純水な君と
カゲトモ
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「こんばんは」
すらっと背の高い男性がスツールに腰かける。もともと高めのスツールではあるが、マリオ君が座るとことさら高く見える。
「いらっしゃいませ」
「あ」
あ?
「あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします」
深々とテーブルに額が付くくらいのお辞儀。マリオ君らしいというか、なんというか。
「ご丁寧に。こちらこそよろしくお願いいたします」
「えへへ」
そう微笑む表情は変わらないのに、随分とほっそり、いやどちらかと言うとこけた? 輪郭がシャープになったと言うか、頬の肉が落ちた、みたいな?
思えばひと月くらい見てなかったけど、いったいどうしたんだ? もともと細い子だったけど、ここまで痩せていたっけ?
「今日はカシオレじゃなくて、トニックウォーターでお願いしていいですか? お酒じゃなくて申し訳ないんですけど」
「いえ、それはお気になさらずとも良いのですが、どうしたんですか? マリオ君、随分痩せた様に思うのですが」
ダイエットと言うよりは食べてない感が強い。もしかしてあんまりにも劇団が売れなくてひもじい思いをしているんじゃ・・・?
「あぁ、それは」
それは?
「役作りで」
あー、そう、そうだよね。マリオ君舞台俳優だもんね。そうだよね。役作りより先にひもじい思いをしているかもだなんて、俺はなんてひどい奴なんだ。
「そうでしたか。だからトニックウォーターなんですね」
「はい。カシオレだとカロリーオーバーで。本当は飲みたいし、お酒も頼まないのにお店に来るのはダメかなって思ったんですけど。マスターとお話ししたいなって思って」
えー、なにこの子! 可愛すぎるんですけど。
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