「アポカリプス Xデイ」

山本友樹

第1話 アバン

アンノウンビースト(通称UB)と呼ばれる謎の生命体と1人の少年の戦いが終わって4年の月日が経過した。

人々は怪獣騒ぎに怯えはしたものの町は元の姿に戻ろうと今日も懸命に復興に励んでいた。あの災害が残した傷は深く、全てが元通りとはならなかった。

そして俺、大久保隆もまたこの5年で変わった。

UBの事件を追った結果その功績が認められ、俺は地方紙新聞の記者から全国紙の新聞記者となった。そしてUB事件の出来事を1冊の本にまとめ、1つのフィクション作品とし完成させた。

そのタイトルは

「巨人たちの肖像」






「先生!あの作品のラストはどのようなものだったのでしょうか!」

歩く度に多くの人間がついてくる。カメラを持つもの、ボイスレコーダーを持つもの、マイクをこちらに向けるもの。

それもそのはず。大久保隆は今やベストセラー作家だ。「巨人たちの肖像」は直木賞を受賞し、番組への露出も増え今や先生と呼ばれる存在になっていた。地方紙新聞記者の頃の少し貧しい生活ともおさらばし、東京に住まいを移し、少しばかりリッチなマンションに住んでいた。

「あの作品はフィクションとノンフィクションを織り交ぜた作品です。あの物語にはエンドマークは無いのです。」

なんてもっともらしい言葉を並べながら車に乗り込む。それでもフラッシュはうるさく、車内でも聞こえてきた。

「車をだせ」

俺は運転手にそう指示し、車が動き出す。

UBに関しては人々は詳しい情報を知ることはできなかった。「謎の生命体」として当時はどの報道番組を報じていた。これは秘密主義でもなんでもなかった。あの時の怪物が放った炎はUBの情報を多く保有していたsignalという研究所に直撃。生存者は誰一人いないと言われていた」。

そしてほとぼりが冷めたころ俺はUBの出来事を1冊の本にまとめて出版した。それが俺の処女作「巨人たちの肖像」だった。だが、巨人が何者なのかの正体はさすがに書かなかった。それをしてしまえば俺が俺でなくなる、そんな感覚がしたのだ。

だが申し訳なさもあった。俺はあの時ただ一人の傍観者だった。

結城淳という中学生の少年。彼は胸につけてあるペンダントを用いて青き巨人へと変身し、UBという巨大な未確認生命体に立ち向かっていった。

だが彼は人型のUBを倒した後に力尽きてしまい、そのまま帰らぬ人となってしまった。

彼が巨人だということは俺とsignalに務めていた研究員だけだった。だからだ。だからこそ俺の小説ではそこいらは濁して書いた。ここはどうしてもお金儲けの手段にはつかえなかった。

それ以来UBはぱったり見なくなった。俺はあの時に「ラスボス」を倒したのだと思った。

「着きましたよ。」

そんな昔の事を思い出していると時間はあっという間に過ぎていき、担当との打ち合わせ場所である喫茶店の近くの公園に停まる。

「ありがとう。」

そう言い残して俺は車を出た。

向こうの信号を渡れば喫茶店だ。時間は迫っている。急がなくては。少しばかり走る。

バン!

金髪の男とぶつかってしまう。

「すいません。」

長い長髪の金髪が揺れ、顔が見える。

見間違えるはずがなかった。俺はその男をよく知っていた。

「黒柳拓哉・・・・!」

signalの所長、黒柳拓哉がそこにいた。

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