み込む。


「明日には帰るだろうさ」


「今直ぐ帰れ」


「あんたは大の男嫌いだものね」笑いつつキルケーはケーキを取り分けて差し出した。


「男なんて大っ嫌い。女誑しは全員死ね」


 人魚はケーキにフォークを入れると口にした。


「何これ。滅茶苦茶美味しいじゃない!」


「だって自慢のケーキだもの」ユウが得意げに笑う。


「……トカゲなんて言って悪かったわね。偶になら買ってやってもいいわよ」


 ユウは人魚に微笑んだ。人魚はニエを視界の端で見遣る。


「……アンタも。陸に居る時は休戦してやるわよ。あのアクアパッツァ、アタシが来る事見越して悪魔が作ったんでしょ。好物の前じゃ弱くなるわ。やっぱりアイツ、嫌な奴よね」


 ニエは人魚に微笑んだ。


「何よ。海に入ればやるわよ! アンタの投げナイフになんてもう怯まないんだから!」


 その日は遅くならない内にお開きにした。キルケーは術を使って人魚と共に帰り、クチバシ医者は直ぐそこまでニエを送り、名残惜しそうに見つめるユウにまた遊びに行くよと言い聞かせた。そして竜の翼を広げ夜空を翔る双子を見送った。


 戸締まりをしたクチバシ医者は階段を昇ろうとした。しかし誰もいない筈の二階から物音が聞こえる。皿と皿が触れ合う音、流水音、鼻歌……。クチバシ医者は足音を忍ばせて階段を昇る。今日は不意を突く客が多い。


 壁に身を潜め二階を覗く。背を向け洗い物をする男がいた。緩やかな長い赤毛を一つに結わえた、筋肉が引き締まった細身の男だ。


「楽しかったかい?」手を止めた男が笑顔で振り向く。


「……人の家で何をしてるんだよ」敵意は無さそうだ。クチバシ医者は近付く。


「暫く泊まるからお手伝いをしているのさ」無精髭の赤毛の男はウィンクする。


 軽薄、無精髭、気障。人魚が吐き捨てた単語がクチバシ医者の頭に浮かぶ。


「お前がフォスフォロだな」


「鋭い! 流石ハンスが可愛がるクチバシ医者君だ」フォスフォロは口笛を吹いた。


「話題に出たんだ。その通りの人だなってさ」


「美男?」


「軽薄で無精髭で気障だって人魚が」


「言うねぇ」フォスフォロは豪快に笑ったが表情とは裏腹に気持ちは沈んだ。


「何故火の井戸の管理者が僕の家に泊まるんだ? 帰るんじゃないのか?」クチバシ医者は濡れ布巾でテーブルを拭く。


「暫く滞在するんだ。ハンスが居る北の街は栄えているから視察に来た。貨幣文化を齎したハンス様の腕前を勉強しようとね」フォスフォロは皿を洗う手を動かす。


「だったら悪魔の家に滞在すればいいじゃないか」


「俺だって野郎の家より女の子の家がいいよ。でも大事な姫に悪い虫がつかないようハンスが首を縦に振らないんだ。ニエは俺なんか相手にしてないのにさ。過保護だよ」


「じゃあ街の宿泊施設でも探すんだな」


 フォスフォロは泡だらけの人差し指を掲げリズミカルに振る。


「オニーサンはハンスのお墨付きなの。ハンスにここに泊まれって言われたの。宿泊料はそこさ」フォスフォロはカウチを示す。まるまると太った袋が鎮座する。金貨だろう。


「メシの用意くらいするよ。女の子にしか振る舞わない美味い料理が食べられる。わぉ!」


 クチバシ医者は悩んだ。毎食イギリスパンに目玉焼きとハムを載せタバスコをかけるのはそろそろ飽きた。魅力的な相談だ。しかし軽い男との同居は気疲れしそうだ。それに素顔を美男に見られるのは屈辱だ。……でも温かくて美味しい料理は魅力的だ。


「……女性を連れ込んだり、泣かせたりしなければいい。あと僕の素顔を見ないのなら」


 フォスフォロは白い歯を見せ『任せろ』と笑った。


 その日から共同生活が始まった。フォスフォロは女性を誑かすだけあって細やかな気配りをする男だった。食事中に彼は量が減ったクチバシ医者のグラスに水を注いだり視線を察して物を取ったり、当然であるかのように気を利かせた。クチバシ医者は己の鈍感さが嫌になった程だった。買い出しに共に街に出てもフォスフォロは約束を破らなかった。女性達に熱い視線を送られ声を掛けられるが『ごめんね』と笑って手を振るだけだった。


 そんな折ニエがワイナリーの手伝いへ赴き、ランゲルハンスは『今年も山に籠る』と家を空けた。クチバシ医者はその日、街の式場で花の打ち合わせをするのでフォスフォロに留守を頼んだ。『売り子なら任せろ』と彼は快く引き受けた。


 店番をするフォスフォロは退屈した。客が来ない。荒れ地に店を構えるなんて酔狂だと思った。作業台にブーケのスケッチや見た夢を綴った日記がある。それを尻目に感心する。


 痩躯のクチバシ医者は日の出前から力仕事をこなす。女性が苦手でも商談を受け、悪夢を細かく記して記憶を取り戻す足がかりにする。……俺の所属者達は記憶を取り戻す事を忘れ、惰性で毎日を過ごすだけだと言うのに。フォスフォロは溜め息を吐いた。


 秒針の音が響く。先日泣かした人魚の顔を思い出した。女の子に目の前で泣かれた。気持ちが暗く沈み、胸が痛む。


 椅子の背に胸を預けて座したフォスフォロは足を伸ばし、借りた小説を読むが集中出来ない。気分転換に煙草を吸いたいが残りが少ない。コーヒーでも淹れようかとフォスフォロが椅子から立ち上がったその時だった。開放しているドアから人影が覗いた。


「いらっしゃい」フォスフォロは微笑む。


 佇んでいたのは先日涙を見せた人魚だった。むくれた彼女はフォスフォロのジャケットを握っていた。しかし彼を見た途端舌打ちしてジャケットを投げつけ踵を返した。


「待てよ」フォスフォロは人魚の手首を掴む。


「触らないでよ!」


 人魚は振り払おうとした。しかし大きな手に掴まれては振り解けない。


「離しなさいよ! ジャケット返したでしょ!?」


「君に謝りたくて残っていたんだ。逃げないでくれよ」


「手を離して!」人魚が肩を震わせた。


「……ごめん」


 フォスフォロは手を離した。赤くなった手首を撫でた人魚は声を押し殺して泣いた。洟をすする音が店内に響く。


 ひとしきり泣くと人魚は息を吐いた。


「……ジャケットありがとう。クチバシ医者に頼んで悪魔経由で返そうとここに来たの。そしたらアンタが居るんだもの」


「逃げないでくれてありがとう。嫌な思いをさせてごめん。ずっと謝りたかった」


「そう。じゃあアンタの用は済んだわね。アタシの用も済んだわ」人魚は床に落ちたジャケットを拾うとフォスフォロに押しつけ踵を返す。


「待てよ。そんな顔してるのに放っておけないよ」


「じゃあどんな顔しろって言うのよ!」


「俺の前じゃ笑顔が無理だって分かってるよ。せめて眼の腫れがひくまで居て欲しい。俺は君の顔を見ないし、俺以外にここには誰もいないから」


 人魚はドアを見遣る。開いている。何かあれば逃げられそうだ。人魚は渋ったが頷いた。


 フォスフォロは人魚を椅子に座らせると二階へ上がった。ココアを淹れてブランケットを取り一階へ戻る。


 出て行ったかもしれないと思ったが俯いた人魚は椅子に座っていた。フォスフォロは側の作業台に白いマグとブランケットを置くと二階へ上がった。一緒に居ない方がいいとは思ったものの店番をサボる訳にいかない。窓辺に椅子を置くと景色を眺めた。これなら入り口が見下ろせる。客が入ったら降りよう。窓辺に片肘をつくと溜め息を吐いた。


 女の子が俺に捨てられて泣いていると風の噂で聞いた事があった。管理者や元所属者の魂は永遠でも気持ちは永遠ではない。所属者から聞いた噂だがニエを慈しみ育てたランゲルハンスだって彼女が禁を破った時に他の女に触れ、捨てた。恋や愛は永遠ではない。その時楽しければそれでいい。それがフォスフォロの生き方だった。


 しかし胸が痛む。目の前で涙を流されたからだろうか。それとも人魚の心を傷つけたからだろうか。答えを探している内に眠気に襲われ、フォスフォロは瞳を閉じた。


 目覚めたのは夕方だった。フォスフォロは一階へ駆け降りた。ブランケットはジャケットと共に畳まれ作業台に重ねられていた。ココアが入っていた白いマグは空だ。店内には誰もいない。フォスフォロは煙草を吸いに外へ出ようとジャケットを羽織った。甘い匂いが漂う。胸が痛んだので人魚の真似をして舌打ちした。


 その晩酔ったフォスフォロは食卓で、明日帰る旨を告げた。


「なんでさ? 碌に街の視察もしてないだろ?」クチバシ医者は問う。


「……君との三つの約束、俺、二つも破ったんだよ」フォスフォロは酒臭い溜め息を吐く。


 フォークを止めたクチバシ医者はレンズから覗く青白く光る瞳で睨む。


「俺、人魚にジャケット貸してたんだ」


「で?」クチバシ医者は乱暴に問う。


「彼女が返しに来たんだよ。話によればどうやら君に渡してハンス経由で俺へ返そうとしたらしい。そしたら店に君の代わりに俺が居た」


 クチバシ医者はフォークを持つ手を再び動かす。


「俺さ、この前彼女にちょっかい掛けて泣かしたんだ。謝りたかった。女の子の涙を見たのは初めてでさ。今日彼女が俺を見た瞬間逃げたんだ。どうしても謝りたくて逃げないでくれって手首を掴んだ。そうしたらまた泣かせてしまった」


 フォスフォロは深い溜め息を吐き、立て肘をつく。酔って赤くなった顔を手で覆う。


「だからもう大人しく帰るよ」


「……街の視察は口実だったんだな?」


「ああ」


 溜め息を吐いたクチバシ医者はフォークをレストに置いた。


「……それでいいのか? 泣かしたままでさ。沢山女の子泣かしたって聞いたけど何で人魚にだけ罪悪感を感じるのさ?」


「分からない。今まで遊んだ娘達は笑顔だった。俺は女の子の笑顔を見るのが好きだ。風の噂で捨てられて泣いてるって聞いた事あるけど目の前で泣かれると辛いものだな」


「答えが出ているじゃないか。笑顔にしたいんだろ?」


 フォスフォロは顔を上げた。


「今までのやり方で笑顔にならないなら、やり方を変えればいい」


 フォスフォロはクチバシ医者を見つめていたが溜め息を吐いて笑った。


「……ありがとう。即刻追い出されると思っていたけど話を聞いてくれて嬉しかったよ。ついでと言っちゃなんだけどまだここにいても平気かい?」


「いいよ。ただしもう泣かさないでくれよ」


「分かった。……しかし君はハンスに似ているなあ」フォスフォロは失笑した。


「なんでさ!? 何処があんな奴に似ているのさ!?」クチバシ医者は憤慨する。


「ハンスに説教されていると思ったよ。管理者と所属者って似るのかね」


「あんな悪魔に似ているなんてごめんだね! 同じなのは性別だけで充分だ!」クチバシ医者はペリロス牛のハチノス煮込みにフォークを立てた。


「性別が同じか……前は女だったけどな」


「揶揄うのはやめてくれよ。酔っぱらいが」クチバシ医者は鼻で笑った。


「本当だって。俺やケイプ、オンディーヌのプワソンだけの秘密。泊まらせて貰うから話すけど言外無用だぜ?」フォスフォロは人差し指を唇の前に立ててウィンクする。


「あ、そう。忘れておくよ」


「信じてないなー。よし。ついでに言うとあいつは夢魔だ。心当たりはあるだろ?」


 確かに。クチバシ医者は話に食い付いた。眠りについた現世の魂が飛翔する夢の世界、それがこの島だ。夢魔が司っていてもおかしくはない。頻繁に見る悪夢やランゲルハンス宅のドリームキャッチャー等のまじない道具から推測はしていた。

「それで夢魔がどうしたのさ?」


「夢魔は二つの顔を持つ。男に淫夢を見せる美女の悪魔サキュバス。女に淫夢を見せる美男の悪魔インキュバス。サキュバスとインキュバスは同一の悪魔だ。夢を見せる対象によって性を変える。そして土の属性だ。両性のハンスはこの島自体でもある」


 フォークを置いたクチバシ医者は天井を見上げる。この島に来て大分経つ。驚く事はもうないと思っていた。しかし再び驚くとは。


「ランゲルハンス島って訳か」クチバシ医者は笑う。


「この島が出来た当初からハンスは居たんだ。ハンスは美しいサキュバスだった。アロイジア・ランゲルハンス、それがハンスの名前さ。島が緑で覆われた頃シルフ、サラマンダー、オンディーヌ、ノームの四大精霊が住み着いた。そしてハンスの血脈である水脈の井戸を任せられる事になったんだ。当時のハンスは割と人付き合いが良かった。力仕事の際には逞しいインキュバスに、男に物事を頼む際には色っぽいサキュバスに戻ったもんさ。サキュバスのハンスにはよく騙されたな」


「ノームって土の精霊だろ? 何処に行ったのさ?」


「……現世から君みたいな奴らが来てからハンスは村を作ってね。そこで生活させたんだ。喜ばせ、悩ませ、現世と変わらない日常を与えようとした。生活には貨幣が必要になる。物々交換じゃダメだ。豊かにならない。何か基準が必要だ。ハンスは島に存在しない金を錬金術で鋳造し金貨を人々に与えた」


 クチバシ医者はフォスフォロの話に耳を澄ませる。


「ところがノームのヴルツェルが反対した。『金は人の心を汚す。欲を生み、争いが起き、血が流れる。君がなそうとしている事は悪だ』とね。聞き流したハンスは文化基準が低い島民を哀れんで金貨を流通させた。価値基準が生まれ品物は改良を重ねた。街が生まれ暮らしは豊かになった。しかし持つ者と持たざる者が生まれ争いは起きた。ヴルツェルは怒り『この世界も金で汚されるのならば死に値する苦しみを与えてやる』と水脈に毒を投げ入れた。血脈である水脈を毒に犯されたハンスは七転八倒しつつも復讐した。ヴルツェルを喰った。……俺達管理者は死ねない。ヴルツェルはハンスの心臓に取り付き今も生きている。男のヴルツェルを喰ったハンスは意図せずインキュバスになった。毒によって性が固定された。俺達精霊が自然の毒を除去した今もインキュバスのままだ。ハンスは名前を変えた。アロイスという男名にね。性格も変わった。人嫌いのヴルツェルがハンスの体を支配したようだった。呪いを掛けられ、心から伝えたい事を伝えられなくなった。街に住んでいたハンスは寂しい荒れ地に引っ越し土の井戸を作り、管理した。俺達精霊は心臓からヴルツェルを引き離そうと手を差し伸べた。しかし鼻で笑われた。『これも私なのだ』とね。これが本心なのかそうでないのかは分からない」


「……それであいつはシュリンクスの件を口外出来なかったのか。……あいつを慕うニエはこの事を知らないんだろ?」


「ああ。三大精霊だけの秘密だ。あいつの正体を知っていた当時の所属者は毒に犯されて死んでしまった。悲しい過去さ」


「秘密を知ってる僕の身は危ないじゃないか。そんな事ポロッと言ったらどうなる事やら」


「君は大丈夫だよ」フォスフォロは笑う。


「何でさ」


「何でも」ウィンクを投げたフォスフォロはグラスを飲み干した。

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