第54話いじょうじたい

ロイオ「だーかーら、小説書くのは一旦止めて仕事を先に片付けろ」


オブ「ロイオさんが……見張り役に……ずっと私を見ているはずなのに、どうしてこんなにもときめかないの……?」


 当たり前だ。

 仕事ほったらかして、現実逃避したいのはわかるが…こいつは領主。

 俺にときめかないのは単純にそういうことだが、領主という重役にあるコイツの仕事は単純じゃない。

 俺のバイトとは重要度が雲泥の差だ。

 あばあちゃんに任されたこともあるし、ちゃんと仕事はしてもらう。


「ソフィアさまー‼」


オブ「……あれは、玄関のお掃除をしていたエノ!」


ロイオ「紹介サンクス。なんか血相変えて、随分慌ててるぞ?」


 走ってきた掃除係のメイドは、切羽詰まった様子でオブの前で跪いた。

 

エノ「大変です! 街の内外にモンスターが大量発生し、街は大混乱です! 現在、近衛隊が冒険者と共に鎮圧に向かいましたが、出現箇所多数なため一部隊の人数が少ないことを考えると鎮圧は難しいと思われます!」


ロイオ「おおー、分析までご苦労だな。だが、街の外だけじゃなく内側にも……一体どういうことだ?」


オブ「考えるのは後です! ロイオさん、私たちも行きましょう!」


 相変わらず領民のことになると動きが早いな。

 だが、待て待て。考えるのを止めたら、人間失格だぞ。冷静にメイドへと質問する俺をオブは慌てながらも待った。


ロイオ「まあ待てよ。エノさん、一番モンスターが多く湧いたのはどこだ?」


エノ「はい、街の外です。まるで街を囲むように屍体種と骸骨種が……街の中では、街道に吸血鬼種、南の草原は不死者種が」


オブ「街の中に上位種族……⁉  草原は外と隣接しているとは言え……おかしいですね……魔除けの木々を植えてあるのだからそんなことは……」


 思案を巡らせ始める領主。

 まあ、街の中に限って言えば大した被害にはならないだろう。

 なにせ、ショタ賢者やバカ盗賊、脳筋狂戦士がいるんだ。モンスターの大群ごときどうとでも出来る奴らだ。だが、いくら奴らでも外の様子までは気づけない。


ロイオ「オブ、街の中より外を何とかした方がいい。俺とお前……そうだな可能なら広範囲魔法を使えるチビ賢者と無双できるメイド戦士がいれば完璧だ」


オブ「はい! エノ、図書館にいるセアラに街の中をある程度なんとかできたら外に来るよう伝えて!」


エノ「かしこまりました」


 たったったと駆けていくメイドを見送って、俺も中庭から出ていこうと思ったがその前に。


ロイオ「あ、オブ、ちゃんと武装してこいよ。その清楚なドレスもいいが、鎧騎士の方が似合ってるぞ」


オブ「……オブちゃん! ……似合っている……! きゃああ‼」


 中庭の草木を飛び越えていく後ろで何やら蒸気が沸き上がる音が聞こえたが、まあいいだろう。蒸気機関車にトランスフォーマーしてもらった方が移動は速いに決まってる。

 街の中は他の三人に任せていいだろう。よっぽどのことが無い限り死なない奴らだ。よっぽどのことがない限り、な。

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