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明智光秀が吸血鬼であったかどうか、もはや確かめる手段はどこにもなく、兄上亡きあと、羽柴秀吉の勢力はますます増した。
“清洲城において遺領の分割会議が行われた際、光秀は信長の嫡男信忠の長男三法師を推し、信長の後継者に決まった。”
それにより、筆頭家老である柴田勝家よりも、秀吉は領地も勢力も勝るようになる。
――そして、わたくしに思いもよらぬ縁談が舞い込んだ。
「お市の方様、見目麗しく健やかなお姿。秀吉は安堵致しました。三人の姫様の行く末を亡き上様もさぞかし気に掛けておられましょう」
「羽柴殿、山崎の戦い大儀であった。遺領分割で二十八万石の加増となったそうじゃな。そのような立派な武将がわたくしに何のようじゃ」
「お市の方様に、縁談がございます。織田家筆頭家老の柴田勝家殿の元に、嫁いでは下さらぬか」
「わたくしに再婚しろと?」
「はい、織田信孝殿の意向でございます。柴田勝家殿に異論はないとのこと。宜しいですな」
「羽柴殿、わたくしは……」
「忍びなど、相手になさるな。お市の方様、三人の姫君は織田家の血を引く大切な姫君。身分の異なる異人などもってのほかでございます。お花によると、頻繁に通じておるとか?」
「……お花じゃと」
「信孝殿も心配しておられる。柴田勝家殿に嫁ぐことが、姫君の幸せかと。さもなくばお市の方様をたぶらかした罪で、異人は打ち首かと」
秀吉はわたくしを柴田勝家に嫁がせ、丈との関係を絶ち切ろうと目論んでいる。
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