第66話リミットブレイク・ロイオ
壁門といくつかの民家が崩壊し、避難した街の住民がいないそこはただただ瓦礫と土煙を巻き上げてスカイファントムの不可避の一撃の威力を物語る。
スカイファントムは巨剣の形状を維持したまま再び天へ掲げる。
第二撃を放たんとした漆黒の刀身に稲妻を数回纏めたかのような雷電が障害となって炸裂する。
神聖属性の次に値する弱点属性を突かれた黒い塊は完全な不意打ちに形状を維持できない。
元の球体に戻るスカイファントムへ瓦礫の底――雷電を放出した地点から怒りにも似た声が発せられる。
ロイオ「あークソったれ……奏――じゃなかった。自称神のやろう、瓦礫に埋められた状態で蘇生しやがった。生き埋めになるっての……もう一回殺す気か?」
花畑から帰還した魔法剣士の腕には少量の稲妻が放電しており、スカイファントムはそこが砲台だったと認識。
球体の質量を超える無限にも等しい数の短剣へ形状を変え、蘇った敵へ突撃する。
ロイオ「まあいいや。姿だけでもアイツを見れたんだ、得だな。おまけに……」
数えきれないほどの漆黒の刃が迫るというのに魔法剣士はさっきと打って変って平然としていた。それもそのはずだ。
なにせ今の彼は――
ロイオ「オールフォースは切れたがレベルもステータスも『Noah』全盛期に戻ってる――デスぺもない。大黒字だ」
レベル一〇〇・職業別ワールドランキングベスト八・称号『
『Noah』の限界レベルは一〇〇であり、本来なら戦闘不能になった時点でデスペナルティ――レベルダウンまたは装備アイテム消失、罰金のどれかがある。
が、神の蘇生がハイレベルなものなのか、死んでいないからデスぺもないのかロイオは逡巡したがどっちでもいいと考えるのを止める。
ようはつまり、『Noah』を完クリしたアバターがそのまま自身となったということだ。
それは数百万人が参加した公式ワールドトーナメントで好成績を修め、魔法剣士職を極限まで極めた称号。
アバターの中で最良にして最強に名を刻む。
故に、刃の雨が降ろうとも表情すら動かさない。動くのは手に纏った雷のみ。
迸る雷撃は漆黒の刃を焼き消し、スカイファントムのHPを大きく削った。
少し小さくなった球体に戻るかつて強敵だった者にロイオは冷ややかな声を送る。
ロイオ「悪いな、スカイファントム。さっきまでの俺とは別格だ。文句なら神に言ってくれ……あと――」
今度は稲妻ではなく聖光を宿した手を広げて中空で静止している標的に照準。
ロイオ「お前、喋れなかったんだな」
冷笑を含めた別れの挨拶が終わると神々しい光弾が死霊を浄化した。
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