第18話 誤算




「――女?」


 想定外の報告に、男は片眉を跳ね上げた。


「はい。シャラ・シャハルの民ではないようですが、如何なされますか。魔力も感じられず、武器も持たない、齢十五ほどの少女です」

「ラシードが、その少女と共に行動していた、と?」

「共に転移されたということは、同時に魔法陣を使用したということだと思われます。無関係という可能性は非常に低いかと」

「……そうか」


 しばし思案するような間をおいて、男はいくつかの指示を出した。

 命を受けた者たちが部屋から出て行くのを見送った後、小さく息を吐く。


「戻ってくる可能性も、一応は考えていたが……どれだけ周到に用意しても、それを覆すか。それこそが『加護』なのか、それとも――」


 続く言葉は、声として発されることはなかった。苦笑に近い、しかし底冷えた笑みを口元に浮かべて、男は笑っていない目を眇める。


「……会ってみるのも、一興かも知れぬな」


 呟いた言葉は、誰に届くでもなく空気に溶けて消えた。

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