第97話モヤモヤのあぁ~ず

 さて、俺の方がこの美少女メイドと相性がいいと判明した時点で、本題に入るとしよう。


セアラ「先程……数時間前、大きな地響きがあった。お前達、何か知らないか?」


ロイオ・ねこねこ「「……あー」」


 口は揃えて、お互い目を反らした俺たち。うん、間違いないわ。俺たち決闘してたわ。ちょっと地形変えてきたわ。

 

セアラ「なんだ、その納得した顔は?」


ねこねこ「ロイオがフォースでやったんだよー」


 あ、てめぇ‼

 上等だ、なら俺だって――


セアラ「ウソはいい。今はお前のウソを流せるほど、私の心は落ち着いていない。うっかり首を切り飛ばしてしまいそうだ」


 口八丁な俺のウソをかましてやろうとしたら、メイドが背中の剣を少し抜いてねこねこを睨み下ろしていた。

 なんていい奴。俺が突っ込まなくても張り合わなくてもいいねこねこなんてただのカワイイ(笑)な弟だ。

 でも、なんでコイツ……ねこねこのウソを見破れたんだ?


ねこねこ「なんでウソだって思うの?」


扉の傍にセアラを残して、ベットに座る俺を壁にねこねこは逃げてきた。


セアラ「フン。単純だ、ロイオの反応が教えてくれる」


 俺かよ。そんなに顔に出てますか? まあ、今回に限っては助かったがな。

 勝ち誇った顔をした俺に、ねこねこは負け惜しみ的な視線を浴びせてくるが受け流す。

 今の俺は気分がいい、とてもいい。


ロイオ「騒がせたようで悪かったな。さっきまで決闘してたんだ。たぶん地響きはそのせいだ。かなりマジでやったからな」


セアラ「お前達二人の本気か……確かに、モンスターの大群をもモノともしないお前達なら……可能か」


 理解が早くて助かる。

 ずっと剣に添えていた手をやっと下ろすメイドに俺は質問を返す。


ロイオ「で、さっきの話からして俺たちの決闘がお前と姫さんのケンカを引き起こしちまったみてぇだが……?」


セアラ「……みっともない話だがな」


 露骨に落ち込むメイドに癒しモード全開のねこねこがそっと歩み寄った。


ねこねこ「ゆっくりでいいからさ、教えてよ。じゃないとぼくだってセアラの思ってることわからないからさ」


 穏やかな口調、柔和な表情、キラキラと咲かせた花(どうやったんだよ)。コイツ、女にはこれだけの優男になれるのになんで俺にはいたずらっ子なんですかね。思春期か?



セアラとオブの出会いは、赤子の頃らしい。


共に使用人だったセアラの両親と領主だったオブの両親は大層仲が良かった。

当時はこの屋敷で暮らしており、使用人の数も今の半分くらいで成金というわけではないが豪華に暮らしていた。

出産時期も近かった二人は、それこそ物心つく前からずっと傍にいたようで幼い頃は姉妹とすら勘違いしていたらしい。


セアラ「セイマが産まれてからは、姫様もよく面倒をみて下さった」


羨ましそうに呟くメイドは楽し気に語っていた表情から一転して、顔を曇らせる。


セアラ「私は……嫉妬深いな」


ねこねこ「……」


セアラのその言葉に何か言おうと顔を上げたねこねこだったが自重して目を伏せる。


セアラ「姫様を護るため、この命尽きるまでお仕えするため私は存在しているというのに……姫様の一番でありたい、そんな感情をいつからか抱くようになった」


オブのオーダーメイドである服の裾を握りしめているセアラが、俺には自分の感情をセーブできない子供のように映る。そんな自分を情けなく思っていることも伝わる顔だ。


セアラ「素直に言えば、私はお前が憎い」


面と向かって女に憎いと言われたのは俺だ。

いつもなら、売り言葉に買い言葉で雑言を浴びせまくる俺だったがこんなにもキッパリと言われてしまってはそんな気は失せる。


セアラの後ろめたい気持ちを宿した目つきがこちらの抱くイメージをひどく塗り荒らす。


セアラ「姫様への忠義も共にいた時間も私の方が上だ‼

それなのに、なぜお前が姫様の中にいる!

なぜ私のいたところにお前がいる!」


声を荒くする彼女は常の凛々しさを棄ててベットに並んで座る俺たち――いや、俺に詰め寄った。

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