第15話 嘘
「いいよ、行ってきなよ」
心にもない事をボクは言ってしまった。
「長年の‥‥夢、だったんでしょ。だったら、自分に嘘をついたらダメだよ」
なにを言っているんだ?それは、お前じゃないか、カアレ?それでも、師匠は
「いや‥でも、カアレ。お前はまだ‥‥」
「ぼ、ボクなら‥!だ、大丈夫だよ。誰の弟子だと思ってるの?」
ボクは少し言葉に詰まりそうだったのをこらえ、話した。すると、師匠は、
「そうか、分かった。お前は、俺の思っているより大人だったんだな‥。なら俺、行ってくるよ。絶対、戻ってくるからな‥‥」
そう言って家を出る師匠の顔はどこか、悲しそうだった。なんだ、師匠も寂しいんじゃないか。素直じゃないなぁ‥‥。
一人取り残されたボクは、心に穴が空いたようだった。いや、そりゃそうだよ。取り返しのつかないことをしたのだからさ‥‥
「あ‥‥れ?」
気づくとボクの目は濡れていた。その水は床に落ち続けた。いくら拭っても、水は止まらなかった。
「はは、なぁんだ。自分に嘘ついたらダメ?誰が言ってるん‥‥だよ」
本当は師匠に行って欲しくないこと、自分に嘘をついていたのは、ボクだったこと、そして‥この水が止まらないのは、悲しくてたまらないからだろう。
これじゃ、昨日となにも変わってないじゃないか‥‥。ボクは一体、なにがしたいんだよ‥‥!
ごめん師匠。こんな嘘つきは師匠の見送りには行けないや。師匠を不安にさせるだけだから‥‥‥。
ボクはもう一度ベッドに入り、寝ようとしたその時、突然家の扉が開いた。
「!‥‥誰!」
「こっちのセリフだよ、ったく‥こんなめでたい日に、二度寝するやつがあるかね‥」
そこには、ボクを見て微笑む騎士長がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます