red 4
市side
39
朝目覚めると、ジョエルはベッドの中には居なかった。
毎日早朝より仕事に出掛けるとは、どの国も殿方は大変じゃ。
いつものように屋敷の掃除をしていると、ジョエルの書斎に視線が向く。
掃除だけでは時間が潰せず、かねてより気になっていたジョエルの書斎に並ぶ書物が読みたくなった。
――『リビングルームとダイニングルーム、寝室以外の部屋には勝手に立ち入らないこと』
ジョエルとそう約束はしたけれど、昨夜書斎に入ったこともあり、掃除がてら書物を見ても叱らないだろう。
書斎のドアを開けると、壁一面に整然と並ぶ書物。日本語で書かれたもの、異国の言語で書かれたもの。小説、文学書、歴史、地理、宗教、様々な表記の書物が並び、わたくしには初めて目にするものばかりだった。
異国の言語は勿論のこと、日本語で書かれた書物にも、わたくしには読めない漢字が並んでいる。
「なんと書かれているのか、ほんに興味深い」
綺麗な絵が載っている書物もあり、その美しい色彩に心まで奪われそうになる。
読みふけっているうちに多くの時間を費やし、壁に掛かっている鳩時計の音に、思わず我に返った。
「いけない。掃除をせねば……」
机の上を拭き、机の
夕方までジョエルの書斎で過ごし、日が落ちるのを確認し、読みかけの書物を棚に収め、寝室に戻り大学へ行く支度を整えた。
「イチ、イチ」
ジョエルの声に、わたくしは慌てて寝室を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます