「亡き骸」

箔對店主

第1話 果ての時間

彼は、回想する

『生き残って、還りたい…』

叶わなかった、願い


花咲く大樹の下


故郷は遠く

異郷の地にて、

僕の肉体は祈り虚しく、果てていく。

徐々に麻痺していく手足・・・。

遠ざかる痛覚に、涙が溢れた。

啜り泣き 乾いた唇を、動かすのも億劫な舌で嘗める。


アノ人と… 

必ず還る、と

約束したのに…

嘘吐きな僕を憎んで 

嫌悪して 

どうか思い出さないで


胸に下げた写真は

在りし日の光景。

意図して切り取った刻は色褪せず、

日に日に其の輝きを増していった。

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