Lv.999のヒーラーは自分の職業を忘れる
風来猫 七昼
第1話 プロローグ
今、俺がどこにいるか分かるだろうか。
いや、恐らく分からない人が半数を占めると思う。
そもそも何故こうなっているのかがイマイチ理解できてない。
考えても見てくれ、目の前で人が撃たれたんだ。勿論俺が撃った訳ではないが。
撃った男はその場から超特急で逃げていったが、撃たれた人は、割と重傷だった。
当たりどころか悪かったのか、虚ろな目で小刻みな呼吸を繰り返していたから何かできることはないかと駆け寄ったんだ。
だが肝心のそこからの記憶が無い。
気がついたらいつの間にか森の中に立ってるんだ。
元々俺はただの学生、こんな森林の奥深くに突っ立っている理由がないのだ。
何をしたかはっきり思い出すことはできないものの、意識ははっきりとしてる。
「とりあえず歩くか」
移動すれば知っている場所に着くかもしれないという一縷の望みにかけて歩き出す。
「しかし妙だな、いつもより体が軽い。エナジードリンクでも飲んだっけな?」
いや、飲んでなかったはずだ。
手当たり次第に進み続ける。なんかさっきより辺りの木が高くなってる気がするんだが気のせいか?どうか気のせいであってくれ。
どうした物か、さっきから状況は好転どころか悪化してる気がする。
そうして歩むこと数十分、またしても意味が分からないことが起きた。
いやぁ、まぁ、普通じゃないけど普通に歩いてたらさ、豚面の中年太りか只の脂肪かよく分からないおっさんみたいなのと正面衝突したんだよね。
そのおっさんもこっち見て呆然としてるし、俺も驚いて体動かないし―あ、この人禿げてる―で、おっさんが気を取り戻したのか、叫び声を上げて逃げていった。
当然俺も凄く驚いて、その場で高速回れ右して必死に逃げた。
驚きが収まってその場で止まった。
「あ、獣道だ。どっちかに進めば何処かにでるかな?」
とりあえず、なんとなく左に行きたい気分だから左に行こう。
そういえば思い返してみると、さっき結構走ったんだけど、全く疲れてないな...
やっぱりエナジードリンク飲んでたっけな?
「やっぱり飲んだ記憶無いんだよなぁ」
そうして歩むこと十数分、何か神社みたいな建物を発見した。
「これは...廃墟か?いや、落ち葉とか掃除されてるしそういうわけではなさそうだな」
「くくく...人の家を見て廃墟とは、散々な言い様よの」
突然女の、細かく言えば少女のような声が聞こえてきた。
「うぇわぁっ!?ちょ、どこ!?」
「何もそんなに驚くことは無かろうに...」
うん。物凄く驚いた。
「お、おう。...で?誰?」
「あんなに驚いておったのに切り替え早いのう。
わしは所謂神とか呼ばれる者でな、神社や聖遺物やらの周りにしか顕現できんのじゃ。」
「だからここに居るのか?いったい何故?」
そんな神とか言う大層な存在が俺なんていう只の学生に用なんてあるわけが無いと思う。
「それはもちろん、お主に用があってな」
「ん?俺?俺なんかしたか?」
「いや、お主が直接何かをやったわけではないとは思うのじゃがな。お主、気づいておるか?」
「え?何が?」
「ここはな...異世界なんじゃ」
「うん。知ってた」
「...え?」
「よく考えたらおかしいよね、日本の山奥に腰巾着だけ着たデブおっさんが居るわけないし、あんなに走ったり歩いたりしたのに息が切れないどころか、疲れすら感じてない。エナジードリンク飲んだわけじゃないのにおかしいね、うん」
「いや、エナジードリンクってそこまで効果強くないと思うんじゃが...」
「で?俺が異世界に来た理由って何?」
そこは割と気になるので聞く。
「お、おう。それはだな...ぶっちゃけ...」
「ぶっちゃけ?」
「よくわからんのじゃ!」
「もったいぶっといてそれかよ...」
「後で使徒達に地上を調査させるが、今の所の見解だと、空間に突発的な歪みが発生して、飲み込まれた結果、ここに流れ着いた感じかの」
「そうか」
いやまぁ、そんな話されても「お、おう」って反応しかできないんだけどね
「そして本題なのじゃが、まずは『ステータス』と唱えてみよ」
「ん、ステータス」
するとなんだろうかしゃららーんという鈴のような音を立てて、半透明な画面が現れた。
――――――――
名前:近衛 快兎
種族:不詳
職業:ヒーラー
職業Lv.999
NextEXP:―
MaxEXP:―
TotalExp:0
デフォルトLv.1
NextEXP:16
MaxEXP:16
TotalExp:0
HP:16735
MP:84376
攻撃力:878
防御力:3578
素早さ:1472
魔法力:8763
魔法防御力:5376
精神力:7538
スキル
回復魔法Lv.999
支援魔法Lv.999
防衛魔法Lv.999
身体強化魔法Lv.999
転職ExLv.―
称号
転移者
極めし者
回復の極意
支援の極意
防衛の極意
支援職の極意
歪みを体現せし者
――――――――
ステータスだけ見れば完全に支援職ビルドかな?
基準が無いので強いとも弱いとも分からないが、流石にLv999はおかしいと思う。
異常!以上!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます