第13話はぁ?
ゼウス「確認だが、このクエストと薬草採取のクエスト、そして注意書き、日本語で書かれたものすべて、そちらが用意したものだな?」
オブ「はい。異界の人がこの街に来ることは分かっていましたから。日本語は私が書物を調べて書きました」
ロイオ「(日本語の書物があるのか……)……なんで分かってたんですか?」
オブ「一か月ほど前に、『ティア』という旅の占い師から聞きました。よく当たるということでこの大陸中に知られている方です」
ゼウス「なぜ依頼主の名を別々にした?」
オブ「その方が怪しまれにくいと思いまして……領主が自ら薬草の依頼を頼むなんて聞いたことありませんから」
ロイオ「さっき言ってた、モンスターを倒すっていうのについて詳しく」
オブ「はい、一週間ほど前から……東北にある古びた居城に凶悪なモンスターが住み着いたのです。それ以来、夜になると隣国につながる通路にアンデットが湧くように」
ゼウス「なるほど、貿易などが出来ない。かといって湧いたアンデットを狩っても根本的な解決にはならない」
山田「根っこ切るのが手っ取り早いけど、そんなことができる奴、俺たちしかいねぇな!」
長い質問攻めの途中で、ここぞとばかりに口を開いた赤いバカ。珍しく黙っていたのにはしょうがない事情があるのだ。
ねこねこ「あーあ、受付のお姉さんが、職業戦士だったなんてなー」
セアラ「なんだ?」
ねこねこ「ううん、カワイイのになぁって。いっそメイドとかやれば?」
セアラ「貴様に言われると虫唾が走る。その口を閉じろ」
ねこねこ「うんごめんね。メイドとか無理だよねー、戦士やってるような筋肉女じゃ、可愛さもなにもないよねー。前言てっかいー」
セアラ「メイドなら貴様がやったらどうだ? さぞ似合うことだろう」
ねこねこ「褒めてくれてありがとー。ショタ属性あるんだねー。ま、ぼくはお断りだけど」
こんな険悪な二人の間に挟まれているんだ。これは黙る。よっぽどのバカでない限り黙る。あ、よっぽどのバカが黙ってたな。うん、マジヤバい。
なんでバチバチするかな……仲良くしましょうよ。まあ、あのねこねこがここまで嫌悪感ある態度なのは珍しいんだが……。きっと、自分に靡かないまでもお淑やか系で癒しを得ようと画策してたんだろうな。まあ、セアラさんはねこねこに敵意丸出しだったから、勝手にがっかりしてるアイツが悪い。
ゼウス「では、その古城に行こうか。俺が全部叩き切ってやろう」
山田「はーいゼウスさんはダメでーす!」
ゼウス「む? なぜだ?」
やる気満々で殺人鬼の顔をしたゼウスさんを正気に戻したのは山バカだ。
何か企んでそうな顔してるから耳を一応傾ける。バカの知恵を舐めてはいけない。ぶっ飛んだ意見が割と大事なときってあるからな。バカだけど。
山田「今回の報酬と合わせてモンスターから盗ったやつ売り払うんだよ。やっぱ金がなきゃ始まんねぇだろ? それと今後の資金集めもやるし」
ゼウス「それがなぜ俺だ! キメラでは物足りなかったんだ、その凶悪なモンスターとやらを狩ってこそ異世界に来たかいがあったというもの! 最強への道を邪魔す――」
山田「儲かったら、つえぇ武器買ってやるけど?」
ゼウス「仕方あるまい。手伝ってやろう」
変わり身はや。現金かよ。
あんた……バカな山田にいいように使われちゃってるけど、いいの?
どちらかといえば頑固者のゼウスさんを陥落させた山田は、上機嫌になって調子にのりやがった。
山田「ってーわけでー、連れてくならそこの茶髪とここの白髪にしてくれ!」
勝手に決めんな。イキりバカ!
隣のねこねこと連携して苛め抜いてやろうかと思ったが、未だにメイドとバチバチしてたから止めた。一人でバカを論破するのは楽しくないし。
大人しく隣にいる俺を横目でちらりと探って領主は柔和に目を細める。
オブ「ええ。私たちとしては、パーティに加わってくださるだけで有難いです」
はい、せーの。
ロイオ「はぁ?」
ねこねこ「はぁ?」
山田「はぁ?」
ゼウス「はぁ?」
ごらんください、四人揃って侮蔑の顔。いやーシンクロしてんなぁ俺ら。
オブ「ど、どうなさったんですか? 皆さん、急に――」
セアラ「姫様に向かってその虫をみるような目はなんだ!」
戸惑う姫と憤る近衛。まあ、聞け。
「「「「俺たち、他所のパーティに入る気ないんで」」」」
こればっかりは譲れないところなんで、嫌なら他をあたってください。
以上。
席を立ちあがって集団行動ばりの回れ右からの出入り口へ向かって前へ進め。
この話し、しゅうりょー!
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