賢者と肥えの樽(たる)

 民衆をかどわかしたとして賢者は捕まり、罰として肥えの入った樽を背負い街中を引き回される刑を命じられる。


 審判官を先頭に、兵士に首輪を引っ張られ、おぼつかない足取りで肥の入った樽を背負う賢者。


 それを見ていた一人の女性が審判官の前に出てひざまずく。

「お役人様、お願いがあります!」


 それを聞いた賢者は慌てて叫ぶ。

「清らかな魂を持つ女よ。これは我の罪。それ以上言ってはなりませぬ!」


 しかし賢者の叫び声にかまわず、女は言葉を続けた。

「肥えを道にくぐらいなら、私の畑の上を歩いて頂けませんでしょうか!」

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