ストーリー4~バカとパワーは使いよう~
第101話バカのモーニングショット
おっす、オラ山田! 異世界ってワクワクすんぞ!
……はいすんません、ファンの方々。
さて、俺たちの歓迎会から一夜明けた。
午前中に起きたのは久しぶりだ。だいたい寝ないか、昼過ぎまで寝てるからな。寝起きは悪くねぇけど……あー体
たぶん、ロイオとかねこねこは自分の部屋で寝てるだろう。少し離れた冷蔵庫(木材の扉がついた棚の中に氷属性の魔法陣が書かれてるらしい)とこからうるせぇいびきが聞こえるからゼウスもまだ起きてない。
てことは。
山田「ひっさしぶりの一番起きだぜ!」
なんという平和!
力任せに叩き起こされることもなければ、冷水を浴びせられることもない!
一番起きサイコーだぜ!
こりゃ、服なんか着てらんねえ、脱ぐ!
セイマ「起きたのか?」
山田「おう!」
いつから一人だと錯覚していた?
と言わんばかりに声をかけてくるのは、執事服で部屋に入ってきた美少女管理人。
いつもの俺ならこの屈強な肉体美をお披露目するとこだが、女の子に見られんのは恥ずかしい。
ゼウスからは、よく「もやし」って言われっけど……。
アイツがゴリゴリのガテン系なだけだ!
無職ヒキニートのくせによ‼
セイマ「なんで、ゼウスの額に『肉』と書いている?」
山田「思い出し怒りってやつ」
セイマ「新しいな……」
ゼウスの額に書き終えたら、なんか某キン肉マンガそっくりになったので、オリジナリティを出そう。
セイマ「今度は猫髭か」
山田「え? 鼻毛だけど?」
セイマ「頬から生えてるが?」
山田「それがコイツ」
気にすんな。こいつは全身の毛穴から鼻毛出せるから。鼻毛真拳伝承者だから。ゼゼゼーゼ・ゼーウスだから。
セイマ「……」
なんて冗談、こいつにゃ伝わらねぇよな。なんなら、こっちの世界の全人類に伝わらねぇかもしんねぇな。俺のギャグセンスは人類超越してるからな! ハッハッハァ‼
ゼウス「筋肉鼻毛バスターをお見舞いしてやろう」
山田「い、いつから起きて――」
俺の頭ん中をなんで?
とか思う暇もなく、言い終わる前にねこ髭脳筋が俺の顔面にパンチ。
鼻をやられたせいで涙目になっちまう俺だが、こんなもん慣れっこじゃい!
ゼウス「ふっ!」
山田「なんの!」
よろめいた隙にけたぐりを繰り出すゼウスの脚をジャンプで避ける。
よゆーよゆー。
と、勝ち誇った俺――とゼウス。
山田「え?」
ゼウス「バカめっ!」
言い放った一言と一緒にゼウスの大きな右手が俺の顔面を覆い、握り潰そうと力が加わっていく。
やべぇと思った時には既に遅かった。
頭ごと身体を持ち上げられて、勢いよく放り投げられた俺は床についた衝撃で背中にもダメージをもらった。
山田「イッテェェェ‼ 筋〇バスターじゃねぇのかよ! あ”ー背骨と顔面がぁ‼」
ゼウス「くだらん真似をした罰だ。まったく……セイマ、洗面所はどこだ?」
セイマ「ああ、ここを出て左ぶふっ!」
ゼウス「おい」
クールな執事も堪えきれなかったねこ髭肉マンの顔面。
我ながら力作だぜ!
密かにガッツポーズをした俺に気づかないで、ゼウスはセイマの言った通りの場所に向かっていく。
いくらアイツといえど、そう何度も俺の思考は読めねぇよな!
さっきの完全なるマグレだったわけだ。
セイマ「ゼウスから伝言だ。『俺が顔を洗い終わるまで、首を洗って待っていろ』」
山田「ばっちり伝わってるぅ! さすがゼウスさんっすね!」
よし、逃げよう。できるだけ遠くに。ギルドとか人目のつくとこに。
*
ゼウス「バカ、なにかいいクエストを見繕ってこい」
山田「俺はパシリじゃねぇっす」
ギルドに入るなり、人を顎で使おうとするノー筋に俺は手でノーと意思表示。
逃げ切れなかった俺の頭の上にはぷっくらとした赤いたん瘤ができ上がっている。それが、注目を集めたのかはたまた、俺の溢れんばかりのイケメンオーラに充てられたのか、一人の美少女が声をかけてきた。
リオ「あ、ゼウスくんじゃーん。やっほー」
後ろで一つに束ねられたオレンジ色の髪を揺らす顔見知りの冒険者。可憐な容姿をしているが、こう見えてこの街トップクラスのパーティの一人。
山田「おーす! リオのねぇーちゃん!」
ゼウス「一人か?」
リオ「まあーね。そっちはクエスト請けにきたの?」
ゼウス「それ以外なにがある」
元気良く笑顔で挨拶したんだが、カレーにスルーされた……。
みんな、そんなに背の高いやつがいいのか!? ぶっきらぼうで脳みそ筋肉なのが長身で許されるのか!? ならバカも明るいってので許されてくれよ!
ゼウス「凹んでいないでさっさと受注してこい」
リオ「ねね、よかったら一緒にいってあげよっか?」
片や命令、片や眼中にすらない。
この世界でもバカに厳しいってのは変わらねぇんだなぁ……あー癒すぃがほしい。
ロイオが癒しを求めるの、ちょっとわかってきたぜ……雑な扱いされるとこうもダメージになるなんてよ。
アイツにゃ、もっと優しくすっかなぁ……いやダメだな。アイツに面倒見てもらわねぇと俺がただスベるバカになる。
てことでロイオ、ガンバ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます