第24話とらわれたプリンセス(とおまけ)
オブ「……ここは……牢の中? あ、ロイオさん、ご無事ですか?」
魔物の触手らしきものに捕まり、引きずり込まれた私とロイオさん。
ジメジメとした湿気と冷たく閉ざされた鉄格子。
そして、隅の方で小さく蹲っているロイオさん。
ロイオ「……」
オブ「ロイオさん?」
ロイオ「……」
オブ「もしかして、どこかお怪我を……?」
ロイオ「……いや、大丈夫だ」
オブ「そうですか……?」
肩に触れると怯えるように手を払う彼に私は違和感を感じた。
オブ「どうしたんですか?」
ロイオ「……いや、別に」
オブ「……私が眠っている間に何かあったんですか?」
ロイオ「……いや、特に」
オブ「さっきから、やけに『いや』が多くないですか?」
ロイオ「……いや、そんなことは」
やっぱりそうだ。『いや』が多い。
これは……もしかして、あのお二方が言っていた……。
オブ「……山田さんとゼウスさんがおっしゃっていたのですが、ロイオさんが『いや』を連呼するときはコミュ障? の時なんですか?」
ロイオ「……いや、そういうわけでも」
オブ「そうなんですね……」
こんな時の対処法は聞いている。
私は蹲っているロイオさんの後ろに腰を下ろして背中と背中を合わせる。
オブ「お二人からこうすれば、症状が緩和されると聞いているのですが……どうですか?」
背中越しにロイオさんの熱が伝わり、少々恥ずかしい。
それは彼も同じようで。
ロイオ「……あいつら帰ったら殴ってやる」
顔を少し上げて、先程までの調子で呟いたロイオさんに私は安堵する。
オブ「ふふ、どうやら良くなっているようですね」
ロイオ「……なぁ、こんな時になんだが、一つ訊いていいか?」
オブ「はい、なんでしょう?」
改まって、口を開いたロイオさん。その口調は少し穏やかで。
ロイオ「アンタとセアラの関係について、聞いてみたい。二人の間には上司とか部下とか、そんな堅いものは無い気がする……」
オブ「少し長いですよ?」
こんな状況だというのに、呑気な会話を楽しんでいる私がいる。
それはたぶん、この人の人柄が私を和ませてくれるからだろう。
ロイオ「いいよ別に。俺も昔話は長い方だ」
オブ「ふふっ では」
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