ジョエルside
41
バイクを走らせ大学に行くと、牛舎の中をオルガが覗き込んでいた。
「オルガ、何をしている」
オルガは俺の声に、ビクッと体を震わせた。
「なんだジョエルか。昨日生まれた仔牛を他の場所に移したようだな。お前何処に移したか知ってるか?」
「知らないよ。仔牛が気になるのか」
「俺が気にしてるのは吸血鬼伝説だよ。これ以上家畜を犠牲にしたくないからな」
セバスティがフンと鼻で笑う。
「お前が近付かなければ、仔牛が命を落とすこともないだろう」
「何のことだ」
「別に。教室に行くぞイチ」
「……はい」
牛舎の前にオルガを残し、俺達は教室に入る。イチが小声で俺を窘めた。
「ジョエル、どうしてあのようなことを申すのですか?オルガに失礼ではありませぬか」
「イチは気にしなくていいんだよ」
「されど……、あれではまるでオルガが仔牛を殺めたような口調でございました」
そうとしか思えないのだから、しかたがない。
教室では女子が一冊の本を覗き込み、キャーキャーと騒いでいた。美薗が顔を上げ、イチを手招きする。
「イチ、ジョエルにばかりくっついてないで、こっちにおいでよ」
イチは俺をチラッと見上げる。俺は『行けよ』と言わんばかりに、視線を女子に向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます