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「明智の軍勢には、赤き目をした兵士が多数おりましたが、本能寺に誘い込み全て斬り棄て炎の中で灰に致しました」
「そうか……。明智光秀が兄上の遺体を躍起になって探したそうじゃ」
「見つかるはずなどありません。上様は生きておいでですから」
「丈、そなたも無事で何よりじゃ」
「……イチ」
わたくし達はどちらかともなく抱き合い、唇を重ねた。愛しき想いは募るばかり、わたくしは本気で丈の元に嫁いでもよいとさえ思っていた。
――数日後、織田信長が亡くなったという知らせは、あっというまに配下に知れ渡り、“備中高松城を水攻めにした秀吉はすぐさま京都に軍を返した。”
「お市の方様、羽柴秀吉が山崎において明智軍と戦い、明智軍は大敗を喫したそうです。明智光秀は落武者狩りにより討たれたと……。不思議なことに朝日が昇るや否や、明智光秀の体も、光秀の残党も灰になり消えたそうにございます」
「……灰じゃと?」
大局の言葉に、わたくしの脳裏に丈の言葉が過る。
『明智軍には赤き目をした武士がいた』
『吸血鬼は赤き目をしている』
『吸血鬼は太陽の光に当たると灰になる』
――まさか……
明智軍が……!?
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