魔法少女リンネ ~ The world of RINNE~

絢野悠

プロローグ

 現在の時刻は六時前。私はそろそろ目覚める時間だ。


「またつまらない一日が始まる」


 眠ればこの世界に来られる。しかし、起きたらまた現実に戻るのだ。


 この世界ではなにもかもが自由だ。現実の世界と遜色ない作りなのに、ビルを一撃で破壊することもできるし、空を飛ぶこともできる。壊した建物なんかは次の日には直っているんだから、最初は目を疑うのも当然だった。


 ここにいる人は全て、無欲と無秩序を合わせたようなな暮らしをしている。目はうつろで、話しかけても返事がないことを除いては、至って普通だ。いや、普通ではないな。いくら殺しても、建物同様に次の日には戻っているのだから。


 一ヶ月前、二つ上の姉が寝たきりになった。事故に遭ったわけではなく、急に意識不明になってそのままだ。


 その頃から、私はこの世界に引き込まれた。


 けれど、この世界は楽しい。現実の苦しさを紛らわしてくれる。


 そして私は決めた。


「この世界で、世界征服をしてやる」


 前から思っていたが、拳を握って決意を固めた。ここでは普段の、根暗でイジメられている私じゃない。好きなように振る舞えるこの世界で、天下を取る。


 そうしているうちに、私はまばゆい光に包まれる。


 現実に戻るのだと、奥歯を噛み締めた。

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