第87話いけめんしょうじょ
山田「……あのイケメンが女の子だったなんてなぁ……異世界マジ神ってる」
イケメン執事のねえちゃんが入浴nowな間にロイオが壊した椅子を倉庫から持ってきた工具でトントンとんかちnow。
いやー妄想が捗る。俺のいる間に風呂なんて行くとは、愚かだぜ。
セイマ『わ、ワタシの入浴中に……覗きなんて……』
セイマ『き、貴様には先程の借りがある……少しだけなら……背中を流してやろう』
セイマ『ワタシはそこまで女性らしくないのだが……なぜ、こんなにもたくましくなっている……?』
セイマ『ワタシのせいだと……? ……な、なら責任を持って静めて……やるか』
俺の脳内であられもない姿になっているイケメンちゃん。
山田「……いいねぇ……今なら、俺でも同人誌が描けそうだ」
セイマ「ドウジンシ? なんだそれは?」
山田「俺たち男にとっては神聖な書物だ……あ、風呂上がったのか?」
妄想を一時停止して、現実に意識を帰還させる。
驚いたりしねぇさ。俺にゃあ、索敵能力がビンビンだからよ。
いい香りが背後から漂い始めた。
俺のアレが、静まるまで待ってから、湯上り美少女を拝むとしよう。
いざ。
山田「…………随分とおもしれぇ服だな!?」
きゅっとしまったウエストにスラっとした長い脚。
その全てを台無しにするかのような絶望的で笑いを誘う服。
全身スケルトンタイツ。
セイマ「そうかな? まあ、なぜか姉さんたちからはよく止めろと言われてたけど……カッコよくない?」
…………おふ、センスが残念な美少女か。
山田「ま、まあ悪かねぇんじゃねぇの?」
これが今の俺には精一杯だった。
一時停止中の妄想も砕け散ったなりだし、湯上り美少女の火照った顔とか 色々、もう刺激が強いですね。二〇歳童貞にはつらいよ。
セイマ「なぜ頭を抱えて顔を隠す?」
山田「訊かないでください。それより……ロイオが迷惑かけたな」
顔を隠しながら言うのは失礼とは思っているが、これが限界なんです。エルフとかああいう神聖で清らかな人なら平静を保てるんです。夢があるから。
でもこの人にはたった今その幻想を砕かれた。色々、心身がボロボロなんです。
セイマ「ああ……うん。ワタシが姉さんを悪く言い過ぎていたのは事実だから仕方ないんだ。なぜ、ロイオがあそこまで怒ったのかは理解できないけど」
あー、そういうことなら…………心当たりが一個だけある。
確か、ねこねこの姉ちゃんとロイオはすげぇ仲良しだったんだけど、その姉ちゃんが事故で亡くなってるっぽい。
ショックで登校拒否状態にまで陥ったシスコン(だったらしい)ねこねこのことをロイオが立ち直らせたっていう話を聞いたことがある。
それ以来、ねこねこの兄貴みてぇになったロイオ。
一番辛いのはねこねこだが、すげぇ仲の良かった存在を亡くしたロイオも辛かったはずだ。
それなのに、その代わりをしようと頑張ってるロイオを俺はすげぇと思ってる。
山田「アイツはたぶん、実の姉をバカにしてる妹を目の当たりにして……許せなかったんだろうな。実の姉に甘えることもディスることもできねぇ
思わず声に出ちまってた。
俺の真剣な考えと言葉に意外そうな顔をしたセイマは、そのまま言葉を発する。
セイマ「……ワタシには姉さんがいる。それが当たり前だから、ロイオの怒りを完璧に分かるのは無理だけど……ちょっと無神経だった」
山田「あーいいよいいよ。知らねぇのが当然なんだし、あいつらが戻ってくる頃には怒りもどっか吹っ飛んでるって! それより、あいつらが帰ってきたら飯にしようぜ!」
セイマ「そうだな……せめてもの謝罪に、豪勢にしよう! お前達の歓迎会も兼ねてな!」
あ、俺、このねえちゃんとは気が合いそうな気がするぞ。
なんというか、大学にもこの手のノリがあったような覚えがあるし。
ただなぁ…………『スケルトン』タイツなんだよなぁ…………スケルトンはいらねぇだろぅよぉ………………。ちっくしょー。
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